2020-21シーズンのドイツ・ブンデスリーガは無事に開幕して3試合を消化し、現在は国際Aマッチウィークによる中断期間に入っています。

 ブンデスリーガではインターナショナルメディアとしてくくられる僕は今季、リーガを統括するDFLが定めた新型コロナウイルス感染防止のためのタスクフォース指針に則って現地取材を行えています。

 ただし取材には一定の制限があり、試合後に選手と記者が向かい合うミックスゾーン対応はなく、両監督の記者会見もリモートのオンラインで実施されているのが現状です。それでもスタンドのプレス席で試合を観られることを有意義に感じて、できる限り現場へ足を運んでいます。

 ドイツは16州からなる連邦共和国で、各州がそれぞれに主権を持ち独自の州憲法などを有するため、各州によって新型コロナウイルスへの対応は異なります。地域毎に感染者の増減に差があり、いわゆるリスク地域では厳格な行動制限を課せられる場合もあります。したがってブンデスリーガもゲーム毎に開催要項が設けられていて、例えばバイエルンやベルダー・ブレーメンなどは各州の通達により今季も開幕から無観客試合が続いています。

フランクフルト戦の周辺取材を敢行!

 一方、今季から人数制限のうえで有観客試合を実施しているクラブもあります。そんな各スタジアムやサポーターの様子が気になったので、少し周辺取材をしてみました。

 取材したのは第1節がアイントラハト・フランクフルトvsビーレフェルト、第2節が1.FSVマインツ05vs.VfBシュツットガルト、そして第3節がフランクフルトvsホッフェンハイムでした。

 フランクフルトは僕の居住地なので、事前に様々な情報を仕入れていました。開幕節の観客数は6500人という上限が課せられていました。

 この6500人は全員シーズンチケットホルダーで、彼らは事前に抽選に申し込み、当選した方がクラブ側から充てがわれた席で観戦する形になりました。チケットは争奪戦となり当然ソールドアウト。当日の観客数もきっちり6500人と記録されており、サポーターが、どれだけこの時を待ちわびていたかが証明される結果となりました。

クラブソング合唱、ブーイングもOK!?

 気になる観戦環境ですが、スタジアムへの入場から自身の座席まではマスク着用が義務。座席は約1.5mの間隔を空けてソーシャルディスタンスを保つのですが、フランクフルトの場合は座席に着いたらマスクを外してもいいルールになっていました。試合中のコールや応援歌の制限もなく、サポーターは試合直前に流れるクラブソングを大合唱! ちなみに相手選手へのブーイングも問題なし(笑)。

 スタジアム内にはソーセージ屋台もポテトフライ屋さんも出店していて飲食OK。ただしアルコールは禁止されており、ソフトドリンクもしくはノンアルコールビールのみ。現在、Jリーグも徐々に制限を緩和していると思いますが、やはり、日本とドイツとでは対応に若干の違いがあるようです。

「できる限り自家用車で訪れるように」

 スタジアムへ向かう交通機関はさすがにこれまでとは異なりました。フランクフルトはクラブサイドから観戦者に向けて「できる限り公共交通機関ではなく、自家用車で訪れるように」というお達しを出し、その対応のためにスタジアム周辺の駐車場スペースを十分確保していました。

 その結果、いつもなら試合当日の電車やトラムがすし詰め状態になるところが閑散とし、スタジアム周辺は今日が試合日だとは思えない雰囲気が漂っていました。

 通常5万1500人フルハウスのドイチェバンク・パークが6500人ですから、人が少ないのは理解できますが、電車で向かった僕は「今日、本当に試合ある?」とスマートフォンで確認したほどです。ただ、行きつけのスポーツバーには店の外でフランクフルトのユニホームを着てビールを一気飲みしている一団がいたので、一安心。

 試合は、堂安律が所属する昇格組のビーレフェルトに先制されながらも、FWアンドレ・シウバのゴールでドロー。こちらも、ホームチームにとっては胸をなでおろす結果でした。試合後もスタジアム周辺を取材しようと歩きましたが、大半が自家用車で帰路につくのでひっそりしていて、「普通ではないんだなぁ」という思いを強くしました。

マインツvsシュツットガルトでは……

 第2節はマインツvsシュツットガルト。マインツまでは在来線で約50分と近場の距離。とはいえ今年の3月中旬から家の近所、もしくは街中で生活していた僕にとっては長旅の大冒険となりました。

 ただ、やはり交通機関は人もまばら。そもそも現在ブンデスリーガ各ゲームはアウェーサポーターの観戦が許されていないので、遠方から大挙スタジアムへ押しかける状況にはならず、試合当日の最寄り駅周辺もシーンとしていました。

 それでも駅からスタジアムまでのシャトルバスは以前と同じく運行されていて、何人かのマインツサポーターとバスに乗り込んでオペル・アレナへ向かいました。

マスク着用が義務付けられていた

 これまで、マインツのシャトルバスはスタジアム入口付近の混雑緩和のために500mほど離れた停留所までしか行かなかったのですが、今回はなんと入口まで直行。同乗していた地元おばさん集団が運転手に「もしかしてスタジアムの入口まで連れて行ってくれるの?」と声を掛けて、「そうだよ」と言われたら「キャー!」と大騒ぎ。些細なことでも嬉しいことに変わりなし。

 ネガティブなことが続く昨今、おばさんたちの素直なリアクションに、なんだか僕の心も少しだけ和みました。

 マインツは3万4000人収容のオペル・アレナで3403人の入場者数。こちらはフランクフルトとは違ってソーシャルディスタンスを保ったうえで、着席時もマスクの着用が義務付けられていました。

 ただし、この試合の週に移籍問題などで選手が練習をボイコットするなど不穏な空気が流れていたホームのマインツは、開始早々に先制しながらも、シュツットガルトに試合を支配されて1−4の大敗。試合中のスタンドもだんだん険悪な雰囲気になってきて、選手がミスを犯すたびにサポーターのため息とブーイングが鳴り響き、「人数が少なくても負のオーラって充満するんだな」と、変なところで意外な発見をしてしまいました。

 ちなみに、シュツットガルトは遠藤航が八面六臂の大活躍。相手ゴールキックに対して、「よーし! 俺が競るぞ!」とばかりに大きく手を広げるお得意のポーズを見せ、実際に打ち勝つなどチームの中核としての風格を漂わせていました。

鎌田と長谷部のコンディションは?

 続く第3節のフランクフルトvsホッフェンハイムは、ここ数日間のフランクフルト市内および近郊地域のウイルス感染者数の増加を受け、実は無観客試合に変更される可能性もありました。しかし蓋を開けてみれば前回よりも多い8000人の人数制限の中で開催され、ホームのフランクフルトが2−1で勝利しました。

 このゲームについては、フランクフルト所属の長谷部誠と鎌田大地にフォーカスを当てて振り返ってみたいと思います。

 鎌田は、空中戦に非常に強くなったように感じました。味方GKケビン・トラップからのフィードに反応して相手と競り合うのですが、そのほとんどで勝っていたのは驚きでした。昨季はこのファーストコンタクトで苦戦しつつも、セカンドボールの回収速度で上回って攻撃を展開していましたが、今の鎌田は悠々と勝って攻撃の起点の役割を果たしています。

 強度に関しても、相手より一歩先んじるスピードやボール保持時のパワーが増した様子で、相手のボディコンタクトに対して体軸が振れなくなりました。その結果、鎌田は相手陣内アタッキングサード付近でのプレーに安定感が生まれ、それが3試合で1ゴール2アシストの結果に繋がっているように思います。

 フィリップ・コスティッチが負傷離脱中の今はプレースキッカーとしても重宝されていて、契約も2023年6月までの更新。鎌田は迷いなくプレーに専念できているようです。

リベロ長谷部が今季も主戦システムに

 今季ブンデスリーガ最年長選手となった長谷部は、鎌田と同じく開幕からリーガ3試合連続スタメン、しかもフル出場を続けています。今季のフランクフルトはUEFAヨーロッパリーグへの出場権を3年ぶりに逃してしまいましたが、その影響で過密日程に晒されず、長谷部自身もコンディションを整えやすい環境を得られています。

 アドルフ・ヒュッター監督からの信頼も相変わらずで、リベロ・長谷部を主軸に据えた3-4-1-2が今季もチームの主戦システムになりそうです。長谷部はホッフェンハイム戦で相手エースFWアンドレイ・クラマリッチと堂々と渡り合い、彼に1ゴールこそ決められたものの、その他はほぼ封じ込んでチームの勝利に貢献しました。

敬愛の意味を込めて「ハーゼ」と

 フランクフルトのサポーターは彼のことを敬愛の意味を込めて「ハーゼ」と呼びますが、これはドイツ語で「ウサギ」という意味。ピッチ上の長谷部は依然として俊敏、戦況把握能力が高く、最近は相手の逆を取る読みが冴え渡っています。

 ホッフェンハイム戦では、向かってくる相手にくるりと反転することで尻もちを付かせ、スタンドのサポーターから「イェーイ!」といった大歓声も上がったほど。全盛期はまさに今で、ヨーロッパ最前線の舞台で彼の珠玉のプレーを観られる時間はまだまだ続きそうです。

 2020-21シーズンのドイツ・ブンデスリーガは未だコロナ禍の最中。最近ドイツ国内もウイルス感染者数が増加の一途を辿り、僕の住むフランクフルトもレストランの営業時間短縮など、再び新たな制限措置が発令されたりもしています。

 しかし、それでも現地は熱く激しいサッカーシーズンの到来に沸き立ち、明るい未来に望みを繋いでいます。

文=島崎英純

photograph by Getty Images