Jリーグは新型コロナウイルス中断期間があったものの、後半戦に差し掛かっている。その中で首位を快走するのは川崎フロンターレだ。2位セレッソ大阪に勝ち点差11をつける独走とともに得点「59」もダントツ。そこで今回は第18節までの印象に残る“ゴラッソ”を川崎を定点取材する、いしかわごう氏に5つ選んでもらった。

<第8節G大阪戦:大島僚太>
 全く予期せぬタイミングと軌道だったのだろう。

 大島僚太が右足のアウトで一閃すると、ゴールネットに吸い込まれていくその弾道を、名手・東口順昭も見送るしかなかった。この大島の一撃が決勝弾となり、ガンバ大阪との首位攻防戦を制した川崎フロンターレは、その後も首位をひた走ることとなった。

 注目すべきは、アシストをした三笘薫の仕掛けだろう。猛威を振るい始めた新人ドリブラーの仕掛けを警戒したガンバ守備陣は、瞬間的に3人が対応。ただそれによって大島がフリーになっている。三笘が時間を作ってくれたことが大きかったと大島は話す。

「薫のドリブルは相手にとって脅威だと思いますし、あのシーンも人数をかけて(相手の)チャレンジ&カバーも多かった。引きつけてくれたことで、僕自身にも時間が生まれたかなと思います。チームみんなで奪えたゴール」

 この得点に関していえば、ダイレクトで合わせた技術もさることながら、大島自身の変化が感じられた点で興味深かった。

インサイドハーフ大島が狙うミドル

 去年までボランチを務めていた彼は、ゴールやアシストよりもその1つ前のプレーを担うことが中心で、たとえゴール前の決定機でも、得点につながる確率が高ければ味方にパスをする選択が多かった。しかしインサイドハーフになったことに伴い、シュートという選択肢の序列を上げた。本人もシュートを選択した後の展開をイメージすることが多くなったと話している。

「打てそうだなと思ってその選択をしなかった時に、『打ってみたら、どうだったかな』と感じることも多いです。なるべくそういうところで、そこの(打つ)選択は持とうと心がけるようになっています」

 実際、このG大阪戦直後のルヴァンカップ・鹿島アントラーズ戦でも得点を記録。この時も自分の決断に明確な変化があると言及している。

「今までだったら、あのタイミングでもう1個(ボールを)持ったりしたかもしれないですけど、自分の中で『打ってしまえ』という気持ちの持ち方が少し違いますね。ゴールを決めてやろうというよりは、『まっ、いいか』ぐらいの気持ちの感じが、そういう選択になっていると思います(笑)」

 今季公式戦で記録した4得点はいずれもミドルシュートだ。あくまで気楽に狙うというところが大島らしいが、そのスタンスが相手守備陣にはより一層の怖さを与えているのかもしれない。

チョン・ソンリョン→小林悠で仕留める

<第10節札幌戦:小林悠(5点目)>
 多彩な崩しが多い川崎のゴールシーンにおいて、ロングボール1本でフィニッシュに持ち込んだこの力業は、やや異質だ。この場面では、チョン・ソンリョンからのフィードを胸でコントロール。宮澤裕樹のコンタクトにも動じず、次の瞬間には鋭いターンで菅大輝をかわして置き去りにした。

「自分は背があまり高くないので、相手に体をぶつけながらキープしようかなと思ってたんですが、いいところで胸トラップができました。2タッチ目で、相手の間にクイッと入れた。コンディションの良さも感じられましたし、シュートも落ち着いて決められた。いいゴールだったかなと思います」(小林悠)

 身体が切れている状態の小林は、相手と競り合いながら胸トラップした際にシュートに持ち込む動作が極めてシャープで、それを示す一撃だったとも言える。

ジュニーニョ越えのパフォーマンス

 ただ、より印象深いのは、決めた後の光景かもしれない。小林は天に向かって指を差す儀式をしている。

「ジュニーニョを越えたときにやろうと決めていたパフォーマンスです」

 試合後の小林は、少し照れ臭そうにしてそう明かした。これは若手時代に「師匠」として慕っていたFWジュニーニョのお馴染みのゴールパフォーマンスでもある。彼の記録していたクラブ通算得点数110を抜き、単独の最多得点者となったことで、それを披露したというわけだ。思えばジュニーニョもよくグループとして連動した崩しではなく、個の力でシュートまで持ち込んでゴールを決めていたものである。

「いろんなケガだったり苦労もしてきましたが、ずっと貪欲にゴールを目指してやってきたのがフロンターレでのジュニーニョ超えにつながったと思っています。今日みたいに、ベテランと言われても、ギラギラしてゴールを目指して、相手にとって嫌な選手でいられるようにこれからも頑張りたいなと思ってます」

 ジュニーニョが退団する時にかけてもらった「チームが苦しいときにゴールを決めるストライカーになれ」という言葉は、小林の心に今も深く刻み込まれている。師匠超えによって、自分の大事な心構えを思い出すメモリアルにもなったに違いない。

今季大ブレイク・三笘の一撃は……

<第11節C大阪戦:三笘薫>
 今季、もっとも活躍しているルーキーと言っても過言ではないだろう。圧巻のドリブルで存在感を放っている三笘薫だが、得点の多くは相手との駆け引きだ。その中でも公式戦5試合連続得点を記録したこのゴールを挙げておこう。

 小林悠からのリターンをもらってエリア内に侵入した際、最初はファーに巻いたシュートをイメージしていたという。ただ体を開いた際の相手の対応を見て、瞬時に判断を変えられるのが、三笘薫の真骨頂である。

 この時は構えていたマテイ・ヨニッチのブロックに合うと予測し、彼の両足が開いていたこと、さらに奥にいるGKキム・ジンヒョンが動いていたことも見逃さず、ヨニッチの股を通すコースに変更したのだ。威力は決して強くなかったが、GKの逆を突いたことで、簡単にゴールネットに吸い込まれていった。その時点で2−3と追いすがる相手の心を折る追加点となり、失点の瞬間、セレッソ守備陣は一斉に肩を落としている。

「(ボールを)持った瞬間にファーを狙おうと思いましたが、(相手に)当たると思ったので、うまく外に開いてGKを動かせました。(シュートは)あまり良くはなかったですけど、逆をつけたので(相手GKも)力強く弾けなかった。それは良かったと思います」

言語化に長けたドリブラーである

 三笘薫を取材していて感じるのは、言語化が実に巧みだということである。個人的な経験だが、ドリブラーにはフィーリングや発想を大事にするタイプが多いためか、感覚的な言葉を選びがちで、プレーを論理的に説明できる選手はそう多くない印象だ。

 ただ三笘は違う。明確な言葉に落とし込んで振り返る作業が、実に的確で滑らかなのである。頭の回転も速いのか、質問にも考え込むことなく即答でコメントするのも特徴だ。シーズン後半は、ドリブルだけではなく、彼の紡ぐ言葉に注目してみると面白いかもしれない。

もちろん真打・憲剛の復帰ゴールも

<第13節清水戦:中村憲剛>
 シーズン前半を振り返る上で、中村憲剛のゴールはやはり外せないだろう。

 301日ぶりとなった復帰戦。39歳のバンディエラが心がけていたのは、サッカーを謳歌するということだった。

「ピッチに入るまでは、いろんなことを考えていました。自分が良いプレーできなかったらどうしよう、チームの足を引っ張ったらどうしようとか考える時間もありました。でも、あの瞬間、ただただ楽しもう。等々力でのプレーを楽しみたかった。サッカー選手としての自分の時間が帰ってきたこともすごく感じました」

 そこで見せたのは、芸術的なループ弾。技術的にも「お見事」としか言いようがない一発だが、それを生んだのは、彼ならではの観察眼だろう。いかに自分にボールを引き寄せるのか。そこは試合前に描いていた狙いの1つだったとも明かしている。

「どうやってボールを奪うかに集中して、ポジショニングや読み……点を取った時もそういう隙を突くじゃないですけど、課題の1つにあげて入りました。それも楽しんでやれたかな」

 相手GKにボールが渡ると、すぐに守備に切り替えた。始まった相手のビルドアップを阻害すべく、味方と連動して猛然と圧力をかけに行っている。

「大久保選手から岡崎選手にボールがいって、カオル(三笘薫)がプレッシャーをかけた。自分も連動して、ボランチの選手のコースを切ろうとした。たぶん自分の姿が目に入って、パスを出そうと思った足に当たったのだと思う。それでボールが自分の前に転がっていた」

「ミスもあったし、また練習します」

 やや軽率だった相手のボールコントロールがあったのは事実だが、そのミスを誘い、見逃すことなくゴールという結果に結びつけたのは中村自身の力である。目の前に溢れてきたボールをダイレクトで優しく合わせると、綺麗な弧を描いてゴールネットに吸い込まれていった。あまりに出来すぎた復活劇だが、そうやって等々力での約15分を堪能し続けた。

「1分1秒が惜しいような……もう終わっちゃったという思いもあった。負荷も含めて、完璧な15分間だったと思う。ただミスもあったし、ボールを奪い切れないところもありました。そこは課題です。またしっかり練習します」

 試合で得た課題を口にして次に向かう言葉を並べる姿に、いつものケンゴが戻ってきたのだと実感した。

家長→山根のボレーに脇坂あり

<第17節浦和戦:山根視来>
 山根視来のダイレクトボレーは、圧巻の一言である。

 ただそれまでの崩しも、実に鮮やかだ。起点は大島僚太である。このゴールは彼が柏木陽介をかわし、かつボランチのエヴェルトンを引きつけながら左サイドに運んだところから始まっている。そして、もう1人のボランチである柴戸海もカバーリングに動かしたことでバイタルエリアでフリーになっていた選手がいる。脇坂泰斗である。

 実は脇坂は、去年の埼玉スタジアムでこの位置で柴戸をターンで交わしてミドルシュートを決めている。ここでミドルという選択肢もあったはずである。家長昭博へのパスを選択しているが、それは相手の出方を見て判断したことを明かしている。

「ファーストタッチで前向きにボールを止められました。セカンドタッチで相手を食いつかせるというか、食いつかなかったなら自分で打とうと思っていました。セカンドタッチで槙野選手が自分に食いついて、アキさん(家長昭博)がフリーだった」

 つまり、ツータッチ目で槙野智章が対応に出てきたので、シュートではなくパスに切り替えていたというわけだ。もし、相手が前に出てこなければ、そのまま撃ち抜いていたはずである。

「リラックスして打つことが」

 ボールを受けたのは家長昭博。シュート、パス、ドリブルといくつかの選択肢があった中で彼が選んだのは、パス。それもまさかの浮き球だった。予測を裏切られたであろう浦和守備陣がボールに反応できない中、信じて走り込んでいたのが山根視来だった。

「外にアキさんが張ってたので、ヤストがドリブルした時に、中でどうサポートしようかなというところを考えていて、アキさんに入った時にあそこにスペースがあったのが見えたので。下だったらパスは通ってなかったと思いますが、ああいうボールをアキさんは出せる人なので。ちょうどいいところにボールを出してくれたので、リラックスして打つことができました」(山根視来)

 湘南に在籍していた2019年も埼スタで劇的なゴールを決めている男が突き刺した、豪快なダイレクトボレー。相手の出方で判断を変えながら、かつ予測できない崩しを見せて、最後は高い技術で仕留める。敵将も脱帽する一撃だった。

文=いしかわごう

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