ダルビッシュ有、前田健太はともにサイヤング賞投票で「2位」の結果に終わった。

 2人を上回り、同賞を受賞したのはレッズのトレバー・バウアーとインディアンスのシェーン・ビーバーとなった。

 ア・リーグのビーバーは勝利数(8)、防御率(1.63)、奪三振(122)の主要3部門すべてにおいてリーグトップになった成績に相応しく、全米野球記者協会(BBWAA)30人の記者投票で全員が1位票を投じた。

 ナ・リーグのバウアーは勝利数(5)では8位タイ、奪三振(100)では2位ながら、防御率(1.73)でトップとなり、集めた1位票は27。ダルビッシュの3を大きく上回った。

 断トツの成績を収めたビーバーには敵わなかった前田だったが、2位票では最多の18を集めた。適切な評価だったと感じる一方で日本人初の最多勝(8)に輝き、投球回数でも73回のバウアーを上回る76回を投げたダルビッシュが、バウアーを大きく下回った結果を疑問視する声は多々上がっている。

今年のサイヤング賞は「非常に難しい選択だった」

 ダルビッシュに1位票を投じた米放送局「NBCスポーツ」のゴードン・ウィッテンマイヤー記者は「非常に難しい選択だった」と明かした上でこのように語っている。

「今年のサイヤング賞にバウアーがふさわしいか? もちろんだ。しかし、私はユウ・ダルビッシュに投票した。これは単純なことではない。対戦相手の手強さを考えた上で成績を見れば、ダルビッシュの方が素晴らしい」

 ウィッテンマイヤー氏はポストシーズン進出チーム相手にバウアーより多く登板し、その上で良い成績を収めたダルビッシュを評価している。

 確かに日本人初の受賞に大きく期待はかかった。だが、この結果は「残念」なものなのであろうか。両リーグにおいて、初めて日本人投手がサイヤング賞投票で「2位」につけた事実。これは大きな一歩だと感じている。

ダルビッシュと前田が「メジャーに示した証」

 95年に先駆者・野茂英雄が旋風を巻き起こして以来、日本人投手の質の高さは後に続いた投手たちが確実に継承してきた。それはこれまでのサイヤング賞投票でも数字に表れていた。

95年 野茂英雄(ドジャース) 4位

96年 野茂英雄(ドジャース) 4位

06年 斎藤隆(ドジャース) 8位

08年 松坂大輔(レッドソックス) 4位

12年 ダルビッシュ有(レンジャーズ) 9位

13年 ダルビッシュ有(レンジャーズ) 2位

13年 岩隈久志(マリナーズ) 3位

13年 上原浩治(レッドソックス) 7位

16年 田中将大(ヤンキース) 7位

 先発投手ならば、良質な先発2、3番手の評価を得て、救援投手ならばクローザーも任せられる。その歴史の中で今季はダルビッシュと前田が「2位」に輝いた。これは今後、日本人投手でもリーグを代表する「エース」に君臨できることを示した証であり、新たなる時代への第一歩である。

 だから、ダルビッシュと前田には大きく敬意を払いたい。先人たちの努力、評価を継承しつつ、さらに評価を高めた2人の頑張りには頭が下がる思いだ。

悔しい気持ちより、デグロムの上に行けた「喜び」

 発表直後、ダルビッシュは自身のツイッターで笑顔の絵文字入りで感謝の意を表した。

「サイ・ヤング投票は2位でした! 家族、応援してくださったファンの方々、支えてくださったスタッフ、チームメイトのお陰です。来年のこの日もドキドキできるようにまた頑張ります」

 その後、さらに投票結果についても自身の思いを綴った。

「2位で悔しい気持ちより、デグロムの上に行けたというのに喜びを感じます。去年の今頃はデグロムやバーランダー、コールのようなレベルの投球をしたいという夢を持っていたので。目標ではなく夢レベルだったので驚いています」

 そして、ダルビッシュの妻である元女子レスリング世界チャンピオンの山本聖子さんも自身のブログで夫への思いを記した。

山本聖子さん(1999年撮影) ©Raita Yamamoto

「飛行機を見にドライブ、庭でめいっぱい遊ぶ子供達。今日もいつも通りの我が家です。その中で少し違うのは、サイ・ヤング賞の発表でしたね。主人は2位になりました。本当におめでとう。私はこんな凄いパパでも、もがき苦しんでいたパパでも関係なく大好きだし、心から尊敬しています。まだまだ目指すものがあるパパは幸せだね」

 生涯の伴侶として、アスリートとして、これほどの言葉はないだろう。

 日本人投手にとってもはやサイ・ヤング賞は夢ではない。現実の目標として切磋琢磨する時代がついにやってきた。ダルビッシュ有、前田健太のサイ・ヤング賞2位の結果は誇らしく、喜ばしい事実なのである。

文=笹田幸嗣

photograph by KYODO