8月21日のヤクルト戦で、藤浪晋太郎が692日ぶりに勝利を挙げました。

 ファンの皆さんにとっても待ちに待った1勝だったと思います。時間はかかりましたが、高卒新人から3年連続二桁勝利の逸材が、ようやく復活のスタートラインに立ったと言えるでしょう。

 今季初登板は7月23日の広島戦でした。初回に大山悠輔のホームランで2点を先制し、5回までは無失点。これは、と期待しながら見ていましたが、6回にピレラに満塁ホームランを許してしまいました。あの1球だけがもったいなかったですが、限りなく無失点に近い4失点だったと思います。

 続く2戦目のヤクルト戦(7月30日)は7回を投げきり、自責点は1(4失点)。投球自体は評価できる内容でしたが、守備の乱れが響き、援護点にも恵まれず。ツキがないな、という感じでしたね。このあたりからローテーションをしっかり担える位置をつかみました。

巨人カードの初戦に起用しては?

 8月に入り、5日の巨人戦も4失点。相手先発・戸郷翔征の調子がよく、打線にもチャンスはありませんでした。

 チームとしても今季は巨人に2勝8敗(8月28日現在)。特に岡本和真に打たれるシーンが目立ちますね。この“お得意様”状態を脱するために、藤浪の起用をカード初戦にしてみるのは有効だと思います。荒れ球がそもそも持ち味ですから、怖さを植え付けられますし、そうすれば自然と踏み込みも浅くなる。反応が遅れれば2戦目、3戦目の調子にも響くかもしれない。戦術として特性を活かしてあげることも大切だと思います。

 このあとはしばらく間隔が空きました。相手チームに合わせてローテーションを変えているのだと思いますが、私の経験から言うとこれはやめてほしいところ。私は横浜が苦手でローテーションを飛ばされることが多かったのですが、そうすると苦手なままになってしまいますし、何より感覚が狂ってしまいかねないんです。藤浪も、14日の広島戦は今シーズンで一番調子が悪いように見えました。

バット、走塁でも貢献した藤浪。

 そして迎えた21日ヤクルト戦。2回にタイガースにとっては38イニングぶりの得点が入りましたが、その1点目をもぎ取ったのは他ならない藤浪のバッティングでした。技のあるサードならアウトになっていたかもしれませんが、本人もダブルプレーになるんじゃないかと思って一生懸命走ったそうです。そのあとも三塁まで進み、タッチアップで生還。自ら必死に打って走ったことが勝利に繋がりました。

 ピッチングの方は、立ち上がりがあまり良くありませんでしたね。特に2回裏は内野安打でエスコバーが出塁し、梅野隆太郎が送りバントの処理を急ぎすぎたのか悪送球になってオールセーフ。さらには振り逃げの間に走者が帰ってくるという嫌な点の取られ方までありました。

 勝利の立役者はボーアですね。嫌な流れの後の3回にホームランで突き放し、8回にももう1本。7月に比べると調子が落ちてきて20試合ほど本塁打がありませんでしたが、ひと安心です。それにしても、東京ドームへ行ったあと揃いも揃って打てなくなるのはなぜなんでしょうね……。

「まずは7回を投げ切ること」

 話を藤浪に戻しましょう。5回に村上宗隆のホームランで3点差に詰め寄られました。スライダーが少し甘く入ってしまいましたが、あれはしょうがないですね。その前の打席は直球をセンター前に弾き返されていましたし、そのあたりのヤマの張り方が本当に上手い。村上の方が一枚上手だったということです。

 7回には坂口智隆にカウント1-0からホームランを浴びて2点差となり、藤浪はこの回で降板になりました。まず7回を投げきるということは今後の課題ですね。

藪氏が懸念する投手起用とは?

 ただ、私が気になったのはその後の采配ですね。

 7回は14日に一軍に戻ってきた岩崎優が無失点で締めたのですが、8回表にボーアがホームランを打ったあと、そのまま岩崎が打席に立ちました。8回はガンケル、9回はスアレスというリリーフ起用が多いので、続投なんだなと。ところがその裏にヤクルトの右の代打・廣岡大志がコールされると、あっさりガンケルに交代してしまいました。

 ここからわかるのは、首脳陣がリリーフをイニング単位で決めていないということです。バッターが誰か、右打者なのか左打者なのかということを見て誰が投げるかを決めているんですね。これは投手にとってはかなりやりにくいはずです。

 この回は自分のイニングだ、と決まっているほうが準備もしやすいですし、モチベーションも上がります。先発ピッチャーとしても、7回までとりあえず投げきれば良い、もし球数を少なく抑えられていれば、8回や9回を狙っていくんだ、と割り切れますしね。代打起用にしてもそうですが、ここは誰が行くかということが決まっているチームのほうが強いんですよ。相手チームにもわかるぐらいでいいんです。

 しかもこのケースの場合、代打を送らずに岩崎を立たせたことで結果的に1打席ムダにしてしまっているわけですから。裏に誰が来ても岩崎と決めているなら打席に立たせればいいですし、8回はガンケルと決めていれば、二軍から上げたばかりだった小幡竜平ら若手に経験を積ませることもできたはずです。

 些細なことかもしれませんが、こういったことにきちんと基準を設けてそれを守っていくことが、藤浪の2勝目、3勝目にも繋がっていくと思います。

文=藪恵壹

photograph by Kyodo News