アーリング・ハーランドの話は続く――――。多大な影響を受けた両親について、今後の目標やバロンドールについて、さらには自身の夢や未来の姿について……。言葉から浮き彫りになるのは、コミュニケーションに関して器用ではないがゆえに逆に明確になる、質問に対して真摯に向き合う19歳の青年のナイーブな姿である。その妙味をじっくりと味わって欲しい。

監修:田村修一

1m94cmの高身長で足も速い……その原点は?

――イングランドでプロ選手だった父親の話はよく出ますが、やはり優れたアスリートだった母親はほとんど話題になっていません。

「彼女は7種競技のチャンピオンだった」

――彼女もあなたのキャリアに何かを与えたのではありませんか?

「影響は大きかった。母と一緒に陸上の練習に行った。ずっと母の後をくっついて、陸上トラックが僕の遊び場だった。自分の力を試すこともできた。後にスピードアップのトレーニングでもそれは役に立ったよ。フィジカル強化全体の面でもね」

――PSG戦では、60mを6秒64で走っていました。1m94㎝の長身で、どうしてそう速く走れるのでしょうか?

「母は本当に速かったし父も速く走った。幸運にも彼らから能力を受け継いだ。身体的には恵まれたと思う」

――陸上競技で信じられない記録を持っているそうですが?

「それは本当だ」

――説明してもらえますか?

「今も立ち幅跳び(助走なしで前に飛ぶ競技)で5歳の世界記録を持っているよ(2006年1月22日にハーランドは1m63㎝の世界記録を樹立)」

――あなたは父親についてはよく話しています。今も一番近しい存在なのでしょうね。

「うーん……」

――あまり話したくないですか?

「そんなことはない。父はたしかに大きな存在だ」

――身体が大きいことが障害になったこともありますか?

「かつては僕より年上で身体も大きな人たちとプレーしていた。僕も今のように大きくはなかった。もっと小さくて、そんな中でプレーすることに慣れた。その後、成長して、気づいたら自分が一番大きくなっていた。変化にはうまく対応できた。何の問題もなかった」

――当時のあなたは《マンチャイルド》というニックネームでした。大人子供の意味ですが。

「(微笑みながら)ああ、そうだった。そう呼んでいた人たちに、どうしてなのか聞いてみるといい」

今の自分は誰に似ていると思いますか?

――何か弱点はありますか。これから改善していきたいような。

「たくさんあるよ! 右足がそうだしヘディングもだ。テクニックももっと磨かないと。後は左足とピッチ上での考え方や動き……。全部だ。やるべきことはまだまだたくさんある」

――では今の自分は誰に似ていると思いますか。トレーニングとディテールに取り憑かれたクリスティアーノ・ロナウドなのか、それともテクニカルでサイズが大きくクールなズラタン・イブラヒモビッチなのか?

「わからない。他人と比べるのは好きじゃない。自分は自分。それでいいだろう」

――そのふたりではどちらが好きですか?

「どっちも好きだね。ふたりとも僕のアイドルだ。彼らがいるから僕はサッカーをしている」

――他にもスペイン人のフォワードでミチュ(2017年7月に31歳で現役引退)がいます。

「ああ、たしかに」

――彼はどうでしたか?

「彼がスウォンジー(ウェールズ)でどんなプレーをしていたかを見れば、どれほど偉大な選手であったかがすぐにわかる。最近、僕は彼からユニフォームを貰った。伝説的な存在だよ」

プレミアのクラブからオファーが来たことは?

――今もずっとリーズ・ユナイテッドのファンですか?

「意味がよくわからないんだけど……」

――2017年1月にある新聞紙上で「僕の夢はリーズでプレミアリーグのタイトルを獲ることだ」と宣言しています。

「……(沈黙)」

――生まれはイングランドのリーズですが、英国のクラブからはこれまでオファーがまったくなかったのでしょうか?

「何か誤解があるような気がする。言っていることの意味が全然わからない」

――それでは質問を変えます。キリアン・ムバッペをどう思いますか?

「ファンタスティックなプレイヤーだ。この前、はじめてピッチ上で直接対決したけど、才能に溢れているだけでなく、それ以上の存在だった。驚異的としかいいようがない。あの年齢であれだけのことが出来るのは……。しかもすでにキャリアを築いている。偉大な選手だと心から思う」

――ネイマールはどうでしょう。

「彼も同じだ。ムバッペと同じぐらいファンタスティックだ。

――先日の第1戦ではチアゴ・シウバを翻弄しましたが、彼に対しても同じ意見でしょうか?

「彼と対峙するのは簡単ではない。素晴らしいキャリアを築いた偉大な選手だ。あのポジションでは世界最高のひとりだ。僕にとっては彼もレジェンドだ」

「まずドルトムントでCLに優勝することが先」

――お気に入りの曲は今もCLのアンセムですか?

「大好きだね。小さなころからずっと聴いている。車の中でもときどき流しているよ。一緒に乗ったチームメイトたちは笑っているけれども……。はじめてピッチの上であの曲をきいたときは信じられないほどだった。あの瞬間を永遠に忘れない」

――今もボールを抱きながら寝ているというのは本当ですか?

「ああ、ずっとそうしている。それで安心できるからね」

――PSGとの第1戦のボールも持っていますか?

「あの晩は2点しか決められなかった。だから答えはノン(ノー)だ。ボールを持ち帰るのは、ハットトリックを達成したときと決めているからね」

――あなたにとってバロンドールとは何でしょうか?

「世界最優秀選手の表彰だろう。違うのかな?」

――思いを巡らせたことはありますか?

「僕が? 全然ないけど、考えないといけないのかな?」

――数々の記録を打ち立てたあなたは、有力な候補のひとりです。

「いや、まずドルトムントでCLに優勝することが先だろう。それに世界には素晴らしい選手が本当にたくさんいる……。まだ僕が考えることじゃない」

――ならば具体的な目標は何かありますか?

「トロフィーを獲得したい。それもできる限りたくさん。選手は誰もがその手でトロフィーを掲げたいと願っている。僕も同じだよ」

「CL決勝で得点できたら、もちろん望外だ」

――サッカーのことを考えていないときには何をしていますか?

「サッカーが僕の人生だ。家ではサッカーをよく見ているし、たくさんの試合を見ている。でも別のことをするときには映画を見ている」

――すでにたくさんの記録を打ち立てていますが、今は何に照準を定めていますか?

「ブンデスリーガの得点王になりたい。でも僕は、いつも記録のことばかりを考えているわけじゃない。執着はない。それよりもチームの力になりたいし、出来る限りのことをしたい。他になにもないね」

――ムバッペのように、自分の得点はすべて数えていますか?

「自分がいつどこで得点したかはすべて覚えている」

――それでは眼を閉じて夢のゴールを想像したとき、それはどういうゴールでしょうか?

「うーん、難しいなあ……。いい質問だ。僕は夢のゴールを想像するような人間じゃない。率直に言えばすべてのゴールが等しく重要で、どんな風に決めたかは問題じゃない。(考え込みながら)そんなことは考えたことがないなあ。ただ、CL決勝で得点できたら、もちろん望外だ。選手なら誰もが夢見ていることだから」

――来年夏に延期になったEUROにも夢はありますか?

「もちろんだ。たしかにEUROは夢だね。だが、その前に、僕らはプレーオフを勝たねばならない。準決勝の相手はセルビアで、素晴らしいチームだ。でも、僕らだって素晴らしいと信じている」

今のノルウェー代表には若い才能が溢れている。

――あなたやレアル・ソシエダで脚光を浴びているマルティン・ウーデゴールなど、今のノルウェー代表の新世代は、史上最高と言えるのではないですか?

「素晴らしい世代だと僕も思っている。ノルウェーには若い才能が溢れている。これから輝かしい時間を一緒に過ごしていけると確信している」

――ノルウェーではすでに大スターですか?

「わからない。誰か他の人に聞いた方がいい」

――本当は分かっているのではないですか?

「たぶんスターかもしれないけど、僕には分からないね」

――2016年5月12日は、あなたにとって意味のある日ではないですか?

「ああ、何となくは……」

――ブリンFKでプロデビューを果たした日です。当時まだ15歳でした。

「たしかに特別な日だった。はじめて大人たちと対戦した。あのときから僕はずいぶん大きくなった。自分よりも身体が大きく年齢も上、経験も豊富な相手と戦うのはとてもいい経験になる。本当に多くのことを学んで、その後のキャリアに大いに役に立った。大人と一緒にプレーすれば、より早く学ぶことができるから」

U-20W杯で1試合9得点という爆発を。

――それではU-20ワールドカップのホンジュラス戦(2019年5月30日、12対0でノルウェーの勝利)で9得点を決めたのはどうですか。これもまたひとつの記録ですが……。

「うーーん」

――あの日こそ満足したのではありませんか?

「10得点ならきりが良くて悪くなかったけど、9点だったから……。まあそれでもいい思い出ではある」

――ならばまだ若いあなたのキャリアの中で最高の思い出は何でしょうか?

「たくさんある。9得点もそうだし、CLのデビュー戦(2019年9月17日、レッドブル・ザルツブルク対ヘンク。6対2でザルツブルクが勝った試合でハットトリックを記録)もそうだ。ドルトムントでのデビュー戦もよかった。ほんとうにたくさんあって、どれかひとつは選べないよ」

――あなたにとって現在最高の選手は誰ですか?

「難しい質問ばかりするなあ……。ひとり選ぶとしたら……(考えながら)たくさんいるからなあ……。メッシは並外れているしクリスティアーノ・ロナウドも並外れている。この10年間は彼らの試合を見るのが楽しみだった。見るたびに凄さを実感できたからね」

――対戦したいと夢見る選手はいますか?

「特に誰もいない。まだメッシともロナウドとも対戦していないけど、この先どうなるのかわからないだろう」

「どうして落ち着いているかは僕にもわからない」

――ならばどんなタイプのディフェンダーが嫌いですか?

「ファンダイク(=ビルヒル・ファンダイク)だね。彼は本当に強い。屈強なうえに速いし、あらゆる資質を備えている。凄い選手だと思う」

――10年後のあなたはどうなっているのでしょうか?

「全然想像がつかない。もちろん僕にも夢はあるけど、今はまだドルトムントに来たばかりで、この環境に満足している。今のこの時間を最大限に活用したいし、ここで何か大きなことができたらと願っている。他のことは考えられないね」

――ドルトムントは7000万ユーロの違約金を支払ってあなたを獲得しましたが、ここもひとつのステップなのでしょうか?

「まだ来たばかりだし、ここでいろいろなことをやり遂げたい。そのことだけに今は集中している。ピッチに立つたびに身震いしている。素晴らしい環境に包まれていると思う」

――PSGとのCL第2戦のことはよく考えますか?(インタビュー後の試合。結果は0-2でドルトムント敗退)

「まったく考えていない」

――PSGに対して何かメッセージはありますか?

「何もないし、試合のことは何も考えていない。とても落ち着いている」

――ストレスはありませんか?

「もちろんストレスが何かは知っているけど僕には関係ない。僕は落ち着いた人間なんだ」

――落ち着きを得るために何かしていますか?

「どうして落ち着いているかは僕にもわからない。僕はクールだ。そういうことさ」

そして……インタビューの新記録達成。

――あなたの苗字ですが、ユニフォームに書かれているようにHaalandなのか、それともノルウェーのメディアが表記しているようにHaland(正式な表記は2文字目のaがノルウェー語表記)なのでしょうか?

「aがふたつのHaalandが正しい表記だ」

――噂ではあなたの代理人を務めるミノ・ライオラが、あなたの名前を世界に広めるためにHaalandにしたということですが?

「そうじゃない。ユニフォームの表記で間違いない」

――これでインタビューはお終いです。

「オーケー」

――35分間話しました。新記録の樹立です(笑)。

「本当にたくさん質問したね……」

文=オリビエ・ボサール

photograph by Franck Faugere/L'Equipe