日本がお家芸とする平泳ぎに新星が誕生した。競泳の日本学生選手権(インカレ)が10月1日から4日まで東京・辰巳国際水泳場で開催され、男子200m平泳ぎで19歳の佐藤翔馬(慶大)が、世界歴代5位となる2分7秒02の好タイムを叩き出して2連覇を飾った。

 圧巻の泳ぎだった。150mまではアントン・チュプコフ(ロシア)が昨夏の世界選手権で出した2分6秒12の世界記録を上回るペース。ラスト50mで失速したが、今年1月に出した自己ベストの2分7秒58を0秒56も縮める快泳に、選手と関係者のみだった会場がどよめいた。

 世界記録更新を狙っていた。想定していたペース配分は、「最初の50mを28秒、その後は32秒、32秒、32秒」(佐藤)。150mまではプラン通りで、最後のターンの感触も良好。しかし、気負いが泳ぎを乱したのか、最後は33秒台に落ちた。「ラストは焦りすぎて、予定より1秒遅れた。それがなかったらと、複雑な気持ち。日本新、世界新が目標だったので届かなかったのは残念です」と悔しさをのぞかせた。

「目標は東京五輪の金メダル。まだ足りない」

 幼稚舎からの生粋の慶応ボーイだ。水泳では小3で北島康介らを輩出した東京SC入り。慶大1年だった今年1月の「北島康介杯」で、'19年世界選手権銅メダリストで日本記録保持者の渡辺一平を破って周囲を驚かせた。それまでの自己ベストを約1秒半も縮める急成長に「東京五輪のホープ」と注目された。

 次に狙うべきは、順番なら渡辺の持つ2分6秒67の日本記録更新だが、佐藤が見つめる領域はさらにその先にある。「世界で戦うには2分5秒台を出さないといけない。来年4月までに2分6秒台を出してつなげたい」と意気込みを強めている。

 日本競泳陣が歴代の五輪で獲得した計22個の金メダルのうち、平泳ぎは半数以上の12個(男子9、女子3)を占める。東京五輪が1年延期になったことはお家芸のホープにとって追い風。渡辺との二枚看板で挑むことになれば、日本の競泳陣にとってもプラスだ。

「目標は東京五輪の金メダル。まだまだ足りないので、ここからの半年間しっかり練習して本番につなげていきたい」

 来年4月の日本選手権、その先の東京五輪を見据えた。

文=矢内由美子

photograph by KYODO