アーリング・ブラウト・ハーランド。

 今、ヨーロッパで最も注目されているノルウェー代表の若手ストライカーである。

 2020年最大の新星と言ってもいい。

 昨年からの活躍ぶりが半端ない。1月にモルデFK(ノルウェー)からレッドブル・ザルツブルクに移籍を果たすと、5月にはU-20ワールドカップの対ホンジュラス戦で1試合9ゴールをあげて一躍世界の注目を浴びた。さらに9月にはチャンピオンズリーグのヘンク戦でハットトリックを記録。12月にはボルシア・ドルトムントに移籍。ドルトムントがザルツブルクに支払った違約金は7000万ユーロに達した。

 そしてドルトムントでも、交代出場のデビュー戦でいきなりハットトリック。そのまま3試合連続で7得点をあげ、さらにはパリ・サンジェルマンとのチャンピオンズリーグ・ラウンド16第1戦でも2得点。勢いはとどまるところを知らない。バロンドール獲得はまだ時期尚早かも知れないが、今年のコパ・トロフィー(21歳以下の若手に与えられる賞)の最有力候補であるのは間違いない。

 父親は元ノルウェー代表のアルフ・インゲ・ハーランド。イングランドのノッティンガム・フォレストやリーズ・ユナイテッド、マンチェスター・シティなどで活躍し、アーリングもその関係でリーズに生を受け3歳まで過ごしたのだった。母親も元陸上競技の選手で7種競技のチャンピオン。自身も15歳でプロデビュー(ブリンFK=ノルウェー)し、まさにスポーツ一家のサラブレッドといえる。

 そのハーランドを、時間は少々遡るが『フランス・フットボール』誌3月10日発売号でオリビエ・ボサール記者がインタビューしている。CLラウンド16第1戦の後、第2戦前の時期である(結果は2試合合計3対2でPSGが勝ち上がり)。

 自身初となるロングインタビュー。その舞台に『フランス・フットボール』誌を選んだのは、決して偶然ではないだろう。インタビュー嫌いで知られるハーランドと、そのハーランドから何とか言葉を引き出そうとするボサール記者の苦心のやりとりが面白い。同時にハーランドの早熟さとナイーブさの両方がよくわかるインタビューにもなっている。

監修:田村修一

「私のときはたった8分でインタビューが終わった」

 ドルトムントの中心街から車で20分ほど行ったところにボルシア・ドルトムントの練習場はある。周囲に目立つ建物は何もない。クラブハウスの入り口では、広報がわれわれの到着を待っていた。

「監督(ルシアン・ファブレ)が見られるのを嫌いますから、練習中はピッチに近づかないでください。ここで待っていてください。もうすぐハーランドが来ます。でもわかっていると思いますが、彼の答えはどれも短いですよ(笑)」

 たしかに彼について書かれた記事では、誰もが同じことを述べていた。インタビューが好きではなく、どの質問にも二言三言しか答えないと。

「私のときはたった8分でインタビューが終わった。(少しでも時間を延ばすために)最後は彼の祖母の話までしたよ」と、元ノルウェー代表で現在はテレビ解説者を務めるヤン・オーゲ・フィヨルトフトは『レキップ』紙で語っている。

もしハーランドが何も喋らず取材が終わったら……。

 だが、そうした評判がどうであれ、ハーランドが今日のヨーロッパで最も注目される存在であるのは間違いない。様々な記録を塗り替え続け、PSGとのCLラウンド16第1戦でもチアゴ・シウバ=キンペンベのセンターバックコンビを翻弄した。そしてそんなハーランドについては、まだほとんど何も知られていない。

「彼が喋らなくてすぐに(インタビューが)終わってしまったら、残りの時間で写真をたくさん撮ってください」と広報が気を遣った。

 ほどなく到着したハーランドは、車を降りるや「ボンジュール、さっそく始めよう」と笑顔でわれわれに近づいてきた。時間は無駄にできない。

「大丈夫?」と何度もハーランドが確認するなか5分でフォトセッションを済ませると、プレハブ造りの建物へと移動した。

「椅子に座って話そう。そのほうが楽だから」

 こうしてインタビューが始まった。

「すべてをサッカーのために役立てること」

――インタビュー嫌いと聞きましたが本当ですか?

「誰がそんなこと言ったのかな?」

――どの記事にもそう書かれています。これまでの最長インタビューは、ノルウェーでおこなわれたもので8分だったとか……。

「いやいや、それは本当じゃない。誰がどんな質問をするかによるよ」

――あなたについて語るのであればいいのですか?

(肩をすくめて口を尖らせながら、「さあはじめよう」という仕草をする)

――この数カ月の間に生活が変わったと感じていますか?

「いや、そんなには変わっていない。僕は普通に選手としてドルトムントに来て、今も普通の選手だ。そこに変わりはない」

――誰もがあなたのことを話題にしているのを除けばですが……。イタリアでもイングランドでもスペインやフランスでも……。

「あなたはそう言うけど、僕は最近それらの国に行ってないからよくわからない。でも聞いて悪い気はしない。僕がいいことをしているということなんだろうか」

――ソーシャルメディアをやっているそうですが、ここ数週間はあなたの話題で持ちきりなのを見ましたか?

「たしかにやっているけど、僕は常に見ているわけじゃないし、自分について書かれていることを全部読んでるわけでもない。だからわからないよ」

――しかし新たなステイタスを得たのは悪くはないのでは?

「ああ、たしかに悪くない。でも僕が望むのは、すべてをサッカーのために役立てることだ。背後でそういうことが起こっているのはいいことかも知れない」

「試合全体を振り返ったときにどう評価できるか」

――絶対に満足することがないというのは本当ですか?

「その通りで、得点できなかったときは決して満足はしない。ただ、それも、パフォーマンスにもよる。まず最初に見るのがそこで、常に最高でありたいと思っているし、ずっと進歩し続けたいと願っている」

――そうは言ってもPSG戦で決めた2ゴールには満足していませんか?

「(しばし熟考して)オーケー、たしかに2点決めたけど、あの試合では本当に多くのミスを犯した。つまりもっといいプレーができたということなんだ」

――本当ですか?

「ああ、とにかくミスが多すぎた」

――得点できなかったときはどんな感じですか?

「それも場合による。得点だけがすべてじゃないからね。言っただろう。試合全体を振り返ったときにどう評価できるか。すべてを見て判断している」

遊ばない、酒を飲まない、ファストフードも食べない。

――今現在の自分のレベルに驚いていますか?

「いや」

――自分がこれだけ強く、速くなれると思っていましたか?

「子供のころから今のパフォーマンスを実現できるかもしれないと思っていた。違いを作り出せると。これから先さらに良くなっていくのもわかっている」

――さらに素晴らしくなると確信しているのですか?

「間違いないね」

――まだ19歳でしょう。自分を青年と感じていますか、それとも大人だと思っていますか?

「うーん、いい質問だなあ……(しばし考える)。答えはフィフティフィフティかなあ。ときに青年と思うし、ときにもう大人だと思う。ただ19歳だということは忘れていない。学ぶべきことがまだまだたくさんあるからね」

――あなたは遊ばないそうですしアルコールも飲まない。ファストフードも食べない。サッカー漬けの生活ですか?

「それもまた状況による。アルコールを飲むのもファーストフードを食べるのも、すべてはタイミングの問題なんだ。もちろんシーズン中は絶対そんなことはしない。でもオフの時期にはどっちも可能だ。うまくコントロールする術を学ぶ必要がある」

チームメイトたちはあなたを《マシン》と呼んでいます。

――あなたは常に練習場に一番乗りでやってきて、一番最後までいます。休養日までトレーニングをして、ドルトムントのチームメイトたちはあなたを《マシン》と呼んでいます。ちょっと恐ろしくはないですか。

「できるかぎりハードに取り組んでいるのは最高の選手になるためだ。だから目一杯トレーニングするし限界ぎりぎりの練習を常にしている。身体がその厳しさに耐えられるようになるために」

――家でもそうしていますか?

「たぶん……」

――秘密ですか?

「うーーん」

――あなたの父親は、あなたがクリスティアーノ・ロナウドの食事療法を真似ていると言っていますが。

「そうかも」

――どんな小さなディテールも曖昧なままにしない。眼を傷つけないための特製サングラスを持ち歩いているとか……。

「それは本当だ。眠るときにも役立っている。早く回復できるからね」

――どんなディテールも決しておろそかにしない。

「そうだ」

「まったく恐れない。怪我にビビることはない」

――あなたを最初に指導した監督は、あなたの最大の長所はメンタルの強さだと言っていますが?

「(微笑んで)その通りで、たしかに僕は強いと思う。精神的にもの凄くタフだ」

――自分を疑ったことはないですか?

「一度もないね」

――その自信はどこから来ているのでしょうか?

「僕がこれまで学んできたすべてのコーチたちからだ。少年のころのコーチやプロになってからのコーチたちだ。それから僕の周囲にいる人たち。彼らは本当に大切だ。あとは自分自身で得たものも大きい。僕は常に変わることなく自分を信じている」

――恐れるものは何かありますか。何も恐れていないように見えますが……。

「何もないね。蛇は嫌いだけど、それだけかなあ」

――怪我はどうですか?

「まったく恐れない。怪我にビビることはないね。そんなことを考え始めたら先になんか進めないだろう」

――以前にいちどサッカーから離れていた時期がありましたが。

「身体の成長が早すぎて4カ月間サッカーができなかった。最悪の時期で、嫌でたまらなかった。サッカー選手にとってプレーができないのは最悪以外の何ものでもないからね」

――サッカー以前に別のスポーツにもトライしたというのは本当ですか?

「ハンドボールをやった。悪くはなかったよ。他にも陸上競技とゴルフにもトライした」

ハーランド初となるロングインタビューの後半「ロナウドか、それともズラタンか? 今季話題の長身FW、ハーランドの秘密」では、憧れの選手に関する質問、現在の目標、そして、メッシ、ロナウド、イブラヒモビッチらへの評価に繋がっていく……。是非、関連コラムにてお読み下さい。

文=オリビエ・ボサール

photograph by Iorgis Matyassy/L'Equipe