セ・リーグは巨人の優勝が見えてきたが、パ・リーグは1、2位争いが佳境を迎えている。

【今週の“ぴかイチ選手” 阪神 大山悠輔】

 巨人と並ぶ老舗球団の阪神タイガース、かつては「ダイナマイト打線」など破壊力を売り物にした時代もあったが、実は歴史の大部分は「守りのチーム」だった。広い甲子園を本拠として、小山正明、村山実、江夏豊など大投手が活躍したチームだったのだ。

 阪神が打撃のチームだったのは、景浦將、藤村冨美男などが活躍した戦前から1リーグ時代と、バース、掛布雅之、岡田彰布の1980年代中期くらいである。

 平成以降は他球団から獲得した大物打者や外国人打者を中軸に据えることが多くなった。この点は巨人と同じだが、巨人はそれでも松井秀喜、高橋由伸、阿部慎之助、岡本和真と生え抜きのスラッガーが生まれてきたのに対し、阪神は自前の強打者がほとんど育っていなかった。

21世紀で20本以上の生え抜きは4人だけ

 21世紀以降、昨年まで阪神の生え抜き選手で20本以上を打った打者は4人(5回)しかいないのだ。

2005年 今岡誠29本
2004年 今岡誠28本
2017年 中谷将大20本
2009年 鳥谷敬20本
2006年 濱中治20本

 この間、他球団育ちの選手や外国人選手は2010年ブラゼルの47本を筆頭に金本知憲、アリアスの3人が30本塁打以上を7回も記録している。21世紀の阪神打線は「助っ人頼み」だったのだ。

 今季の大山悠輔は10月11日にも一発を放って25本塁打に到達している。阪神はまだ24試合あるから、30本はクリアできそうだ。

 阪神生え抜きで30本塁打以上打った打者と言えば、大フィーバーを起こした1985年の掛布雅之の40本塁打、岡田彰布の35本塁打まで遡らなければならず、35年ぶりの快挙になる。

 そもそも阪神生え抜きで30本塁打以上打った打者は少ない。藤村冨美男(2回、最多46本)、別当薫(1回、最多39本)、田淵幸一(6回、最多45本)、掛布雅之(6回、最多48本)、岡田彰布(1回、最多35本)の5人しかいないのだ。

 また大山は11日の一発で本塁打王争いで巨人の岡本和真と並んだが、阪神生え抜きで本塁打王になれば、1984年の掛布雅之(37本)以来36年ぶりだ。阪神生え抜きの本塁打王は掛布雅之(3回)、田淵幸一(1回)、藤本勝巳(1回)、藤村冨美男(3回)、松木謙治郎(1回)の5人だけ。

 そして藤村、田淵、掛布は「ミスター・タイガース」の系譜だ。

守備面が安定したことで信頼向上か

 大山は白鴎大学から2017年にドラフト1位で阪神に入団。当時の金本知憲監督から目をかけられ1年目から4番を打つなど期待されたが、ネックは守備だった。

 1年目は一塁手、2年目から三塁に回ったが、2019年の守備率は.945、130試合で20ものエラーを記録した。セの三塁手で大山に次いで失策が多かった中日の高橋周平は8失策、守備率は.971と、ほかを大きく引き離しての最下位だったのだ。

 今季も三塁手として84試合に出場しているが、失策は5、守備率は.973と大幅に向上している。守備での安定感が向上したことも、チームの信頼感を高めた一因にもなっているだろう。

 今年の大山悠輔は、ある意味で「ミスター・タイガース」の後継候補になるテストを受けているようなものだ。試合数は例年より少ないが、何とかテストをクリアしてほしいと思う。

コロナ禍で飛車角落ちのロッテだが

<10月5日から10月11日までの1週間の成績>

【パ・リーグ】
○チーム成績
1西武5試合3勝1敗1分 率.750
打率.222 防率3.40
2オリックス5試合3勝2敗0分 率.600
打率.285 防率3.35
3楽天5試合2勝2敗1分 率.500
打率.258 防率3.00
4ソフトバンク6試合2勝3敗1分 率.400
打率.229防率2.21
4ロッテ5試合2勝3敗0分 率.400
打率.184 防率2.51
4日本ハム6試合2勝3敗1分 率.400
打率.219 防率3.27

 10月6日、ロッテは選手、スタッフ、コーチ合わせて13人の新型コロナ陽性がわかり、翌日22人もの選手を入れ替えた。一軍昇格した選手の中には、佐々木千隼や細谷圭など今季一軍初昇格の選手が5人も含まれていた。
 いわば「飛車角落ち」での戦いを余儀なくされたわけだが、それで2勝3敗はよくやったと言うべきか。しかし隔離された選手の大半が野手だっただけにチーム打率は.184まで落ち込んだ。新型コロナがペナントレースにここまで影響を及ぼしたのは初めてのケースだ。

緊急昇格の藤原恭大が頑張った

○打撃成績
<最多安打>
8安打:近藤健介(日)
<最多本塁打>
1本塁打:近藤健介、大田泰示、中田翔、渡邉諒(日)/松田宣浩、中村晃、柳田悠岐、グラシアル、栗原陵矢(ソ)/浅村栄斗、田中和基、小郷裕哉(楽)/メヒア、山川穂高(西)/杉本裕太郎、T−岡田、小田裕也/井上晴哉(ロ)

<最多打点>
6打点:浅村栄斗(楽)、大田泰示(日)

<最多盗塁>
4盗塁:西川遥輝(日)、周東佑京(ソ)

<打率5傑(規定打席以上)>
1近藤健介(日).444
2安達了一(オ).357
2藤原恭大(ロ).357
4鈴木大地(楽).353
5松田宣浩(ソ).318

<RC(打撃総合指標)5傑>
1近藤健介(日)6.86
2鈴木大地(楽)4.41
柳田悠岐(ソ)3.85
中村晃(ソ)3.83
5松田宣浩(ソ)3.74

 ロッテ、緊急初昇格組の藤原恭大が14打数5安打2打点1盗塁の活躍。日本ハムの近藤は18打数8安打4二塁打1本塁打4打点、打率.444と好調だった。

 日本ハムの西川、ソフトバンクの周東がともに4盗塁。周東34盗塁、西川30盗塁。この競り合いも見ものだ。

山本由伸が29イニング連続無失点!

○投手成績
<最多勝利>
1勝:有原航平、上沢直之(日)/瀧中瞭太、岸孝之(楽)/東浜巨、和田毅(ソ)/山本由伸、田嶋大樹、増井浩俊(オ)/二木康太、小島和哉(ロ)/高橋光成、ニール、平良海馬(西)

<最多セーブ>
3セーブ:増田達至(西)

<最多ホールド>
3ホールド:森脇亮介(西)

<最多奪三振>
9奪三振:山本由伸(オ)、二木康太(ロ)、則本昂大(楽)

<防御率(規定投球回数以上)上位>
1有原航平(日)0.00
1山本由伸(オ)0.00
1高橋光成(西)0.00
1千賀滉大(ソ)0.00
1小島和哉(ロ)0.00
1和田毅(ソ)0.00

<PR(投手総合指標)5傑>
1有原航平(日)2.95
2山本由伸(オ)2.62
3高橋光成(西)2.27
4千賀滉大(ソ)1.96
4小島和哉(ロ)1.96

 日本ハムの有原が今季初完封勝利。オリックスの山本は29イニング無失点と絶好調。救援では28歳ながら2年目の西武、森脇が3ホールドを挙げている。

【セ・リーグ】
○チーム成績
1中日4試合 3勝1敗0分 率.750
打率.264 防率2.00
2広島6試合 3勝2敗1分 率.600
打率.287 防率4.75
2阪神6試合 3勝2敗1分 率.600
打率.280 防率3.67
4巨人6試合 3勝3敗0分 率.500
打率.273防率5.02
5DeNA5試合2勝3敗0分 率.400
打率.265 防率5.14
6ヤクルト5試合1勝4敗0分 率.200
打率.264 防率5.49

 中日は10月8、9日と試合予定がなかったために今週は4試合。3勝1敗と好調だった。巨人は3勝3敗の五分だがゲーム差は十分あるので危機感はないだろう。マジックは12である。

オースティンが2週連続で4本塁打

○打撃成績
<最多安打>
11安打:大山悠輔(神)

<最多本塁打>
4本塁打:オースティン、ロペス(De)

<最多打点>
8打点:ロペス(De)

<最多盗塁>
2盗塁:松原聖弥(巨)、宇草孔基(広)

<打率5傑(規定打席以上)>
1青木宣親(ヤ).471
2アルモンテ(中).467
3堂林翔太(広).450
4鈴木誠也(広).435
5大山悠輔(神).423

<RC(打撃総合指標)5傑>
1丸佳浩(巨)7.71
2大山悠輔(神)7.69
3鈴木誠也(広)6.61
4オースティン(De)6.52
5ウィーラー(巨)5.90

 DeNAのオースティンは2週連続で4本塁打。3週間で11本塁打の大暴れだ。広島、丸は16打数6安打3本塁打6打点1盗塁6四球、打率.375と貢献度の高い活躍を見せている。今週初昇格した広島の宇草が2盗塁と俊足をアピールしている。

勝野、大野らが好投を見せた中日

○投手成績
<最多勝利>
1勝:高橋遥人、西勇輝、秋山拓巳(神)/勝野昌慶、大野雄大、清水達也(中)/サンチェス、菅野智之、畠世周(巨)/中村祐太、森下暢仁、遠藤淳志(広)/平田真吾、伊勢大夢(De)/梅野雄吾(ヤ)

<最多セーブ>
2セーブ:フランスア(広)、デラロサ(巨)、三嶋一輝(De)

<最多ホールド>
2ホールド:ケムナ誠(広)/エドワーズ、藤浪晋太郎(神)/祖父江大輔、福敬登(中)、エスコバー(De)

<最多奪三振>
14奪三振:高橋遥人(神)

<防御率(規定投球回数以上)上位>
1勝野昌慶(中)0.00
1九里亜蓮(広)0.00
1畠世周(巨)0.00
1森下暢仁(広)0.00
1大野雄大(中)0.00
1清水達也(中)0.00

<PR(投手総合指標)上位>
1勝野昌慶(中)3.75
2九里亜蓮(広)3.42
2畠世周(巨)3.42
4高橋遥人(神)3.40
5森下暢仁(広)2.94
5大野雄大(中)2.94

 中日の勝野は7.2回を零封、同じく大野は27イニング連続無失点の好投を続けている。阪神の高橋は10月5日の巨人戦で9回自責点1の完投勝利。14奪三振。救援では阪神のスアレスが3週連続2セーブを挙げている。

DeNAロペスが間近に迫る大記録って?

【まとめ&記録備考】
メジャーリーグのように両リーグ、打投の週間MVPを選出するとすれば、以下のようになるだろう。

打:近藤健介(日)
投:有原航平(日)

打:丸佳浩(巨)
投:高橋遥人(神)

 DeNAのホセ・ロペスはここへきて好調だが、通算安打数は988安打。あと12安打で1000本安打だ。ロペスは2004年マリナーズでデビュー、イチローのチームメイトとして7年間プレーするなどMLBで1005安打を打っている。

 日米両方で1000本安打はイチロー(NPB1278安打、MLB3089安打)、松井秀喜(NPB1390安打、MLB1253安打)が記録しているが、ロペスが達成すれば日本から見た外国人選手としては史上初となる。これも偉業と言えるだろう。

文=広尾晃

photograph by Kyodo News