「東京問題」「東京由来」が懸念される中、プロ野球は7月10日から予定通り、有観客での試合を再開した。上限5000人、距離を保ち、鳴り物は禁じ、応援スタイルも制限された中ではあったが、確かに歓声が戻ってきた。

 いきなり3球場でサヨナラ本塁打が飛び交った。ダヤン・ビシエドが打ったナゴヤドームでは、試合後に京田陽太選手会長があいさつした。

「(前略)オープン戦が無観客で始まり、その後開幕の延期が決まりました。その間、ファンの皆様はステイホームを余儀なくされ、僕たち選手ももう一度体を作り直すことになりました。正直、今年はプロ野球を開幕できないのではないかと気が滅入りそうにもなりました。

 でも、僕はこの状況を恨んだりはしません。それ以上に、今現在も新型コロナと最前線の現場で闘い続ける医療・介護従事者の皆様、開幕に向けて準備してくださったプロ野球関係者の皆様、そして開幕を信じて待ち続けてくれたファンの皆様への感謝の気持ちの方が遥かに強いです(後略)」

 1試合が雨天中止となったため、5球場で開催されたが、選手が直接、観客(ファン)にメッセージを発信したのは中日だけだ。試合結果が最高だったこともあるだろうが、4958人の観客はこうしたシーンにも「プロ野球」を堪能できたに違いない。

石川昂弥の初安打は球史に残る。

 その2日後の12日に、新たな星がデビューした。東邦からドラフト1位で入団した石川昂弥である。昨年の選抜優勝投手は、高橋周平の故障に伴って、急遽昇格。与田剛監督は広島戦に「7番・三塁」で先発起用した。その第1打席で左翼線に二塁打。中日球団で高卒新人野手が初打席で初安打したのは森岡良介(現ヤクルトコーチ)以来。先発初出場での初安打となると、立浪和義以来、実に32年ぶりのことだそうだ。

 打ったのはチェンジアップだが、非凡さを感じさせるのは「真っ直ぐを打とうと思っていて、うまくためられました」という点だ。続く3打席はすべて三振というのも、かえって大物感が漂う。もちろん今季の高卒野手では出場も安打も一番乗り。新型コロナのシーズンで、観客が戻ってきた直後の初安打は球史にも残るといっていい。

多士済々の「佐々木世代(仮)」

「○○世代」という表現なら、やはり「佐々木世代」となるだろうが、それはあくまでも現時点での仮称。たとえば1学年上は根尾昂、藤原恭大、小園海斗、吉田輝星の名が浮かぶだろうが、1年目の昨シーズンは巨人の山下航汰がいきなりイースタン・リーグの首位打者となり、今シーズンは日本ハムの野村佑希が故障離脱するまでに2本塁打、8打点のインパクトある打力を見せていた。

 全員が21世紀生まれの「佐々木世代(仮)」は、根尾たちに負けず劣らずの多士済々。安打の第1号が出たこともあり、少し早いが二軍での途中成績を比較したい(数字は7月14日現在)。すでに一軍で初安打した石川は、9試合で打率.258、1本塁打、3打点。その石川と中学時代に「NOMOジャパン」でチームメートだった選手から。

最も一軍が近いと言われた黒川。

楽天・黒川史陽(智辯和歌山、ドラフト2位)

 5季連続出場の「甲子園の申し子」。それどころか父が上宮で選抜優勝、3兄弟も長男が日南学園(宮崎)出身で、三男は星稜(石川)在学中と一家全員が野球エリートだ。キャンプを一軍で完走するなど、最も一軍に近いと見られていたのも黒川だった。二軍成績は7試合で打率.214、4打点。

阪神・井上広大(履正社、ドラフト2位)

 昨年夏の甲子園決勝では、星稜・奥川から3ラン。球団では帝王学を学ばせるため、二軍では全11試合で4番に据え、打率.200、1本塁打、7打点とパンチ力を見せている。

DeNA・森敬斗(桐蔭学園、ドラフト1位)

 昨年のドラフト会議では、最後まで手の内を明かさなかったラミレス監督が、あっと驚く一本釣り。どうしてもほしかった地元の逸材というわけだ。7試合で打率.200、1本塁打、1打点。3拍子そろった遊撃手として期待されている。

中日・岡林勇希(菰野、ドラフト5位)

 高校時代は投打二刀流も、プロでは外野手に専念。8試合で打率.310、1打点と確実性ではライバルよりぬきんでている。

佐々木は未登板、奥川の一軍は?

 投手では佐々木朗希(ロッテ)は土台作りを優先し、まだデビューしていない。

 当初から完成度では先を行っていると言われた奥川恭伸(ヤクルト)も、首脳陣の方針で慎重にステップを踏んでいるが、すでに3試合に登板している。最速154キロ。いずれもリリーフで計4イニング投げ、被安打1、無四球で6奪三振と早くも二軍レベルは超えている。投手層の薄いヤクルトなら、のどから手が出るほどほしい「準即戦力」ではあるが、投手出身の高津臣吾監督だけにぐっと我慢。一軍デビューは段階を踏んでからになりそうだ。

 いきなり31発打った清原和博、最多勝のタイトルやベストナインを獲得した松坂大輔のような「怪物」とまではいかないが、近年の高卒ルーキーは粒ぞろいとの印象を受ける。同学年には負けたくないと、気になってはいるだろうが「誰が最初に打ったか」に、実は重い意味はない。各球団、自慢の有望株による出世レースは始まったばかりだ。

文=小西斗真

photograph by Kyodo News