8月2日、ついに新型コロナ感染による試合中止があった(西武vs.ソフトバンク)。今シーズンはこういう状況を乗り越えて、シーズンを進めていかなければならないと痛感する出来事だった。

【今週の“ぴかイチ選手” 楽天:涌井秀章】

 今季、楽天に移籍した涌井秀章が1勝を加え無傷の5勝0敗。パ・リーグのハーラートップに立っている。この活躍を予想した人は少ないのではないか。

 涌井は横浜高校時代の2004年夏の甲子園で活躍、ドラフト1巡目で西武に入団。2007年には17勝で最多勝を挙げた。エースにのし上がったが2013年オフにロッテにFA移籍。ここでも先発の柱として活躍するも今年、金銭トレードで楽天に移籍した。

勝ち運に見放された昨年から一転。

 昨年の涌井は不運に付きまとわれた。

 5月8日に3勝目を挙げたのを最後に、シーズン終了まで勝ち星から見放されたのだ。

 この間の投球成績は12試合0勝6敗、68回で防御率5.16と数字上は良くはなかったが、QS=クオリティースタート(6回以上投げて自責点3以下、先発投手の最低限の責任とされる)は6試合あり、3〜4勝くらいは挙げていてもおかしくなかった。

 涌井は12試合で44失点したが、味方の援護は24点と、涌井が投げたときに味方打線が湿っていたのだ。

 今季の涌井は見違えるような成績だ。6試合5勝0敗、37.1回、防御率2.89。7月8日ソフトバンク戦では5回を投げて自責点6ながら味方の援護が11点もあり、白星がついている。QSは4試合、涌井は6試合で13失点だが味方の援護が43点もあった。

 プロ野球投手の勝負はまさに「水もの」。涌井は5勝0敗という今の成績も大げさに喜んではいないだろうと思う。

涌井含めて過去7人が達成した記録。

 筆者は西武、ロッテ、楽天と春季キャンプで涌井の練習の様子を目にしてきたが、朝のウォームアップで彼の笑顔を見たことがない。女性ファンが多い選手だが、クールな表情で体を動かしていた。家でご夫人とそんな表情でご飯を食べているのか……なんてことをつい考えてしまうが、その端正な容貌の内側に様々な思いを押し隠しているのではないか。

 松坂大輔二世といわれ、同世代のダルビッシュ有とも比較された。西武ではエースからクローザーへの配置転換も経験し、2度の移籍。屈託をぐっと押し殺して、彼はプロとして責任を果たすことのみ考えているのだろう。

 涌井は西武で2回、ロッテで1回最多勝を獲得している。NPBでは2球団で最多勝をとった投手は涌井も含めて7人いる。

 スタルヒン(須田博、巨人5回、大映1回)
 別所毅彦(昭、南海1回、巨人2回)
 川崎徳次(巨人1回、西鉄1回)
 金田留広(東映1回、ロッテ1回)
 岩隈久志(近鉄1回、楽天1回)
 グライシンガー(ヤクルト1回、巨人1回)
 涌井秀章(西武2回、ロッテ1回)

 しかし3球団はいない。涌井が楽天で最多勝をとれば史上初の「3球団で最多勝」となる。
もう1つ、今季の涌井は規定投球回数ぎりぎりだ。もし規定投球回数未達で最多勝となれば1988年の伊東昭光 (ヤクルト) 、2005年の下柳剛 (阪神) に次ぎ3人目だ。記録マニアとしてはこれも興味津々だ。

 これらの記録を達成しても涌井は淡々と受け答えするのだろうが、快記録と珍記録をぜひ見てみたい。

楽天vs.ロッテは派手な打ち合いに。

<7月27日から8月2日までの1週間の成績>

【パ・リーグ】
○チーム成績
1 ソフトバンク5試合4勝1敗0分 率.800
打率.271 防率3.20
1 日本ハム5試合4勝1敗0分 率.800
打率.285 防率2.60
3 ロッテ6試合3勝3敗0分 率.500
打率.235 防率6.33
3 楽天6試合3勝3敗0分 率.500
打率.301 防率4.91
5 オリックス5試合1勝4敗0分 率.200
打率.193 防率4.83
5 西武5試合1勝4敗0分 率.200
打率.285 防率4.83

 日本ハムとオリックスは5試合だけで、日曜の試合は組まれなかった。また冒頭で記した通り、ソフトバンクと西武は1試合が中止になった。

 リーグ全体の防御率が4.51、投手がよく打ち込まれた週となった。特に楽天とロッテは打撃戦を演じ、6試合で楽天11本塁打、ロッテ9本塁打と派手な打ち合いだった。ソフトバンクと日本ハムは投手陣が好調を保った。

鈴木大地、ロメロ、浅村が好調。

○打撃成績
<最多安打>
11安打:鈴木大地(楽)

<最多本塁打>
4本塁打:ロメロ(楽)

<最多打点>
10打点:ロメロ(楽)

<最多盗塁>
2盗塁:小深田大翔(楽)、岡大海(ロ)

<打率3傑(規定打席以上)>
1 ロメロ(楽).588
2 柳田悠岐(ソ).438
3 近藤健介(日).429
4 中村晃(ソ).421
5 鈴木大地(楽).407

<RC(打撃総合指標)5傑>
1 ロメロ(楽)10.67
2 浅村栄斗(楽)7.54
3 井上晴哉(ロ)6.43
4 鈴木大地(楽)6.15
5 柳田悠岐(ソ)6.14

 楽天はロメロ、浅村、鈴木大地が大当たり。特にロメロは4本塁打10打点、打率.588と手が付けられなかった。ロッテの井上晴哉も3本塁打8打点を挙げている。またソフトバンク柳田は前週の打率.474に続き今週も.438と打撃好調をキープしている。

ソフトバンク石川が13Kプロ初完封。

○投手成績
<最多勝利>
1勝:石川柊太・千賀滉大・和田毅・嘉弥真新也(ソ)、杉浦稔大・上沢直之・バーヘイゲン・玉井大翔(日)、塩見貴洋・涌井秀章・久保裕也(楽)、石川歩・益田直也、チェン・グァンユウ(ロ)、與座海人(西)、齋藤綱記(オ)

<最多セーブ>
2セーブ:益田直也(ロ)、森唯斗(ソ)

<最多ホールド>
3ホールド:牧田和久(楽)

<最多奪三振>
13奪三振:石川柊太(ソ)

<防御率(規定投球回数以上)上位>
1 石川柊太(ソ)0.00
1 バーヘイゲン(日)0.00
1 塩見貴洋(楽)0.00
4 杉浦稔大(日)1.28
5 涌井秀章(楽)1.29
5 上沢直之(日)1.29

<PR(投手総合指標)上位>
1 石川柊太(ソ)4.51
2 バーヘイゲン(日)3.51
2 塩見貴洋(楽)3.51
4 杉浦稔大(日)2.53
5 涌井秀章(楽)2.51
5 上沢直之(日)2.51

 ソフトバンクの石川はプロ初完封。13奪三振の快投だった。日本ハムのバーヘイゲン、楽天の塩見は7回を零封した。

 救援では楽天の牧田和久は週間3ホールド。勝ち試合にからんだのは1試合だけだったが、計3イニングで1失点のみの数字を残した。

セは投手戦かつ混戦模様だった。

【セ・リーグ】
○チーム成績
1 中日6試合3勝1敗2分 率.750
打率.218 防率1.96
2 DeNA6試合3勝2敗1分 率.600
打率.234 防率4.58
3 巨人6試合3勝3敗0分 率.500
打率.233 防率3.50
4 ヤクルト6試合2勝3敗1分 率.400
打率.210 防率3.91
4 広島6試合2勝3敗1分 率.400
打率.239 防率3.40
4 阪神6試合2勝3敗1分 率.400
打率.233 防率3.74

 セ・リーグは投手戦が多かった。中日は先発投手陣が好投。対照的にDeNAは中継ぎが好投し週間10ホールド。リーグとしては大勝、大敗ともになく、混戦模様だった。

梶谷が切り込み隊長として大活躍。

○打撃成績
<最多安打>
9安打:梶谷隆幸(De)

<最多本塁打>
3本塁打:梶谷隆幸(De)、鈴木誠也・西川龍馬(広)、岡本和真(巨)、塩見泰隆(ヤ)

<最多打点>
8打点:梅野隆太郎(神)

<最多盗塁>
3盗塁:近本光司(神)

<打率上位(規定打席以上)>
1 ウィーラー(巨).389
2 木浪聖也(神).368
3 山崎晃大朗(ヤ).350
4 近本光司(神).333
4 梶谷隆幸(De).333
4 梅野隆太郎(神).333
4 福田永将(中).333

<RC(打撃総合指標)5傑>
1 梶谷隆幸(De)6.08
2 西川龍馬(広)5.92
3 鈴木誠也(広)5.29
3 宮崎敏郎(De)5.29
5 佐野恵太(De)4.73

 DeNAの梶谷が先頭打者初球ホームランなど9安打3本塁打と絶好調だった。広島の鈴木誠也と西川も週間3本塁打。阪神の近本は今季通算12盗塁と2年連続タイトルへ向けて、文字通り走っている。

配置転換の山崎康晃が3ホールド。

○投手成績
<最多勝利>
1勝:秋山拓巳・馬場皐輔(神)、遠藤淳志・野村祐輔(広)、大野雄大・勝野昌慶・岡田俊哉(中)、高橋奎二・原樹理(ヤ)、菅野智之・田口麗斗・大江竜聖(巨)、今永昇太・大貫晋一・濱口遥大(De)

<最多セーブ>
2セーブ:三嶋一輝(De)、R・マルティネス(中)、中川皓太(巨)

<最多ホールド>
3ホールド:山崎康晃(De)

<最多奪三振>
10奪三振:大野雄大・福谷浩司(中)、今永昇太(De)、藤浪晋太郎(神)

<防御率(規定投球回数以上)上位>
1 梅津晃大(中)0.00
1 高橋奎二(ヤ)0.00
1 野村祐輔(広)0.00
1 山中浩史(ヤ)0.00
1 福谷浩司(中)0.00
1 大江竜聖(巨)0.00

<PR(投手総合指標)上位>
1 梅津晃大(中)3.58
2 高橋奎二(ヤ)2.87
2 野村祐輔(広)2.87
2 山中浩史(ヤ)2.87
5 福谷浩司(中)2.15
5 大江竜聖(巨)2.15

 中日の梅津は10回を零封。しかし味方の援護がなく勝ち星はつかなかった。ヤクルトは高橋奎二と山中がともに8回零封の好投を見せた(高橋は今季初勝利)。中日の福谷は、勝ち星はつかなかったが先発転向2試合目で6回零封の好投。救援ではクローザーから配置転換したDeNA山崎が3ホールドを挙げている。

日本ハム宮西は史上17人目の700登板。

【まとめ&記録備考】
 メジャーリーグのように両リーグ、打投の週間MVPを選出するとすれば、以下のようになるだろう。

打:ロメロ(楽)
投:石川柊太(ソ)

打:梶谷隆幸(De)
投:梅津晃大(中)

 7月29日、日本ハムの宮西尚生が史上17人目の700試合登板を達成した。

 梅雨が明けて猛暑の季節。昔から強打者は8月に大記録を作ってきた。今年はどんな記録が生まれるだろうか?

文=広尾晃

photograph by Kyodo News