今週末、阪神競馬場では宝塚記念(GI)が行われる。春の締めくくりとなるグランプリレースは芝2200メートル、3歳以上が対象だが、今年は3歳馬の出走はなく、古馬同士の争いとなる。出走18頭中、半分近くにあたる8頭がGI馬という豪華メンバーが集結した。

 注目される馬は何頭かいるが、まずは2頭だけの牝馬から取り上げたい。共に前走で大阪杯(GI)に出走したラッキーライラック(牝5歳、栗東・松永幹夫厩舎)とクロノジェネシス(牝4歳、栗東・斉藤崇史厩舎)だ。

 大阪杯も出走12頭中牝馬はこの2頭だけだったが、牡馬勢を退けて見事にワンツーフィニッシュを決めている。今年は他にも高松宮記念(GI)や安田記念(GI)も牝馬のワンツーフィニッシュで終わっているように、現在は牝馬のレベルが非常に高いので軽視は禁物の2頭といえるだろう。

ラッキーライラックが目を覚ます。

 まずは大阪杯に勝利したラッキーライラック。2017年にデビューすると3連勝で阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)を優勝。最優秀2歳牝馬に選ばれた。3歳時も当然期待され、桜花賞(GI)では単勝1.8倍の圧倒的1番人気に支持された。

 しかし、同期にアーモンドアイがいたことから歯車が狂う。牝馬3冠レースはいずれもその怪物牝馬に敗れると、その後、なかなか勝てなくなってしまった。

 ところがそんな彼女が再び目を覚ましたのが昨年の秋。11月のエリザベス女王杯(GI)で新たにC・スミヨン騎手を鞍上に迎えると約1年8カ月ぶりに勝利。その後、香港へ飛び香港ヴァーズ(GI)に挑戦するとここでも2着に好走。帰国してM・デムーロ騎手と新たにコンビを組んだ今年は中山記念(GII)2着を経て、先述した通り大阪杯では牡馬勢を撃破。3つ目となるGIを制してみせた。

本格化クロノジェネシスが楽しみ。

 一方、1つ年下のクロノジェネシスもここに来ての充実ぶりは著しい。

 2歳時は阪神ジュベナイルフィリーズでダノンファンタジーの2着、3歳春は桜花賞がグランアレグリア、オークス(GI)がラヴズオンリーユーのいずれも3着と惜敗。着順的には惜敗だったが、勝ち馬とは完敗ともいえる力の差を感じさせたものだった。

 しかし、ここでひと息入れたのが良かった。馬体を20キロ増やして452キロとした秋初戦の秋華賞(GI)を快勝。本格化を感じさせると、続くエリザベス女王杯こそ5着に敗れたものの、今年に入ってから京都記念(GII)を楽勝後、大阪杯でラッキーライラックの2着。まことに頼もしい存在となった。

 ちなみにラッキーライラックの松永幹調教師とクロノジェネシスの斉藤崇調教師は師弟関係にある。秋華賞を制し、ドバイでアルマクトゥームチャレンジラウンド3(当時GII、現GI)を優勝したレッドディザイアを共に育て上げた仲である。同じ牝馬で、大阪杯同様、師弟が好勝負を繰り広げるのか、期待したい。

好走するときは必ず勝ってきた。

 宝塚記念は春のグランプリと言われるように有馬記念(GI)同様、ファン投票で出走馬が選定される。また、競馬場こそ違えど、同じ右回りで距離は2200メートルと2500メートル。いずれも時計のかかる時期に施行されることもあり、両レースで好走をみせる馬は多い。昨年の宝塚記念の勝ち馬リスグラシューも暮れには有馬記念も優勝してみせた。

 そういう意味で軽視出来ないのがブラストワンピース(牡5歳、美浦・大竹正博厩舎)か。3歳時の一昨年、有馬記念を制覇。古馬となってからは昨年の札幌記念(GII)と今年のアメリカJCC(GII)を勝っただけ。

 昨年の凱旋門賞(フランス、GI)を含め、ここまでの成績は13戦して7勝だが、2、3着はなく、負ける時はいずれも4着以下。逆に言えば好走する時は勝っているという事で、この傾向が続くのなら、先頭でのゴールがあっても不思議ではない。いや、不思議ではないという言い方自体失礼なのかもしれない。グランプリホースなのだから、ここで勝ち負け出来る能力は十二分に持っていて当然だろう。

完成に近づくサートゥルナーリア。

 他にも復活を期すキセキ(牡6歳、栗東・角居勝彦厩舎)やワグネリアン(牡5歳、栗東・友道康夫厩舎)、未知の魅力を秘めるグローリーヴェイズ(牡5歳、美浦・尾関知人厩舎)にダークホースながら前走の内容が良かったカデナ(牡6歳、栗東・中竹和也厩舎)とスティッフェリオ(牡6歳、栗東・音無秀孝厩舎)など、伏兵陣も虎視眈々。

 しかし、何と言っても取り上げなくてはいけないのはサートゥルナーリア(牡4歳、栗東・角居勝彦厩舎)だろう。

 2歳時の一昨年にホープフルS(GI)で初GI勝ちを飾ると、それ以来の出走となった昨年の皐月賞(GI)も優勝。秋に天皇賞(秋)(GI)で6着に敗れるまではスローな流れの瞬発力勝負にならないと苦しくなるタイプかと思わせたが、それなりに流れた有馬記念を2着した事で成長を感じさせると、前走の金鯱賞(GII)は正に得意の流れで完勝。それまで苦手と思われていた左回りも克服してまた1つ完成に近付いたと思わせた。

テレビ画面を忘れるようなレースを。

 今回は前走同様、コンビを組んで3戦3勝というC・ルメール騎手が手綱を取るのも心強い。鮮やかだった前走だが、相手関係はそれほど強くなかったとか、極端に速い流れになった時がどうか? という不安がないわけではないが、かといって極端に崩れるシーンも想像し難い。

 いずれにしろ好メンバーが揃い、春を締めくくるグランプリとしては不満のない好レースが見られそうだ。テレビ画面越しとなるのを忘れさせてくれるような素晴らしいレースが展開される事を期待したい。

文=平松さとし

photograph by Satoshi Hiramatsu