週末でJリーグの全日程が終了しました。

 今季は新型コロナウイルスの影響で中断があったりと、不安や苦難が多かった1年でしたが、最後まで無事にスケジュールを消化できたことが何よりのことだと思います。難しい状況の中でもJリーグの動きは早かったと思いますし、結果として日本のスポーツ界を引っ張る存在になった。

 村井満チェアマンのリーダーシップにも感謝しなくてはいけないですね。

交代枠「5」をフル活用した川崎

 では、今季の総括を。まずは優勝した川崎フロンターレから。

 今季のレギュレーションで特徴的だったのは選手交代枠が「5人」だったこと。そこを最大限に生かしたのが、史上最速でリーグ王者に輝いたフロンターレです。選手の層の厚さはもちろんですが、試合の流れをガラッと変える巧みな交代選手の起用で、うまく勝ち点を積み重ねていきました。

 後半頭から家長昭博と三笘薫を投入して逆転した最終節の柏レイソル戦はまさに象徴的なゲーム(3−2)でしたね。フロンターレには家長、三笘の他にも齋藤学、長谷川竜也、旗手怜央などタイプが異なるウイングが多いので、厚い層だけでなく、選択肢が豊富。さらに前線にはゴールゲッターの小林悠とレアンドロ・ダミアンがいます。得点ランキングを見ても二桁ゴールをマークする選手が4人もいるように、どこからでも得点を奪えるのが強みでした(小林14ゴール、ダミアン・三笘13ゴール、家長11ゴール)。

GKソンリョンの安定感と進化

 あと、攻撃にばかり目がいきがちですが、守備も素晴らしかったですね。中でもGKチョン・ソンリョンの存在は大きい。今季も抜群の安定感でしたし、流れを変えるセーブもたくさんありました。GKコーチからこれまでとは違うトレーニングを取り入れたことを聞いていましたが、その効果なのか、さらに守備範囲が広がった印象を受けます。

最後尾から王者を支えたGKチョン・ソンリョン ©︎J.LEAGUE

 谷口彰悟、ジェジエウのCBコンビが機能し、右サイドの山根視来もフロンターレのサッカーにぴったりハマった。登里享平も攻守にいい働きを見せました。中盤も含めて、選手内の競争があり、どんどんいい流れになっていったと思います。 

 同じ神奈川県にあり、ともに攻撃サッカーを標榜する横浜F・マリノスに3連覇のチャンスを奪われて迎えた今季のフロンターレ。悔しさみたいなものがクラブや選手たちの心にあったのかもしれません。鬼木達監督が遂行したシステム変更や采配にも「さらに進化する」という強い意志も感じました。長年、クラブを支えた中村憲剛の引退に花を添える素晴らしい優勝だったと思います。

名古屋のクリーンシート「17」

 次に評価したいのは名古屋グランパス。驚くべきはクリーンシート(無失点)の数。FC東京の13、セレッソ大阪の12を大きく離して名古屋は17試合も達成しています。

 とにかくフィッカデンティ監督のサッカーは堅い。特に中央の4人がその象徴となりました。ボランチの米本拓司、稲垣祥、DFの丸山祐市、中谷進之介のセンターラインがフル稼働。ボールを取りに行く守備とゴール前をしっかり固めるという守備を相手によって使い分けられるようになりましたし、中央の連係に安定感があるのでバランスが崩れることはない。前線に前田直輝やマテウスといった“一発”がある選手が揃うだけに、後ろがしっかり我慢できれば「勝てる」というチーム内の信頼関係があったのではと思います。

 ACL出場権を得られる3位に入ったことで、来季は大型補強の噂も出ています。フィッカデンティらしい堅守のサッカーは来年以降も注目です。

米本ら軸となるセンターラインが機能した名古屋 ©︎Etsuo Hara/Getty Images

ガンバに備わった粘り強さ

 あと、リーグ2位でフィニッシュしたガンバ大阪にも触れましょう。今季はシーズン途中で大黒柱の遠藤保仁をレンタルで放出するという大きな動きがありました。そんな中でもしっかりと結果を残したことは今後のクラブにとっても大きい。宮本恒靖監督も積極的な若手起用が目立ち、山本悠樹という遠藤に代わるタクトを振れる選手が頭角を現すなど、来年に繋がる要素が多いのでは、と見ています。

 ガンバといえば、攻撃的なパスサッカーというイメージがありましたが、シーズン途中あたりから粘り強さみたいなものが出てきたように感じています。補強した昌子源やDFリーダーの三浦弦太と主力がフルで稼働できない台所事情もありましたが、なんとか守備陣が我慢していた試合も多かった。ただ一方で、王者・川崎には0−5で負けている事実もしっかり受け止めないといけません。倉田秋も口にしていましたが、ガンバのサッカーをもう一回取り戻せるようなムードは徐々に生まれつつあります。来季はACLもあるので、どんなシーズンになるか注目したいです。

オルンガの左足の振りが速い

 次は選手個人をピックアップしていきましょう。やはり今季は得点王になったオルンガとルーキーながらインパクトを残した三笘薫でしょうか。

 オルンガは以前のコラムでも紹介したように、あの長身にも関わらずとにかく身体がしなやか。シュートパターンも豊富で、特に左足のシュートの振りはしなったムチのよう。スピードが違うので、DFとしても「あっ」と思った瞬間に足を出しても、もうボールはゴールネットに……なんて感覚すら抱いたのではないでしょうか。アラウージョが持つ最多得点記録(33点)の更新とはなりませんでしたが、28点で堂々の得点王。左足ではなんと18ゴールも決めています(リーグ1位)。

28ゴールを挙げ、得点王に輝いたオルンガ ©︎AFP/AFLO

三笘のドリブルは2歩目が速い

 一方、三笘もMVP級の活躍でした。日本人で彼のようなドリブルをするタイプは本当に見たことがありません。スピードはもちろんですが、三苫のドリブルは2歩目が速くて、なおかつ幅を使ってる。前にかかっている時でも横に広く幅を使うからDFはなかなか飛び込めず、ボールに触れません。それにドリブルかと思っていたらパス、時には切り込んでシュートとパターンも多彩なので、DF陣は相当手を焼いたはずです。しなやかさで言えば、ネイマールに近い印象を受けますね。彼のドリブルを細かく評価したらキリがないので、それはまた次の機会に(笑)。とにかくルーキーイヤーで13ゴール、12アシストは立派のひとことです。

ルーキーながらシーズン通して大きなインパクトを残した三笘薫 ©︎Pablo Morano/MB Media/Getty Images

トリニータの鈴木義宜も賞賛

 あと大分トリニータのセンターバック鈴木義宜も賞賛したいです。J3時代の16年途中からフルタイム出場を続けている、まさに片野坂サッカーの申し子。頭を打った影響で無念のドクターストップとなり、記録は途絶えてしまいましたが、大分らしい丁寧なサッカーを支えていた彼はもっと評価されていいはず。こういう選手にもっと陽が当たって欲しいなと思います。

今季も最終ラインを統一した鈴木義宜 ©︎J.LEAGUE

蛍のようになれる安部柊斗

 最後に来季の注目選手を。個人的にはFC東京の安部柊斗に期待しています。というのも、今回のACLを見ていて改めて山口蛍(ヴィッセル神戸)のすごさを感じたんです。1人で守れて、1人でボールを奪いに行ける。キャプテンシーも素晴らしかったし、よく声も出していた。ボール奪取に優れ、とにかくハードワークできる安部にも山口のようなタイプになって欲しいなと思います。

 安部にとっても橋本拳人が海外へ移籍したことで、アンカーのポジションを奪うチャンス。来年は新戦力と争うことになると思いますが、安部のような選手が覚醒すると、FC東京はもっと強くなるんだろうなと思います。長谷川健太監督の期待も大きいはずです。

長谷川監督も期待を寄せる安部柊斗 ©︎Colin McPhedran/MB Media/Getty Images

長谷部監督の堅実なサッカーに期待

 また、5年ぶりにJ1昇格するアビスパ福岡にも注目ですよ。長谷部茂利監督は昔からよく知っている間柄なんですが、彼はやはりしっかり仕事をする(笑)。性格もすごく紳士で、真面目。当然、規律は重んじているでしょうけど、選手目線にもなれる監督なので選手の心を掴むのもうまいのかなと思います。

 昔、夏のトレーニングでは必ずシャツを短パンの中に入れていた。それをよくいじっていましたし、向こうも「今日もちゃんと入れてますよ」と言ってきたり(笑)。それぐらい何事もキチッとしたいタイプなんでしょう。

 性格同様にサッカーもとても堅実。しっかり守備をすることがベースにあって、崩れないサッカーをします。最終節の徳島ヴォルティス戦も“ウノゼロ”。来年のJ1は4チーム降格とかなり厳しい条件ですが、戦える戦力を整えることができたら、ある程度やれそうな雰囲気はありますね。シーズン途中の補強も的確で、山岸祐也や松本泰志らをピンポイントで獲得しました。

 シーズンが終わったばかりですが、来年も見所の多いJリーグになることを期待しています。

文=水沼貴史

photograph by Kenichi Arai/AFLO