コロナ禍での異例のシーズンを2位で終えた阪神タイガース。首位・巨人に7.5ゲーム差をつけられたという事実は重く受け止めなければなりませんが、昨年に引き続き生え抜きの若手がポジションを固めつつあり、収穫もあった1年でした。

 その中でも特筆すべきは、四番として定着した大山悠輔の成長でしょう。

 試合数が例年よりも20試合以上少ない中で、28本塁打、85打点、打率.288はいずれもキャリアハイ。本塁打数はリーグ2位タイ、打点は3位と初のタイトルも視界に捉えていました。

 ホームランのうち12本が甲子園で出ているのも良いですね。広さが苦になっていないということですから、彼の長打力という魅力を改めて感じさせてくれます。何よりホームで打てるというのはチームを勢いづけますし、お客さんも喜びます。大したものだと思いますよ。

 しかし、タイトル争いをした巨人・岡本和真やヤクルト・村上宗隆に比べると、まだ「物足りなさ」を感じます。この「物足りなさ」をどう補うかが、来シーズンで念願のタイトルを手に入れられるかどうか、ひいてはタイガースの成績につながってくると思っています。

その1)岡本の「安定感」と、村上の「確実性」がほしい

 31本、97打点で2冠に輝いた岡本は、3年連続の30本塁打超えでした。私は以前から30本、90打点が「四番打者」の最低ラインだと言っているのですが、そこも3年連続でクリアしています。この安定感は大山にはまだない部分ですね。

 彼は変化球を打つのが上手いのですが、変な力みがないのもポイントです。他球場に比べて広くない東京ドームがホームですから、自分のスイングをすればフェンスを超えることを理解しているのでしょう。

 昨年ブレイクし新人王を獲得した3年目の村上も、さらなる進化を見せてきました。以前は身体の前で広く変化球を拾っていましたが、今は速い真っ直ぐにも振り負けないスイングです。

 そして今年は、何と言っても打率を3割に乗せた(.307)こと。四死球が合わせて90個ある中でホームランを28本打っているのにも驚きました。確実性という面では、3人の中でも頭一つ抜けています。タイトルの獲得においては、本塁打が出やすい神宮球場をホームとしているのも有利です。

その2)一番物足りないのは「お尻」

 身体的なところで大山と2人を比較してみると、一番物足りないのは下半身、お尻ですね。もっとがっちりさせてほしいと常々感じています。岡本は、18年に出始めたときは細い印象を受けましたが、その年の夏から秋になるともう下半身がしっかりと出来上がってきていました。シーズン中の守備練習で腰から体重を乗せてトレーニングしていたことが生きたのだと思います。

 その点大山は、まだ守備は守備、打席は打席と分けて考えていて、リンクさせていない印象を受けます。練習で受ける1球1球が下半身を作り、そこからどっしりとした構えが生まれ、ぶれないスイングにつながります。来季のキャンプでは、まずお尻を見てみようと思っています。

その3)「三振」を意識して減らそうとするな!

 もう1つ指摘するとすれば、三振数です。これは減らせという意味ではありませんよ。むしろ心配なのは、意識して減らそうとすることです。

 ここでも岡本を例に挙げますが、18年の120個、19年の132個に対し、今年は85個と明らかに意識して三振を減らしていますね。これは一見良いことのように思えますが、相手バッテリーの視点で見ると少し変わってきます。

 2ストライクに追い込まれたところからミート中心に切り替えれば、三振は自ずと減ります。しかし、バッテリーにとって一番嫌な四番打者は「当たればホームラン」というバッター、つまり「怖さ」があるバッターです。ミート中心の打撃にするとその「怖さ」が薄くなる。相手バッテリーからすると、かえってやりやすくなってしまうんです。

 大山は19年、20年とそれぞれ100個近く三振を喫していますが、ホームランバッターは100三振くらいならそれでいい。必要以上に気にすることなく、しっかり振っていってほしいと思います。

あくまで今年が「四番・大山」のスタート

 最後に、大山は開幕当初、スタメンをマルテに譲っていましたね。その影響で岡本や村上よりも打席が30ほど少なかったのですが、始めから四番に座っていれば大山がタイトルを獲得していてもおかしくはなかったと感じます。

 実力で首脳陣を見返し、信頼を勝ち取った今年が「四番・大山」のスタートです。来年はよほどのことがない限りスタメンからも外されないでしょう。毎年着実にキャリアハイを更新している大山がどこまで力を伸ばせるか、楽しみに見ていきたいと思います。

文=藪恵壹

photograph by Kyodo News