「JFE東日本」のグラウンドには、初めておじゃまさせていただいた。

 千葉市の中心部から、車で小1時間ほど走ったのどかな田舎の風景。

 敷地には、公式戦もできるほどの立派なスタンド付きのグラウンドが両翼95m、センター120m、そして内野ノックができるサブグラウンドに屋根付きのブルペン。

 その周囲には、満開の桜が見事に咲き揃って、上空には羽田に向かって高度を下げていく航空機が次々に飛来する。

 好きなものが3ついっぺんに味わえて、JFE東日本グラウンド、私には“パラダイス”だ。

 いいな……と思ったのは、近所の中学軟式球児が何人か観戦していたことだ。バックネットに突き刺さるファールのスピードにオオーッ! と声を上げながら、この国のアマチュア野球最高峰のすさまじさを体感している。

 内野スタンドは土手になっていて、若いお母さんが赤ちゃんをひなたぼっこさせながら、のんびり野球観戦である。殺伐としたご時世の中、こうした空間があって、ホッと息がつける。

ひときわ目を引く3番・峯本匠。

 国際武道大とのオープン戦。

 東海大OBのJFE東日本・落合成紀監督が、大学の大先輩の国際武道大・岩井美樹監督の胸を借りる。

 国際武道大から新入社の赤木陸哉外野手(178cm75kg・右投左打)を「1番ライト」に起用して、さりげなく“忖度”の姿勢を見せる。

 春の大学、社会人のオープン戦には、よくある場面だ。

 この試合、キラリと光ったのが、JFE東日本の3番を打った峯本匠二塁手(24歳・173cm78kg・右投左打・立教大)だ。

大阪桐蔭時代はまさに天才。

 この峯本が3番を打って、その前後を2番今川優馬(左翼手・176cm80kg・右投右打・東海大北海道)、4番平山快(三塁手・181cm88kg・右投右打・東海大)とルーキー3人が固めた「クリーンアップ」がノビノビと打ちまくって、都市対抗を制した昨年2019年。

 今年はその3選手が同時に社会人2年目のドラフトイヤーを迎え、「その日のことを考えると吐きそうになります……」と、落合監督を“楽しみ”にさせている1人が峯本匠だ。

 2番・峯本匠、3番・香月一也(現ロッテ)、4番・正随優弥(現広島)と組んだ「2〜4番のクリーンアップ」の大阪桐蔭高の頃は、プロに進んだ2人以上に“バッティングの天才”に見えていたのが、この峯本だった。

 試合前のシートノックから、まずキラリと来た。

 ボール回しの足さばきが軽いなと思ったら、二塁ベースちょい一塁寄りのゴロをバックハンドキャッチから、次のステップで即ジャンピングスローで一塁にストライクだ。

 練習時によくある、勢い任せの「エイヤー!」じゃない。頭の位置がブレない“正しい”動き。

 立教大の頃は、下半身の故障が気がかりなこともあったのだろうが、こんな大胆な「攻めの守り」は見たことがなかった。

 試合開始まもなくのファーストプレー、前に転がってきた当たり損ないを、まっすぐ突っ込んで、真横の一塁手に頃合いの強さで投げる。高難度のプレーにもボディバランスの崩れを見せず、任せて安心の二塁手になっている。

都市対抗の優勝を引き寄せたバット。

 都市対抗優勝に輝いた昨夏、準決勝と決勝でライト前、センター前に火を噴くようなライナー性の快打を立て続けに放った姿が忘れられない。

 長距離砲のようなふところの広さ、投球を線で捉えられる滑らかなスイング軌道。ポイントが近いのも、変化球でなんとかしようと揺さぶった相手バッテリーにとっては厄介な要因になった。

差し込まれても跳ね返すスイング。

 ただ、これがあるんだよな……と思ったのが、その日最初の打席。

 追い込まれてからのカーブに、のめって無理やり合わせた打球が、コロコロと三塁手前の「フェア」になった。

 “手が上手い”打者は、打ち損じがフェアーになってしまって勿体ないことがある。これをファールにできれば、「打ち直し」ができて有利になる。

 修正するように、続く2回の打席は左方向へ巧みに打球を飛ばした峯本。

 2打席目のスライダーをレフト前に運んだヒットより、3打席目、速球に差し込まれながら、スイングスピードで押し返し、遊撃手の腰がひけるほどの打球を飛ばしたインサイドアウトのスイング。

 この打ち方ができれば、何も心配ない。

 今の軌道で振り込んでいけば、暖かくなって体がキレてくるこの先、グングン伸びていく打球が広角に飛んでいく。

JFEの野手コーチは山森雅文。

 田中広輔の2年目が、ちょうどこんな感じで始まったことを思い出す。

 今は「カープの顔」の1人となった、社会人出身内野手のアマチュア次代が重なった。

「大学の頃は、下半身の故障があったみたいですけど、今はまったく言わなくなりました。とにかく、ハートがすばらしい。練習ではあまり目立たないかもしれませんが、実戦での強さは、モノが違います」

 JFE東日本で、野手たちの面倒を見ているのが山森雅文コーチだ。

 阪急ブレーブスでは快足とスーパーディフェンスの外野手だった。西宮球場のレフトフェンスのへりに駆け上がってホームラン性の打球を捕球し、メジャーから表彰を受けた。千葉ロッテのスカウトとしても長かった。

 同僚の今川優馬も、貴重な右打ちの「ハードパンチャー」としてプロ注目の存在だが、今日は体に強いハリが出て、試合を休んでいた。

「ケガするほど練習するのが、今川です。こっちが気にしてあげないと、壊れてしまうほどやりますから。峯本は、野球が上手い。そこにもってきて、ここ一番の勝負根性、勝負度胸がすごい。意欲が違う」

大学で終わるかと心配した時期もあったが……。

 正直、大学で終わってしまうのか……と心配した時期もあった。

 本人がいちばんつらくきびしい4年間だったのではないか。

 完全によみがえって、社会人の第一線で1年間実戦の場に恵まれて、スキルも今が伸び盛り。

 あとは、いつでも盗塁を狙える走者としての“怖さ”を身に着けてほしい。

 その方面の専門であるの山森雅文コーチのエッセンスを吸い尽くせば、ネクスト田中広輔……ということになろうか。

文=安倍昌彦

photograph by Kyodo News