「空前の大豊作」となっているJリーグのルーキーたち。何人もの新人たちが主力の一角に食い込み、勝敗の行方を決定づけるような大仕事までやってのけている。ここでは「7人の最注目ルーキーを見逃すな!」として、元『週刊サッカーマガジン』編集長・北條聡氏の解説で紹介していきたい。(構成=Number Web編集部)

(1)三笘薫(川崎フロンターレ/筑波大出身)

 まずはやはり三笘薫(川崎フロンターレ、23歳、178cm/71kg)でしょう。主に左ウイングとして起用され、16節終了時点で14試合8ゴール。途中出場が多いにもかかわらず、その“得点力”を証明しています。

 三笘の魅力は何より「見ていてワクワクする」選手だということ。左サイドのオープンスペースが彼の主戦場です。ボールを受けると独特の間合いとリズムで相手をかわしていく。右利きの選手が左サイドで起用されると“カットイン”するパターンが多いですが、三笘はタテに抜けるドリブルが上手い。そしてタテ抜けしたあとのクロス、シュートも申し分ない。

 ガンバ大阪戦(8節)で、大島僚太の得点をアシストした場面では左サイドのドリブルで3人の相手選手を引きつけていました。それだけ彼の1対1は相手チームの脅威になっています。

 J1のウイングの選手ではすでに1、2を争うポジションにいるのではないでしょうか。ここで取り上げる他の選手と同じく三笘も東京五輪世代です。同じポジションには食野亮太郎(リオ・アヴェ/ポルトガル)や遠藤渓太(ウニオン・ベルリン/ドイツ)らライバルがひしめいています。課題の“守備力”を向上させれば、来年の東京五輪代表入りも十分ありえるでしょう。

(2)旗手怜央(川崎フロンターレ/順天堂大出身)

 三笘と同じく、J1で首位を独走する川崎で活躍するのが旗手怜央(22歳、171cm/70kg)です。リーグ16節終了時点で(途中出場も多いものの)16試合に出場、3ゴールを挙げています。三笘のほうが目立ちがちですが、出場機会が多いのはじつは旗手のほうです。

 左右のウイングで使われる機会が多いですが、左も右もインサイドハーフもこなせる「汎用力」があります。機動力あふれる攻撃も魅力ですが、守備のハードワークもできる。川崎は前からプレスするサッカーをしていますが、その戦術にピッタリ。しつこい守備を仕掛けてくるので、相手にとっては“めんどくさい”選手といえるでしょう。

(3)安部柊斗(FC東京/明治大出身)

 次に紹介したいのはFC東京の安部柊斗(22歳、171cm/67kg)です。関東大学リーグ、総理大臣杯、インカレの3大タイトルを獲得した「最強明治」の一員です。

 FC東京は東慶悟がケガで離脱、さらに橋本挙人(ロストフ/ロシア)、室屋成(ハノーファー/ドイツ)の主力が次々と移籍しました。

 その橋本の穴を埋める形で台頭してきたのがボランチの安部です。安部はいわゆる“ボックストゥボックス”=自陣ゴール前から相手ゴール前まで幅広く顔を出し、攻守において活躍できる選手です。

 少し前の日本代表でいえば稲本潤一(SC相模原)や今野泰幸(ジュビロ磐田)に似たタイプと言えば、イメージしてもらいやすいかもしれません。中盤でボールを取り切れる選手は貴重なので、東京五輪代表にも一度呼んでもいいのでは、と思います。

(4)荒木遼太郎(鹿島アントラーズ/東福岡高出身)

 内田篤人が引退した鹿島。その鹿島で高卒ルーキーとして内田以来14年ぶりにリーグ開幕戦に出場したのが荒木遼太郎(18歳、170cm/60kg)です。

 右MFや左MFで出場することが多いのですが、14試合で2得点を挙げています(16節終了時点)。狭いスペースでプレーできることが魅力で、相手DFの中間ポジションでパスを引き出す。そしてボールを持つと高い技術で、クルリと前を向きチャンスメイクします。その姿は香川真司(レアル・サラゴサ/スペイン)を彷彿とさせます。今季J1の高卒ルーキーで一番目立っている選手でしょう。

(5)高嶺朋樹(北海道コンサドーレ札幌/筑波大出身)

 北海道コンサドーレ札幌では、高嶺朋樹(22歳、177cm/74kg)、田中駿汰(23歳、183cm/68kg)、金子拓郎(23歳、178cm/68kg)という3人のルーキーがペトロヴィッチ監督のもと、“ミシャサッカー”にすんなりと適応して躍動しています。

 なかでも高嶺はレフティで走力があり、面白い選手です。もともとボランチを主戦場とする中盤のプレーヤーですが、スリーバックの左CBで使われることが増えています(16節終了時点で14試合出場)。

 ベガルタ仙台戦(5節)でも左CBとして途中出場。相手2人対1人という難しい局面で、パスコースを限定しながら間合いをはかるとボールホルダーとの距離を一気に詰め、ピンチを脱出。高い戦術眼を感じさせました。さまざまなポジションをこなせるユーティリティープレーヤーとして服部年宏(元ジュビロ磐田など)のような活躍を期待しています。

(6)松尾佑介(横浜FC/仙台大出身)

 今季J1に上がった横浜FCが下平隆宏監督のもと“意外性のある”面白いサッカーをしています。そのチームで昨年から特別指定選手として活躍していたのが松尾佑介(23歳、170cm/65kg)です。J1昇格の中心選手でしたが、仙台大を卒業し、今年が“プロ1年目”となります。

 左のウイングで起用される松尾は14試合で4ゴールを挙げています(16節終了時点)。その魅力は、ドリブルで切り崩していく「破壊力」。同じく左サイドの三笘薫(川崎)と近いイメージですが、トップスピードへの加速力はむしろ松尾に分があるかもしれません。

(7)藤田譲瑠チマ(東京ヴェルディ/ヴェルディ・ユース出身)

 最後にJ2から注目の新人プレーヤーを紹介しましょう。東京ヴェルディの18歳藤田譲瑠チマ(173cm/70kg)です。

 ヴェルディの永井秀樹監督は2017年からユースの監督を務め、昨夏にトップの監督に就任しました。以来、自ら育ててきたユースの選手を積極的に起用しています。いまやヴェルディの「不動のボランチ」となった藤田もそのひとりです。

 ヴェルディは“ボールを動かす”サッカーをしていますが、その中心にいるのが彼です。後ろからビルドアップするさいに、顔を出し、1度藤田を経由してボールを前に運んでいく。特筆すべきは、そのとき藤田がワンタッチ、もしくはツータッチでプレーしていること。判断の速さ、広い視野と高い技術を感じさせます。

 長谷部誠(フランクフルト)以来海外で活躍するボランチはなかなか出ていませんが、藤田にはゆくゆくそういう選手になっていって欲しいと期待しています。

(※関連記事より【前回を読む】三笘薫23歳、旗手怜央22歳だけじゃない……Jリーグのルーキー“空前の当たり年”なのはなぜ?  もぜひご覧ください)

文=北條聡

photograph by J.LEAGUE