新日本プロレス30回目のG1クライマックスに優勝したのは飯伏幸太。飯伏は昨年の優勝に続く連覇だ。過去にG1を連覇したことがあるのは、蝶野正洋と天山広吉の2人しかいなかったが、飯伏が歴史の3人目に名前を連ねた。

 飯伏はSANADAとの優勝戦に勝って、蝶野から優勝旗とトロフィーを受け取った。

「ボクが見ていた頃のG1クライマックスの覇者といえば、蝶野さん。不思議ですよね。不思議な感覚になりました。あの蝶野さんから、あのトロフィーと旗をもらうっていう。ファンに戻った気持ちですね。非常にうれしいです。でもボクはプロレスラーなんで、そこは捨ててもう一度原点に戻って、プロレスを頑張りたいと思います。来年も再来年も、ずっとプロレスをやり続けて、また優勝したいと思いますよ。何回でも」

 飯伏は感慨深げに連覇の喜びを語った。

SANADAの得意技に場内がざわめき…

 10月18日、両国国技館。新型コロナウイルス対策で、観客は4人掛けのマス席には1人ずつしか座っていない。2階のイス席は2つおき。約1万人収容の会場に入れたのは運のよい2928人だけだ。すぐに売り切れてしまった優勝戦のチケットはかなり入手困難で、「チケットを探している」という声をあちこちで聞いた。

(C)Essei Hara

 Aブロックを7勝2敗で勝ち上がった飯伏は、Bブロックの混戦を6勝3敗で競り勝ったSANADAと1年3カ月ぶりに対戦した。

 オーソドックスな組手から静かに始まった戦いは中盤を過ぎてから徐々にヒートアップしていった。

 終盤SANADAが得意のオコーナーブリッジで飯伏を丸め込んだときには、3カウントが入ったんじゃないかとも思った。レフェリーは否定したが、場内がざわめいた。

 飯伏は飛びヒザ蹴りからカミゴェと呼ばれるヒザを容赦なくSANADAの顔面に叩き込んだ。これで決まったと思った。それでもSANADAは跳ねのけて来たが、飯伏はさらなるとどめのヒザをぶちいれた。

(C)Essei Hara

メチャクチャうれしい。でも体はボロボロです

 35分12秒。G1優勝戦では最も長い試合時間で勝利した飯伏はなかなか立ち上がることができなかった。やっと立ち上がって、優勝トロフィーを持ち上げたが、祝砲の銀色のテープがリングに放たれた時には再びマットに座り込んでしまった。

「何度でも言います。ボクは、逃げない、負けない、あきめない。そして裏切らない。最後まで、あきめなかったから(優勝できた)。メチャクチャうれしいですよ。でも体はね、ボロボロですよ」

 飯伏は笑みを浮かべた。

 G1の戦いは終わった。そして次なる戦いがまたすぐに始まる。昨年、飯伏が公言したIWGPヘビー級王座を取るというテーマは未完のままだ。現在のIWGP王者は内藤哲也だ。

「優勝っていうのは、IWGPへのチャンスをつかむことだと思います。チャンスは得たかなと。(この日発表された来年1月4日、5日の東京ドーム大会までの)期間がいつもより短いので、チャンスはいつも以上にあるんじゃないかなと。ちょっと怖いのは、権利証が(従来通り)あったとして、それが挑戦されて奪われた場合。これはわからないですよ。このテンションをキープしていきたいと思います。東京ドームにつなぎます」

 飯伏は現実的な不安も口にした。そんな飯伏の前にジェイ・ホワイトが現れた。

挑戦権利証はオマエから奪い取ってやる

「オマエもオレも本当のところはわかっている。オマエは真のG1王者なんかじゃない。なぜならオマエはオレに勝っていない(9月23日の札幌大会)からだ。これからもオマエはオレに勝てない。挑戦権利証の入ったブリーフケースが贈呈されるんだろう。でも、それをオレはオマエから奪い取ってやる。今のところはそのトロフィーを抱きしめて楽しんでいろよ」

 ホワイトは最後の最後で石井智宏に不覚を取って、優勝戦に進めなかったいらだちを飯伏にぶつける。ホワイトはおいしいところを持っていった飯伏からIWGP挑戦の権利証を強奪する構えだ。

IWGPを取れば『神』に近づけると思います

「前回、彼に負けているんで。彼と次にやってもいいし、いつでもいいですよ。リベンジしますよ。リベンジした上で、オレがIWGPのベルトを巻きます。あとはやるのみですよ。何も残ってない。これが本心。これがすべてです」(飯伏)

「このコロナの時代に、東京ドームでイベントができるっていう。(大きな)イベントがたぶんあまりない中、それをプロレスが実現できている。人の前でイベントができる。これは最高にうれしい。ボクは発信できる力を得たんで、あとはIWGPヘビー級を取るだけ。そうしたらもっと、ボクの言っていた『神』に近づけると思います」

 飯伏は「神になるために」IWGP取りに突き進む。

 飯伏は優勝翌日のオンライン会見で、昨年からの課題であるIWGPヘビー級とインターコンチネンタルの2つの王座への挑戦を口にした。

「2つのベルトを、内藤哲也から取りたい。だから内藤さん、必ず持っていて。ボクが挑戦しますよ。内藤哲也じゃないとダメです」

 11月7日、大阪府立体育会館(エディオンアリーナ大阪)で、飯伏はホワイトと東京ドームでのIWGP挑戦の権利証を争うことになった。一方、飯伏から指名された形の2冠王者内藤は同日、EVILの挑戦を再び受けることが決定している。

(C)Essei Hara

文=原悦生

photograph by Essei Hara