今年のドラフト会議も終わっていないうちから少し気の早い話だが、来年のドラフトの目玉になりそうな高校2年生がいる。市立和歌山高校のエース・小園健太である。

 184cmの長身から勢いよく腕を振って投げ込むストレートは、この夏152キロを記録した。しかも小園本人は、ストレートよりもむしろカットボールやツーシームといった変化球に自信を持っている。

「まっすぐに対してのこだわりはあまりないです。まっすぐでファールを打たせて、最後は変化球で決めたいというのが自分の中にあります。カット系で空振りを取ったりして。カットボールは左打者のインサイドにも、右打者の外にも放れるので、結構自信を持っています。どのチームもまっすぐを張っていると思うので、チェンジアップ気味に変化するツーシームも有効だと感じています」

 カットボールやツーシームは軌道がストレートとほぼ同じで、バッターの手元で変化するため効果的だ。

スカウトも驚き、早くも奥川2世の声も

 今夏、スカウト陣の注目度が一気に上がった。和歌山独自大会3回戦の智弁和歌山戦では、2回から4イニングを投げ、3安打1失点に抑えた。試合には4−7で敗れたが、球威と気迫で強豪を押し込んだピッチングは強い印象を残した。

 DeNAの安部建輝スカウトは「あれだけ腕を振れて、変化球もいい。本当に楽しみな選手」と語っていた。

 広島の鞘師智也スカウトは、今年1月にブルペン投球を見て衝撃を受けたという。

「まっすぐも変化球もキレがある。変化球でもバッターを詰まらせられる。投げ方やシルエットが奥川(恭伸・ヤクルト)君とかぶります。十分、奥川2世になれる素材ではありますね」

強豪校からの誘いを断った理由

 小学1年生で野球を始めた小園は、中学時代、硬式野球の貝塚ヤングに所属し、ヤングリーグの全国大会で優勝した。高校進学にあたっては15〜20校もの強豪校から誘われたという。

 悩んだ末に市立和歌山を選んだのは、既に市立和歌山に決めていた捕手の松川虎生(こう)に、「一緒に日本一獲りに行こうや」と誘われたからだった。

 中学1年からバッテリーを組み、貝塚ヤングでともに全国制覇を果たした松川とは、あうんの呼吸だ。

「バッテリーを組んでもう5年目なので、僕が考えていることを全部わかっている。この場面では絶対これを投げたいという球も、わかってくれているんで、僕の中ではでかい存在。相棒です」と小園は笑う。

 小園の帽子のツバの裏には、「最高のバッテリー 勝利」と書かれている。それは松川が書いたものだ。そして松川の帽子にも、小園が同じ言葉を書いた。

打倒・智弁和歌山を誓うバッテリー

 新チームで主将・4番を務める松川は「夏の智弁和歌山戦に負けて、悔しかったんで……。僕らの代でしっかり、バッテリーとして日本一っていうところを目指そうと話し合って、書きました」と明かす。

 打倒・智弁和歌山と日本一を誓って互いに決意を書き込み、新チームはスタートした。

 小園は、「夏の智弁和歌山戦は結構まっすぐを打たれたので、下半身を安定させるためにバランス系のトレーニングを取り入れて、まっすぐのキレや回転数の多さというのを意識して練習してきました」と言う。

 和歌山では現在、春・夏・秋の大会で、智弁和歌山が10季連続で優勝している。市立和歌山も、昨年春の選抜に出場しベスト8入りするなど実力がありながら、智弁和歌山の壁を崩せずにいた。

9月の新人戦では勝利「特別な相手」

 今年9月5日、和歌山の新人戦準決勝で、新チームになって初めて両者が対戦した。

 市立和歌山は1年生右腕の米田天翼(つばさ)が先発して6回5安打2失点と好投。6回裏に市立和歌山が4点のリードを奪うと、7回表から小園がマウンドに上がった。

 7回は守備のミスも絡んで1点を与えたが、8、9回は時に雄叫びをあげながら、迫力あるピッチングで4つの空振り三振を奪って締め、6−3で勝利した。

 智弁和歌山とは今後も対戦が予想されるため、「一度ヒットを打ったピッチャーに対しては、バッターは次から楽になって打ちやすくなると思うので、今日は絶対に相手にいいスイングをさせない、絶対に抑えるという気持ちでマウンドに上がりました。自分は気持ちを前面に出すスタイルなんで、特に9回はいつも以上に気持ちを前に出して投げました」と小園は振り返った。

 小園が入学してから、智弁和歌山に勝ったのは初めてのこと。

「和歌山で一番意識していた特別な相手。市立和歌山に入学する時から、やっぱり『和歌山と言えば智弁』というイメージが大きかったので、その智弁に絶対勝つ、それは入学した時から目標にしていました」と笑顔で語った。

智弁和歌山主将「二度は負けません」

 ただ、この時の智弁和歌山はエースの中西聖輝が登板していなかった。現在行われている和歌山秋季大会でも両者は勝ち上がり、10月3日の準決勝で、再び対戦する。和歌山は上位3チームが近畿大会に出場できるため、準決勝に勝利した時点で近畿大会出場が決まる。

 小園と松川のバッテリーが目標に掲げる“日本一”をかなえる上で、今後、幾度も立ちはだかるであろう智弁和歌山との第2ラウンド。

 智弁和歌山主将の石平創士は「やり返します。二度は負けません」と目をぎらつかせた。

 伝統の強力打線が、どのように小園攻略をはかるのか。それに対し、さらにギアを上げるであろう小園はどんなピッチングを見せるのか。

 互いに切磋琢磨することで、全国でもトップを狙えるレベルへと力を高めることができる。この1年は、和歌山のライバル対決から目が離せない。

【画像】来季ドラフト注目・小園健太の投球フォーム(全5枚)

文=米虫紀子

photograph by Noriko Yonemushi