音の効果は、絶大だ。その一助となるのが遠隔応援システムである。無観客のリモートマッチを盛り上げる重要ツールだろう。

 この新規のシステムはテレビやラジオ、オンラインで観戦するファンが専用アプリを介し、歓声や拍手をリアルタイムでスタジアムに届けるものだ。ヤマハ株式会社の開発した『リモートチアラー』は海外のメディアでも取り上げられた。

 Jリーグ再開に先立ち、6月13日のジュビロ磐田(J2)とアスルクラロ沼津(J3)の練習試合で、このリモートチアラーがテストされている。この試合はDAZNで生配信され、視聴者に臨場感十分の仕上がりを印象づけた。

 アプリ内には応援団のリーダーが利用できる専用ボタンがあり、状況に応じてチャント(応援歌)を選択できる。一般の利用者は手拍子などをどのエリアのスピーカーから拡声するか、選べるシステムだ。

 設置の簡易性も強み。試合開催時に使用する音響機器に専用のスマートフォンを接続するだけだ。スタジアムに設置されたスピーカーだけでも十分に音を出せるという。

喜んでいる人の姿が伝わってきた。

 ヤマハはすでに磐田と清水エスパルス(J1)の協力を得て、5月に実証実験を3度実施。エコパスタジアムで試みたテストでは5万人収容の大規模スタジアムでも十分に臨場
感を得られることを確認した。

 視察に訪れたJリーグの関係者は「まるで従来の試合そのものと錯覚するくらいの臨場感」と振り返る。実際にピッチ内で体感した選手たちからも好評。6月13日の試合で2ゴールを決めた磐田の大砲・小川航基もその効果を実感した一人だ。

「率直に言って素晴らしい。声援があるのとないのとではまるで違う。映像越しに喜んでいる人たちの姿が歓声として、自分たちのところまで伝わってきました」

 選手だけではない。磐田を率いるフェルナンド・フベロ監督も「観客やサポーターがいるような感じの声が届いた。今回の試みはとてもポジティブ」と好印象を口にする。

 なお、Jリーグはリモート応援の「ある・なし」について、各クラブの裁量に任せている。実際、再開後のリモートマッチで貴重な「音」が届くことになるのか否か。その効果は侮れない――と、思うが。

文=北條聡

photograph by J.LEAGUE