J2磐田に加入した元日本代表MFの遠藤保仁が、絶対的なエースとして低迷していたチームを押し上げている。

 チーム合流からわずか5日目で出場した10月10日、アウェーの松本戦では、ピッチの中央で司令塔として味方選手を巧みにコントロールし、何度も決定機を演出した。試合終盤には、直接狙った約20mのFKはクロスバーを直撃。惜しくも移籍即ゴールはならなかったが存在感を見せつけた。

初ゴールのルーキーは「自然とボールが出てくる感覚」

「初めての試合だったので、(味方)選手の特徴を探りながらやっていた。若手とベテランが一緒になって良いものを作り上げながら、自分のサッカー人生に新たなページを加えたい」

 試合はドローで終えたが、それまで決め手を欠いていたチームに攻撃力と推進力を生み出した。元日本代表のMF山田大記は「チームに落ち着きが出るし、攻撃にタメもできる。前の選手が良い動きをすればボールも出てくる。前の選手がもっと良い動きをすれば、もっとボールを引き出せたんじゃないかと思う」と、初めて味方選手として一緒に戦った遠藤について驚きを隠さなかった。

 その松本戦から中3日で迎えたホームの長崎戦では味方のゴールを演出した。0−0で迎えた後半2分、遠藤が蹴ったCKの流れから、今季ユースから昇格したばかりのルーキー三木直土がこぼれ球を押し込んだ。プロ初ゴールが決勝弾となった三木は、再三チャンスボールを供給してくれたレジェンドについて興奮気味にこう証言した。

「他の選手と違うタイミングや感覚を持った凄い選手だと思います。自然とボールが出てくる感覚なので、自分は信じて動き出すだけだった」

©Takashi Shimizu

23年連続 “鮮やかなFK弾”も

 加入早々、チャンスを演出し続ける遠藤自身の待望の移籍後初ゴールは、出場5試合目の10月25日、ホームの群馬戦で生まれた。

 相手に先制を許して0−1で迎えた前半29分。ペナルティエリアのわずか外側、ゴール正面やや左で得たFKは、相手のカベを低く越えてそのままゴール右隅へと吸い込まれた。プロ入りから23年連続得点となる鮮やかなFK弾。遠藤の今季初ゴールで反撃の狼煙を上げたチームは、このあと2点を追加して今季2度目の逆転勝利を収めた。

「FKは距離も場所も狙いやすいところだったし、味方の選手が上手くボールを隠してくれたので自信をもって蹴った。23年連続は嬉しく思うし、チームとしても個人としてももっとゴールを増やしていきたい」

「ここまでアシストや勝点で貢献してくれるとは正直驚き」

 遠藤は加入後の5試合をわずか16日間で消化した。コロナの影響もあって中2〜3日が繰り返されるタイトな日程で、うち3試合にフル出場。選手生活が長いレジェンドにもこれだけのハードスケジュールはほとんど経験がないはずだ。移籍後の出場時間は418分となり、今季11試合に出場していた古巣G大阪での363分をあっさりと超えた。それでも「(体のケアなどで)特別なことは何もしていない」と平然としている。

 鈴木政一監督も「(5試合連続出場だが)そこまで負担にはなっていないと思う。守備で動かされると負担になるが、いまはボールを持ってプレーしている時間が長いので」と、体力的な負担を抑えられていると踏んだ上での連続起用だったようだ。

 過去のデータを見れば、休みなく試合に出場することが遠藤にとっては当たり前のルーティンであるのかもしれない。というのも、G大阪時代には、2002年を皮切りに8シーズンで全試合に出場。そのうち5シーズンは全試合で先発出場を果たした。さらに2002年と2007年は全試合フル出場を果たしており、長期離脱もなく試合に出続けてきたのだ。

2007年は全試合フル出場を果たしている遠藤保仁 ©松園多聞

 それでも40歳を超えた選手がこれだけ旺盛にピッチを動き回り、プレーでリーダーシップを発揮してくれるとは、チーム関係者にとっても予想を上回る成果だったようだ。

「チームにフィットする時間も短い中で、ここまでアシストや勝点で貢献してくれるとは正直驚きもある。順応性の高さに加え、難しいプレーを簡単にこなしているように見せてしまうところも彼らしい」(チーム関係者)

「プレーで違いを見せられる自信はある」

 11月1日は首位に立った福岡との大一番だったが、前半41分に得意のFKを、この日が今季初出場となったDF中川創が頭で合わせ先制。さらに後半には、中盤で遠藤が相手から奪ったボールが起点となってFW小川航基が2点目を奪い、結局この小川航のゴールが決勝点となり、遠藤からの2得点で昇格の可能性を残した。

 残念ながら11月4日は首位徳島相手に一時同点となるゴールを演出したものの、1−3というスコア以上の完敗に終わり、11試合を残して2位との勝点差を18に広がり、J1昇格はさらに厳しさを増してしまった。

 遠藤の加入から7試合目で初めての黒星となった徳島戦だが、ここまで4勝2分1敗。加入前の7試合が勝ちなしだったことを考えれば、まさに大きな前進であることは疑う余地がない。出場機会を求めて今回の移籍を決断した遠藤は、磐田加入時に「良いモチベーションと良いコンディションが保てれば、まだまだできる。プレーで違いを見せられる自信はある」としていた。ここまで7試合を見た多くの人は、その予想をはるかに超えたレジェンドのパフォーマンスを目の当たりにしたはずだ。

 期限付き移籍は今季終了までだが、そこで磐田のJ1昇格がなかったとしても、一緒にプレーした選手たちには自信という財産が残る。そして、まだ残っている11試合の中でレジェンドから多くのものを学び吸収することができれば、来季の磐田にとってこの3カ月が大きな意味を持つことになるだろう。

©Takashi Shimizu

文=望月文夫

photograph by J.LEAGUE