波乱に満ちた今シーズンも折り返し点が見えてきた。ここまで大きなトラブルがなかったのは幸いだ。

【今週の“ぴかイチ” 楽天 石井一久GM】

 これまでは選手を取り上げてきたが、楽天の新加入選手の成績を見ていて石井GMについてぜひ触れたいと思った。

 現役時代は茫洋としたイメージだった。エージェントは吉本興業だし、奥さんが著名なアナウンサーでもあるし、筆者は“石井一久は引退したら芸能界入りだろうか”と思っていた。

 しかし2018年8月に東北楽天ゴールデンイーグルスに取締役ゼネラルマネージャーとして入団したとたん、目の覚めるような活躍だ。

 今季の楽天の主な新戦力の成績を、昨年の同時期(56試合消化時点)と比較してみよう。

<ステフェン・ロメロ>
2019年 オリックス
24試82打22安4本12点1盗 率.268
2020年 楽天
50試178打53安15本35点0盗 率.298

<鈴木大地>
2019年 ロッテ
53試187打54安6本28点2盗 率.289
2020年 楽天
56試226打75安2本34点0盗 率.332

<涌井秀章>
2019年 ロッテ
10試3勝3敗60回50三振 防率3.90
2020年 楽天
9試8勝0敗61回57三振 防率2.21

<牧田和久>
2019年 米マイナーでプレー
2020年 楽天
25試1勝1S9H 23.2回17三振 防率1.52

<池田駿>
2019年 巨人
2試0勝0敗1回1三振 防率18.00
2020年 楽天
4試0勝0敗4.2回3三振 防率9.64

<高田萌生>
2019年 巨人
2試0勝0敗5回7三振 防率5.40
2020年 楽天
一軍出場なし

ロメロ、鈴木大地が打撃好調。

 先日、監督交代劇があったオリックスのファンは「ロメロをなんで出してしもたんや!」と嘆いている。昨年のロメロは故障で出遅れたが打撃は悪くなかった。今季は楽天の5、6番で実に勝負強い打撃を見せている。

 鈴木大地はロッテではポジションがころころ変わる中、結果を出してきた。今季は2番三塁にほぼ固定されて3割を軽く超える活躍だ。

 涌井の復活は多言を要しないだろう。史上初の3球団での最多勝へ向けてまっしぐらだ。アメリカから日本球界に復帰した牧田も救援で好成績を残している。

 シーズン中にゼラス・ウィーラー、高梨雄平とのトレードでともに巨人から来た池田と高田はまだ結果を出していないが、今後に期待が持てる有望な若手だ。

ウィーラー、高梨も巨人で活躍中。

 なお石井GMは、昨年も西武から浅村栄斗を獲得。いまや不動の4番打者だ。

 楽天は創設当初の“寄せ集め軍団”から田中将大、嶋基宏、聖澤諒ら生え抜きの活躍を経て、過渡期に差し掛かっていた。石井GMは大胆に外部戦力を入れてチームを覚醒させたのだ。

 石井GMが見事なのは、単に良い選手を取っただけではないことだ。

 現チームで活躍の場がないと判断した選手を絶妙のタイミングで放出している。代表例がシーズン中に巨人に移籍したウィーラー、高梨雄平の2人である。ウィーラーは3番に定着。高梨もセットアッパーとして活躍している。

 NPBでは有力選手を獲得しても、ポジションが重なる選手を抱え込むことが多い。「ポジション争いをさせる」などと言うが、選手にしてみれば出場機会が減るし「それなら出してくれ」と思う選手もいるはずだ。

 MLBでは、どんな強豪チームでもポジションが重なれば、選手を放出する。それがチームにも選手にもプラスだと考えるからだ。

 石井GMは「取りっぷり」がいいだけでなく、「出しっぷり」もいいのだ。残暑厳しき折だが、とかく地味になりがちなNPBのストーブリーグを熱くする石井GMに、今から期待を寄せておく。

オリは中嶋監督代行になって3連勝。

<8月17日から8月23日までの1週間の成績>

【パ・リーグ】
○チーム成績
1ロッテ6試合3勝2敗1分 率.600
打率.273 防率3.21
1日本ハム6試合3勝2敗1分 率.600
打率.284 防率3.44
3オリックス6試合3勝3敗0分 率.500
打率.260 防率3.00
3西武6試合3勝3敗0分 率.500
打率.284 防率3.71
5ソフトバンク6試合2勝3敗1分 率.400
打率.235 防率4.02
5楽天6試合2勝3敗1分 率.400
打率.251 防率5.19

 大きく勝ち越したチームも負け越したチームもなく、混戦模様となっている。

 オリックスは8月20日に西村徳文監督が辞任したが、中嶋聡監督代行となったとたんに3連勝。週の半ばで明暗が逆転している。

楽天は田中和基もヒット量産。

○打撃成績
<最多安打>
13安打:田中和基(楽)、中村奨吾(ロ)

<最多本塁打>
4本塁打:ジョーンズ(オ)

<最多打点>
8打点:ジョーンズ(オ)、中田翔(日)

<最多盗塁>
2盗塁:柳田悠岐、周東佑京(ソ)、田中和基(楽)、スパンジェンバーグ(西)、和田康士朗(ロ)

<打率5傑(規定打席以上)>
1 田中和基(楽).565
2 外崎修汰(西).500
2 吉田正尚(オ).500
4 渡邉諒(日).474
5 松本剛(日).471

<RC(打撃総合指標)5傑>
1 田中和基(楽)9.38
2 外崎修汰(西)9.29
3 中村奨吾(ロ)8.15
4 柳田悠岐(ソ)7.45
5 吉田正尚(オ)7.19

 楽天の田中は2018年の新人王だが、昨年はやや成績が低迷していた。今季も出遅れて8月4日に一軍に昇格したばかりだが、この週は23打数13安打2二塁打1三塁打1本塁打の大活躍を見せた。

 オリックスのジョーンズは週の前半こそ全く当たっていなかったが、中嶋監督代行になったとたんに4本塁打8打点。3試合連続で決勝点を挙げている。また日本ハムの中田翔は前週に続いて最多打点をマークしている。

山本由伸は西武相手に12奪三振。

○投手成績
<最多勝利>
1勝:則本昂大、涌井秀章(楽)/美馬学、石川歩、フローレス(ロ)/高橋光成、平井克典、ギャレット(西)/有原航平、上沢直之、バーヘイゲン(日)/石川柊太、モイネロ(ソ)/張奕、ヒギンス、吉田凌(オ)

<最多セーブ>
3セーブ:増田達至(西)

<最多ホールド>
2ホールド:森唯斗、モイネロ(ソ)/ヒギンス、齋藤綱記(オ)/ギャレット、平良海馬、宮川哲(西)/堀瑞輝(日)/ハーマン、唐川侑己(ロ)

<最多奪三振>
12奪三振:山本由伸(オ)

<防御率(規定投球回数以上)上位>
1 山本由伸(オ)0.00
1 上沢直之(日)0.00
1 バーヘイゲン(日)0.00
1 石川柊太(ソ)0.00
5 則本昂大(楽)1.13
5 涌井秀章(楽)1.13

<PR(投手総合指標)上位>
1 山本由伸(オ)2.91
1 上沢直之(日)2.91
3 バーヘイゲン(日)2.49
3 石川柊太(ソ)2.49
5 則本昂大(楽)2.32
5 涌井秀章(楽)2.32

 オリックスの山本由伸と日本ハムの上沢が7回自責点ゼロの好投を見せた。特に山本は先発全員の12奪三振と西武打線を抑え込んだ。救援では西武の増田が3セーブを挙げている。

中日が2週連続で週間首位。

【セ・リーグ】
○チーム成績
1 中日6試合5勝1敗0分 率.833
打率.292 防率1.87
2 広島6試合3勝2敗1分 率.600
打率.249 防率3.93
3 巨人6試合3勝3敗0分 率.500
打率.228 防率3.35
4 DeNA6試合2勝3敗1分 率.400
打率.240 防率2.94
5 ヤクルト6試合2勝4敗0分 率.333
打率.234 防率5.83
5 阪神6試合2勝4敗0分 率.333
打率.199 防率3.96

 中日が2週連続で1位。セ・リーグの台風の目になりつつある。一方で阪神は37イニング連続無得点を記録するなど、この週のチーム打率は.199。巨人との3連戦では深刻な打撃不振に陥っていた。

好調の大島&ビシエド、堂林は復調。

○打撃成績
<最多安打>
13安打:大島洋平(中)

<最多本塁打>
3本塁打:堂林翔太(広)、坂口智隆(ヤ)

<最多打点>
9打点:堂林翔太(広)

<最多盗塁>
1盗塁:村上宗隆、西浦直亨、宮本丈、上田剛史(ヤ)/野間峻祥(広)/大島洋平、京田陽太(中)/大城卓三、増田大輝(巨)/梅野隆太郎(神)

<打率5傑(規定打席以上)>
1 大島洋平(中).542
2 ビシエド(中).522
3 ソト(De).375
4 堂林翔太(広).360
5 阿部寿樹(中).348

<RC(打撃総合指標)5傑>
1 ビシエド(中)9.15
2 大島洋平(中)8.01
3 丸佳浩(巨)6.34
4 阿部寿樹(中)6.25
5 堂林翔太(広)6.12

 打撃好調な中日打線でも特に目立っているのは、大島の24打数13安打2二塁打1三塁打。ビシエドも23打数12安打4二塁打2本塁打の成績を残している。

 広島の堂林は8月に入って不振に陥り、一時3割を割り込んでいた。しかし今週は25打数9安打2二塁打3本塁打9打点と息を吹き返した印象だ。

菅野&大野が鮮やかな完封勝利。

○投手成績
<最多勝利>
1勝:菅野智之、戸郷翔征、田中豊樹(巨)/大野雄大、福谷浩司、小笠原慎之介、ロドリゲス、福敬登(中)/大瀬良大地、森下暢仁、塹江敦哉(広)/西勇輝、藤浪晋太郎(神)/小川泰弘、高梨裕稔(ヤ)/井納翔一、ピープルズ(De)

<最多セーブ>
2セーブ:フランスア(広)、スアレス(神)、石山泰稚(ヤ)

<最多ホールド>
3ホールド:高梨雄平(巨)

<最多奪三振>
11奪三振:戸郷翔征(巨)

<防御率(規定投球回数以上)5傑>
1 菅野智之(巨)0.00
1 大野雄大(中)0.00
1 戸郷翔征(巨)0.00
1 井納翔一(De)0.00
1 ロドリゲス(中)0.00

<PR(投手総合指標)5傑>
1 菅野智之(巨)3.66
1 大野雄大(中)3.66
3 戸郷翔征(巨)2.71
4 井納翔一(De)2.44
4 ロドリゲス(中)2.44

 巨人・菅野と中日・大野がそれぞれ完封勝利を挙げている。巨人は戸郷も6.2回を零封としっかりとゲームを作った。救援投手では、冒頭に触れたように、シーズン中に楽天から巨人に移籍した高梨が3ホールドとしっかり仕事をしている。

久々登板の内海哲也が1500奪三振。

【まとめ&記録備考】
 メジャーリーグのように両リーグ、打投の週間MVPを選出するとすれば、以下のようになるだろう。

打:ジョーンズ(オ)
投:山本由伸(オ)

打:ビシエド(中)
投:大野雄大(中)

 西武、内海哲也が8月22日のオリックス戦で史上56人目となる通算1500奪三振を達成。内海は巨人時代の2018年9月14日のDeNA戦以来の一軍登板だった。またヤクルト山田哲人が8月23日の阪神戦で史上507人目の1000試合出場を達成している。

 パ・リーグは同一カード6連戦は先週で終わって、今週からは3連戦×2となる。つまり週半ばで移動日なしの転戦となる。これがペナントレースにどう影響するかが注目点となりそうだ。

文=広尾晃

photograph by Kyodo News