メジャーでは今オフ、両リーグでのDH問題がクローズアップされそうな気配になってきた。コロナ禍の影響で公式戦が60試合に短縮された今季は、本来は投手が打席に立つナ・リーグでもDH制が実施された。約2カ月間の過密日程でもあり、投手の故障リスクを軽減することが主な目的だった。あくまでも今季の特例措置で、来季以降はこれまで通り、ナ・リーグは「DHなし」に戻すことが前提とされてきた。

 もっとも、選手会側は完全DH制への移行を推進するものとみられている。投手の負担軽減だけでなく、少なくともナ・リーグで15人(1球団1人のDH)の出場枠が確保され、より多くの選手がプレー機会を得られる点が、最大の理由と言われる。

 一方、機構とオーナー側は、試合数削減の代替案として10チームから16チームに拡大されたポストシーズンを維持したいとの姿勢を崩していない。通常の公式戦を大きく上回る放映権をはじめ副収入が増加するドル箱カードとなるだけに、できれば手放したくはない。ただ、ポストシーズン枠の拡大も、今季限定の合意事項。その結果、双方の思惑が交錯する今オフは、互いにDH問題を駆け引き材料として交渉するとの見方があり、ポストシーズン枠を14チームにする折衷案も伝えられる。

DH推進派と反対派の声

 DH制度は、1973年からア・リーグで採用された一方、ナ・リーグは従来の9人野球を維持し続けてきた。DH推進派の意見としては、「打つ気のない投手が打席に立つ必要はない」「9人の強打者が並ぶ攻撃的野球の魅力」などが挙げられる。その一方で、「野球本来のスタイル」「投手が安打を打つ意外性」などを主張するDH反対派の声も聞かれる。また、DHは高年俸選手が多く、2019年のア・リーグ平均は1365万ドル(約14億1500万円)と、全選手平均(約4億5000万円)の3倍を超えており、ナ・リーグのオーナー陣が懸念する要素のひとつとも言われてきた。

 今季は公式戦、ポストシーズンとも10月末までに無事終了したものの、その後、米国内はコロナ禍の第3波に見舞われており、来季の実施要項も先行きが見えていない。両リーグDH制を含め、今オフは機構・オーナー側と選手会の間で様々な攻防が繰り広げられそうだ。

文=四竈衛

photograph by Getty Images