奇しくも両リーグともに同じ週に優勝が決まった。

 巨人は9月15日にマジック38が点灯したが、優勝したのは45日後の10月30日と、ずいぶんもたついたものだ。対照的にソフトバンクは10月21日にマジック8が点灯すると、そこから6日後の27日に優勝。1カ月以上も前にマジックが点灯した巨人よりも早い優勝だった。

 ソフトバンクの10月の勝敗は、22勝4敗1分、月間22勝は1953年9月の巨人(21勝5敗)、1954年8月の中日(21勝4敗)、2002年8月の西武(21勝5敗)を更新するNPB新記録だ。

バレンティン60発で獲得したこともあったが

 さて、このタイミングで両リーグのMVPを予想しよう。

 MVPは記者による投票だが、原則としてクライマックスシリーズや日本シリーズなどのポストシーズンの成績は加味されない。

 優勝チームで最も活躍した選手が獲得することが多いが、傑出した成績を上げた選手が出れば、下位チームの選手がMVPになるケースもある。

 2013年のセ・リーグは巨人が優勝したが、MVPは6位ヤクルトのウラディミール・バレンティンが獲得した。この年のバレンティンは王貞治などが記録したシーズン55本塁打を抜く60本塁打。歴史に残る記録を樹立したことで、優勝した巨人の選手を差し置いて選ばれた。

 ただ、これは例外的ではある。よほどすごい記録を樹立しない限り、MVPは優勝チームから選出されることが多い。

 ということでまずはパ・リーグから、投打のMVP候補を見ていこう。

打撃タイトル1位が現状ないギータだが

 以下はパの打者で、RC(Run Create)の数字を並べる。RCとは安打、長打、本塁打、盗塁、盗塁死、三振、四死球、犠打、犠飛などオフェンス面の数字を加味した総合的な指標である。その10傑は以下の通りだ。

1柳田悠岐(ソ)113.36
(28本84点7盗 打率.344)
2吉田正尚(オ)94.85
(14本64点8盗 打率.351)
3浅村栄斗(楽)93.50
(32本100点1盗 打率.284)
4近藤健介(日)86.90
(5本60点4盗 打率.340)
5西川遥輝(日)84.99
(5本38点40盗 打率.309)
6マーティン(ロ)69.16
(25本65点7盗 打率.234)
7ロメロ(楽)65.83
(24本62点0盗 打率.276)
8中田翔(日)64.61
(31本106点1盗 打率.240)
9鈴木大地(楽)63.04
(4本54点1盗 打率.298)
10島内宏明(楽)60.95
(8本52点9盗 打率.285)

 柳田が1位である。RCは100を越えればMVP級とされるが、113.36は120試合制では立派な数字だ。

 現時点で柳田は打撃タイトル各部門で1位に立っていないが、総合的な貢献度では圧倒的だ。ソフトバンクに限定すればRCの2位は栗原陵矢の13位(56.30 16本71点5盗 打率.247)だから柳田が抜きん出ている。

先発、救援の区別なく比較できるPRで見ると

 続いては投手成績を見ていこう。

 投手はPR(Pitching Run)で見ていく。これは(リーグ平均防御率−個々の選手の防御率)×投球回数÷9で導き出される。リーグ平均より優秀な防御率でより多くのイニングを投げた投手のポイントが高くなる。これによって先発、救援の区別なく比較できる。

 以下、パ・リーグ投手のPR10傑である。

1山本由伸(オ)23.15
(8勝4敗0SV 0HD 126.2回 防御率2.20)
2東浜巨(ソ)22.66
(9勝1敗0SV 0HD 111.1回 防御率2.02)
3千賀滉大(ソ)19.44
(10勝6敗0SV 0HD 113回 防御率2.31)
4石川柊太(ソ)16.42
(10勝3敗0SV 0HD 108.2回 防御率2.48)
5平良海馬(西)11.66
(1勝0敗1SV 30HD 48.1回 防御率1.68)
6森脇亮介(西)11.53
(6勝1敗1SV 14HD 43.1回 防御率1.45)
7モイネロ(ソ)11.14
(2勝3敗1SV 37HD 47回 防御率1.72)
8ムーア(ソ)10.15
(6勝3敗0SV 0HD 75回 防御率2.64)
9宮西尚生(日)9.66
(2勝1敗8SV 21HD 48.1回 防御率2.05)
10山岡泰輔(オ)9.63
(4勝5敗0SV 0HD 69.1回 防御率2.60)

実はノンタイトルでのMVP獲得って……

 今季、パ・リーグで最も優秀な投手はオリックスの山本由伸である。規定投球回数以上で唯一防御率は2点台、奪三振も最多。ソフトバンクの先発投手3人が2位から4位に並んでいるが、全員規定投球回数に達していない。今季のソフトバンクは傑出してはいないが、安定感のある先発投手陣が回転していた。

 ソフトバンクではセットアッパーのモイネロが抜群の成績で、最多ホールドを確実にしている。

 とはいえMVPを考えるうえでは、ソフトバンクの3投手が柳田よりも評価が高くなることはないだろう。

 柳田が獲得すれば、2015年に続いて2回目となる。主要な打撃タイトルは獲得しない可能性がやや高いが、主要部門でノンタイトルでのMVPは、2019年の巨人・坂本勇人、2018年の広島・丸佳浩など全く珍しくない。

丸、岡本、坂本のRCはどんな感じ?

 続いて、セ・リーグはどうか? まず打者部門から見ていこう。パ・リーグと同様にRCのランキング10傑である。

1村上宗隆(ヤ)95.05
(26本83点8盗 打率.307)
2鈴木誠也(広)86.90
(25本74点6盗 打率.297)
3梶谷隆幸(De)85.70
(19本52点14盗 打率.326)
4丸佳浩(巨)84.32
(27本73点8盗 打率.284)
5青木宣親(ヤ)80.33
(18本49点1盗 打率.313)
6佐野恵太(De)79.30
(20本69点0盗 打率.328)
7岡本和真(巨)79.15
(29本89点2盗 打率.278)
8大山悠輔(神)74.47
(26本82点1盗 打率.292)
9坂本勇人(巨)72.61
(17本60点4盗 打率.287)
10近本光司(神)70.25
(9本42点30盗 打率.298)

 RCの1位は今季、荒っぽさがなくなって強打者に成長したヤクルトの村上。続いて広島の鈴木、DeNAの梶谷と続いている。

 巨人の1位は後半戦、成績を上げてきた丸である。本塁打、打点の2冠で首位の岡本だが、7位と数字が伸びていない。打率がやや低く、四球が48と少ないため、この指標における総合的な貢献度はやや低くなっているのだ。

 なお巨人勢では2000本安打目前の坂本勇人が9位にいる。ただ、他球団の選手と比べてみると、巨人の3選手はMVPに選出されるには「やや弱い」という印象だ。

菅野の「14勝」はやはり圧倒的

 つづいて以下はセ投手、PRのランキング10傑だ。

1大野雄大(中)30.81
(10勝6敗0SV 0HD 141.2回 防御率1.91)
2西勇輝(神)29.81
(11勝5敗0SV 0HD 146回 防御率2.03)
3菅野智之(巨)26.86
(14勝2敗0SV 0HD 132.1回 防御率2.04)
4森下暢仁(広)26.64
(10勝3敗0SV 0HD 122.2回 防御率1.91)
5大貫晋一(De)16.14
(10勝5敗0SV 0HD 100.2回 防御率2.41)
6福谷浩司(中)12.62
(7勝2敗0SV 0HD 85.1回 防御率2.53)
7 R.マルティネス(中)12.20
(2勝0敗21SV 7HD 40回 防御率1.13)
8平良拳太郎(De)12.18
(4勝5敗0SV 0HD 70.1回 防御率2.30)
9高橋遥人(神)11.69
(5勝4敗0SV 0HD 76回 防御率2.49)
10中川皓太(巨)11.49
(2勝1敗6SV 15HD 36回 防御率1.00)

 巨人の菅野智之は開幕から13連勝と走った。巨人スタートダッシュは間違いなく菅野の功績だ。しかしながら9月以降、やや息切れし、防御率では4位に沈んでいる。PRで言えば、菅野は中日の大野、阪神の西に次いで僅差ながら3位になっている。

 とはいえ14勝で最多勝が確定的ではあり、シーズンを通して絶対的なエースだったのは間違いない。横並び的にそこそこの活躍をした野手陣よりも貢献度は高かった。

 優勝チームからでた最多勝投手ということで、菅野智之がMVPに選出される可能性は高いだろう。先ほどのRCこそ7位にとどまった岡本和真だが、本塁打と打点の2冠を取れば票数で菅野に次ぐのではないか。

再び菅野は沢村賞を獲れない不運に?

 一方で先発投手最高の栄誉である「沢村賞」は、菅野とは限らない。45イニング連続無失点という神がかり的な快投を見せた中日・大野も候補となっている。

 先発投手がMVPを取りながら沢村賞を逸するというのは、レアなケースだ。ただし菅野は2014年にもMVPを獲得しながら、沢村賞をパのMVPに輝いたオリックスの金子千尋に奪われている。

 今回もそうなる可能性があるだろう。

この1週間の好記録をプレーバック

【第20週 週間成績】

<パ・リーグ>
本塁打王:3本 中田翔(日)
打点王:5打点 T−岡田(オ)、栗山巧(西)、下妻貴寛(楽)
首位打者:.545 西川遥輝(日)
RC1位:9.78 西川遥輝(日)
最多勝:1勝 バーヘイゲン(日)、千賀滉大(ソ)東浜巨(ソ)ら17人
最多セーブ:3セーブ 増田達至(西)
最多ホールド:3ホールド 平良海馬(西)
最優秀防御率:0.00 バーヘイゲン(日)、千賀滉大(ソ)、東浜巨(ソ)、和田毅(ソ)小島和哉(ロ)
PR1位:3.31 バーヘイゲン(日)

<セ・リーグ>
本塁打王:3本 ロペス(De)、岡本和真(巨)、丸佳浩(巨)
打点王:8打点 岡本和真(巨)
首位打者:.483 近本光司(神)
盗塁王:7盗塁 塩見泰隆(ヤ)
RC1位:9.10 近本光司(神)
最多勝:1勝 畠世周(巨)、西勇輝(神)ら15人
最多セーブ:3セーブ フランスア(広)
最多ホールド:4ホールド 石田健大(De)
最優秀防御率:0.00 畠世周(巨)、森下暢仁(広)、九里亜蓮(広)
PR1位:3.86 畠世周(巨)

DeNAロペスがNPB&MLB両方で1000安打

 記録で見た場合の週間MVPは以下の通りか。

パ・リーグ
打者 西川遥輝(日)
投手 バーヘイゲン(日)
セ・リーグ
打者 近本光司(神)
投手 畠世周(巨)

 10月31日、DeNAのホセ・ロペスが史上309人目のNPB1000本安打を達成している。

 ロペスはMLBでも1005安打を放っている。MLBとNPBでそれぞれ1000本安打を打った打者にはイチロー(MLB3089安打、NPB1278安打)、松井秀喜(MLB1253安打、NPB1390安打)がいるが、MLBでスタートした選手としては初となった。

文=広尾晃

photograph by Hideki Sugiyama/Kiichi Matsumoto