現地時間10日〜13日で行われた米女子ツアー「ANAインスピレーション」。今季メジャー第2戦となる同大会は、毎年カリフォルニア州ランチョミラージュ・ミッションヒルズCCのダイナショアコースで開催されている。

 グリーンは速く、フェアウェイの起伏は激しい。さらに6763ヤードと距離も長い。

 そのメジャーに相応しい難コースは、コロナ禍の影響で4月上旬から9月へ日程が変わったことで、例年以上に厳しい舞台に仕上がっていた。

 9月のランチョミラージュは、とんでもなく暑い。

 試合前の天気予報だと、連日の予想最高気温は40〜45度。しかも4月中旬以降、雨が降っていないという。米女子ゴルフツアーは、熱中症予防など健康面を考慮して、キャディに試合中の電動カートや手引きカートの使用を許可した。

 ところが、トップ選手たちは動じない。

「自宅があるラスベガスはもっと暑い」(ダニエル・カン/世界ランク2位)

「フロリダの蒸し暑さに比べたら、全然まし。今週は無風だから、絶好のゴルフ日和」(レキシー・トンプソン/世界ランク12位)

 試合前に頼もしい言葉が並ぶ。

選手たちが警戒した「深いラフ」

 選手たちが警戒したのは気温よりも「バミューダ芝の深いラフ」だった。

 例年の4月開催時よりラフが長い。バミューダ芝は芽が強いため、クラブフェースに絡みやすく、距離感を合わせることが難しい。フェアウェイを外した場合、芝の上に浮いているのか、ラフにすっぽり埋まっているのか、ボールの状態によって色んな打ち方を求められる。

 それでも'11年の覇者のステイシー・ルイスは、コースの攻略に自信を見せた。

「私が拠点とするダラスのコースはバミューダ芝が多いので慣れています。私が受けたのは10年ぐらい前になりますが、だいたいこの時期に米ツアーの予選会がこのコースで開催されたのでプレー経験もあります」

 良いショットを打てばバーディチャンスがあり、フェアウェイを外せばスコアを落とすリスクがある。1ショットずつ、プロゴルファーとしての力量が試される4日間となった。

攻めの姿勢が見えた渋野

 日本勢は5選手が出場し、畑岡奈紗7位タイ、渋野日向子51位タイ、河本結69位タイ、野村敏京と上原彩子は予選落ちを喫している。

「AIG女子オープン(以下、全英女子)」の前年覇者の重圧から解放された渋野は、攻めの気持ちを取り戻したように見えた。

 初日を首位と4打差の2アンダーで終えて、「今年一番良いゴルフができた。バーディ、バーディ発進でちょっとびっくりしちゃって、(3ホール目で)ボギーとった時は安心した感じだった」と報道陣のオンライン取材では冗談を交えつつ笑顔を見せた。

 この試合から挑戦したクロスハンドの握りのパットも功を奏した。全英女子を予選落ちした翌日から練習を開始したという

「今までの私はパンチが入る強気のパットだったので、(今週の)速さのグリーンだとなかなかタッチが合わせにくいのかなと思っていました」

 日米合わせて今季4試合目で、初の予選通過となったものの、やはり慣れないアメリカ本土の難コースに翻弄された。

最終日に崩れた渋野「情けない」

 試合後のオンライン取材では、日々のスコアに左右される渋野の感情が現れていた。

 2日目(3バーディ、4ボギー、1ダブルボギー)

「(予選通過して)やっと今年開幕できたのは嬉しいんですけど、後半のゴルフに関しては、本当に最悪だと思うので、しっかり練習したいです」

 3日目(6バーディ、1ボギー)

「最後まで集中力を切らさず、粘るところは粘って、パーでしのいで、バーディ決めるとこは決めて、本当に絵に描いたようなゴルフができたかなと思います」

 最終日(1バーディ、5ボギー、1ダブルボギー)

「4日間の集大成にしては本当に情けない」。記者から今したいことを尋ねられると「ベッドにダイブしたいですね」

 試合後はアイアンショット、パッティング、安定感、ショットの飛距離、スピン量など課題を口にした渋野。昨季のメジャー覇者である一方、まだプロ転向から2年目。成長を長い目で見守りたいところだ。

渋野と同い年の河本も予選通過

 渋野と同じく、河本結も初出場で予選通過した。

 今季から米ツアーを主戦場とする河本は、2日目を終えて、自身の成長を言葉にした。

「言葉で表現するのは難しいんですけど、1試合、1試合、1つ1つの出来事が本当に自分を強く成長させていると感じている。キャディさんとのコミュニケーションだったり、他の選手との英会話だったり、言いたいけど伝わらないもどかしさだったり、プレー中の孤独感だったり、そういう全てにおいて自分らしくいられるようになってきている。ここにきて自分が少しずつ自信を持って、胸をはれてきているのかな」

 渋野も河本も2年前は(日本ツアーで下部の)ステップアップツアーでプレーしていた。

 河本は22歳、渋野はまだ21歳。初めてのANAインスピレーションで、予選通過は上出来である。

参戦4年目の畑岡はトップ10入り

 2人と同学年の畑岡奈紗は'18年以来のメジャートップ10入りを果たした。

 米ツアー4年目の経験を生かし、6番ホール攻略のため5番ウッドを入れた。

「いつもは3番ウッド、3番ハイブリッド、または4番ハイブリッドを入れてるんですけど、それを抜いて、18番もティーイングエリアが前に出た時には多分、5番ウッドぐらいの距離が残るっていうことで、キャディと話して5番ウッドを入れることにしました」

 狙い通りに、初日と2日目に6番でバーディを奪った。その実力に恐れ入る。

 4日間通して、パーオン率79.2%と畑岡のショットは冴えた。たらればの話になるが、もうひと転がりという惜しいパットが続いたので、もしそのうちの1つでも2つでもバーディが決まって、プレーの流れが変わっていたら、優勝争いに加わっていたかもしれない。

「今週のプレーはすごく自信になると思うので、(残りのメジャー2大会も)頑張っていきたいです」と試合後に締めくくった。

優勝は初メジャー制覇のイ・ミリム

 試合はリーダーボードにはトップ選手の名前がズラリと並んだ。4日間ずっとほぼ無風だったことも影響したのか、全英女子のように日替わりでツアー未勝利の選手がトップに駆け上がることなく、実力者たちの健在ぶりが目立っていた。

 優勝は15アンダーの29歳のイ・ミリム(韓国)。ブルック・ヘンダーソン(カナダ)、ネリー・コルダ(アメリカ)とのプレーオフ1ホール目でバーディパットを沈めて、歓喜の涙を拭った。米ツアー4勝目が初めてのメジャー制覇となった。

 メジャーの熱気が冷めやらぬまま、今週は「キャンビア・ポートランドクラシック」が開催される。米ツアー1年目の河本、スポット参戦の渋野にとって初めてのコースである。畑岡は「調子が上がってきているので、優勝目指して頑張りたいです」と意気込んだ。

 秋の熱戦は、まだまだ続く。

文=南しずか

photograph by USA TODAY Sports/Reuters/AFLO