日本代表FW南野拓実が、リバプールに加入して1年が経とうとしている。

 在籍2季目となった今シーズンは、国内リーグ戦14節まで8試合に出場し(そのうち先発は2試合)、得点は今月19日に行われたクリスタルパレス戦の1ゴール。チャンピオンズリーグとリーグ杯、コミュニティーシールドを合わせた通算記録では、23試合で15試合に出場し(先発は6試合)、得点は4ゴールだ。途中出場を含めて公式戦の約65%で出番があり、先発は全体の約26%にとどまった。

 クリスタルパレス戦では華麗なキックフェイントから先制点を決め、特大のインパクトを放った。

 ユルゲン・クロップ監督が「タキ(南野の愛称)は最高の試合をした」と褒めるなどアピールに成功したが、シーズン前半戦の序列はあくまでもバックアッパーだった。起用ポジションも、CF、左右のウイング、インサイドハーフと非常に流動的で、さまざまな役割をこなした。

 そこで、起用ポジションごとに南野の序列を考察し、プレーやユルゲン・クロップ監督の考え、今後の可能性をまとめてみた。

クロップがまず組み込もうとした“偽9番”

<CF(1枠)>
Sランク フィルミーノ
Aランク ジョタ
Bランク 南野
Cランク オリジ

 クロップ監督は、加入したばかりの南野をまずこのCFに組み込もうとした。基本フォーメーションは4-3-3。ゴールが強く求められる通常のCFとは異なり、リバプールでは実に多くのタスクが要求される。

 そのひとつが“偽9番”として中盤まで降下し、攻撃の組み立てにも参加すること。最終局面で得点に絡むことも大事だが、インサイドハーフと連係しながら、ウインガーのモハメド・サラーとサディオ・マネにスルーパスを供給するのも重要な務めとなる。わかりやすく言えば、チャンスメークも仕事のひとつだ。

 このCFで、絶対的エースの座にいるのがロベルト・フィルミーノである。

 サラー、マネと息のあったコンビネーションを築き、ワンタッチパスで彼らのゴールをお膳立てしている。体幹が強い上にキープ力に優れており、中盤でマーカーを背負った状態から前を向き、局面打開を図るプレーも得意とする。

 南野は当初、CFで控えの1番手につけていたが、序列を上げてきたのが今夏の移籍市場で加わったポルトガル代表FWのディオゴ・ジョタだ。

 前所属のウォルバーハンプトンでは2トップの一角を務めることもあったが、本職はウインガーである。ところが、CLグループステージ第3節のアタランタ戦(11月3日)でCFとして先発すると、足元の技術を使って味方を生かし、自慢のスピードで決定機も量産した。この試合で、ジョタはハットトリックを達成。クロップの求めるCFのタスクをこなしながら、随所に自身の持ち味を出し、CFで機能できることを証明した。

現地記者が語る南野の特徴と“弱み”

 現状、南野の序列はジョタのひとつ下のBランクだろう。日本代表アタッカーがフル出場したリーグ杯3回戦のリンカーン戦後(9月24日)、ドイツ人指揮官は「プレスやカウンタープレスで、タキはチーム全体のリズムを作ってくれた」と、守備の出来を高く評価した。攻守の切り替えが速く、激しく敵に体を寄せてボールを奪うディフェンスは、まさに南野の持ち味だ。

 だが、CL第2節のミッティラン戦(10月27日)では敵の激しいプレスに苦しみ、不用意な形でボールを失う場面が多かった。CFがボールをしっかり収められないと、チームとしても苦戦する傾向がある。事実、南野は後半15分に交代を命じられた。

 英紙サンデー・タイムズでサッカー部門の主筆を務めるジョナサン・ノースクロフト記者は「南野は、動きながらワンタッチやターンで打開するタイプ。その分、フィジカルはさほど強くない。マーカーが激しく潰しに来るCFでは持ち味を生かせない」とCFでの問題点を指摘している。

左右ウイングに君臨するマネ&サラー

<左右ウイング(2枠)>
Sランク サラー、マネ
Aランク ジョタ
Bランク オクスレイド・チェンバレン、南野、シャキリ
Cランク オリジ

 南野は左右のウイングで起用されることも多い。ただ、この位置ではサラー、マネというワールドクラスが君臨する。

 2年前の欧州制覇、昨シーズンの国内制覇に大きく貢献し、両者は絶対的な立ち位置を築いている。また、驚異的なスピードでスペースに飛び出し、そのままネットを揺らせるのは、新戦力のジョタも一緒だ。大きく分類すれば、この3人は同タイプのプレーヤーで、序列でも上位につける。

 一方、Bランクに入れた南野は、上記の選手とはタイプが異なる。目立つのはポジション取り。サラーとマネは、大外のワイドエリアからスピードでぶっちぎるシーンが多いが、彼らほど速さのない南野は、ポジジョンを中央に移してボールを受ける。クロップ監督も「左ウイング、右ウイングのどちらでプレーしても、タキはハーフスペース(※相手SBとCBの間のエリア)に入ってくる。これが彼のストロングポイント」と語っている。

 実際、ゴールを決めたクリスタルパレス戦でも、サイドから中央部にスライドするオフザボールの動きを何度も見せた。味方からラストパスを引き出したり、あるいは囮(おとり)となって味方の好機を演出したりして、相手DFを大いに混乱させた。

ウイングがプレーしやすそうに見えるワケ

 南野としても、このウイングのポジションはプレーしやすそうに見える。

 CFに比べると敵のマークは厳しくない。加えて、スペースを見つけるのが得意で、サイドからダイアゴナルランでゴール前に侵入し決定機に絡んだ。中央部にポジションを移せば、味方との距離も近くなるだけに、連係&連動しながらワンツーなどで突破を図ることもできる。クロップ監督としても、タイプの違う南野をウイングで起用すれば、貴重な戦術オプションとなる。

 基本フォーメーションの4-3-3では、ウイングのポジションが南野にとって最も適しているように見える。もっと言えば、カットインから利き足の右足でシュートを打てる左サイドの方が、より特性を生かせるだろう。

球際の強さを求められるインサイドハーフ

<インサイドハーフ(2枠)>
Sランク ワイナルドゥム、ヘンダーソン、チアゴ
Aランク ケイタ、ミルナー、ジョーンズ、オクスレイド・チェンバレン
Bランク 南野、シャキリ
Cランク 該当なし

 インテンシティの高いリバプールのプレースタイルを支えているのが、中盤のインサイドハーフだ。3トップのチェイシングで乱れた敵のパスワークを一気に刈り取り、素早く攻撃につなげるのが主な仕事となる。昨シーズンの好調時にセカンドボールをことごとく拾っていたように、このポジションでは球際の強さが求められる。

 昨季はワイナルドゥムとヘンダーソンがインサイドハーフのレギュラーを務め、その後方のアンカーにファビーニョを入れるのが基本形だった。ここに、夏の移籍市場でスペイン代表MFのチアゴ・アルカンタラが加わった。

 シーズン序盤に負った怪我でまだ出場機会は少ないが、視野の広い展開力と正確なパスワークは大きな魅力である。ワイナルドゥムとヘンダーソン、チアゴをレギュラークラスのSランクとした。

「執拗なチェイスとネガトラの速さ」で活性化

 南野は、ここから2つ下のBランクに入れた。同位置で初めて先発起用されたのは11月28日に行われたPL第10節のブライトン戦。本職でないせいか、この試合では消極的なプレーが目立ったが、再度起用されたPL第12節のフルアム戦では攻守に奮闘し、「積極的な攻めの姿勢」と「アグレッシブな守備」で劣勢だった試合の流れを大きく変えた。

 特に目立ったのが、「執拗なチェイス」と「攻→守のネガティブトランジション(切り替え)の速さ」。南野の精力的なランで、チーム全体が活性化した。

 中盤での起用といっても、攻撃の流れの中で前線に顔を出していけば、チャンスに絡むことはできる。さらに、得意のフリーランやターンなどで局面打開ができれば、一気にゴールに近づける。インサイドハーフには、自軍サイドバックの攻撃参加時に後方部をカバーするという守備タスクによる制限があるが、積極的な攻めの姿勢を忘れなければ、南野の持つ攻撃特性は生かされるだろう。

“プランB”4-2-3-1のトップ下は?

<戦術オプションの4-2-3-1 トップ下(1枠)>
Sランク フィルミーノ、ジョタ
Aランク シャキリ
Bランク 南野、オクスレイド・チェンバレン、ジョーンズ
Cランク 該当なし​

 今季開幕前のプレシーズンマッチから、クロップ監督は「プランB」、つまり4-2-3-1のテストを繰り返した。公式戦ではまだ実践回数は少ないが、試合展開や対戦相手のアプローチ次第では今後採用される試合は出てくるだろう。トップ下の主な仕事は、ゴールに近いポジションを取りながら、最終局面の崩しとフィニッシュに絡むことになる。

 南野は、日本代表でもトップ下を務める試合が多い。オフザボールからの前線への飛び出しや、積極的なプレスといった長所を考えても、リバプールで最も特性を生かせるポジションと言えよう。

 特に、CFにフィルミーノが入った場合はメリットが大きい。周囲を生かす技術に秀でるブラジル代表FWと「縦の関係」を構築できれば、南野の飛び出しがさらに生きてくる。広い視野とパス展開力に優れるチアゴが後方のセントラルMFに入れば、南野のフリーランの危険度は倍増するに違いない。

南野は唯一CF、WG、中盤すべてでプレーした

 こうしてまとめてみると、リバプールの選手層が極めて分厚いことに改めて気がつく。各ポジションにワールドクラスを揃え、戦力の穴はまったく見当たらない。わずか1年の間にCL、クラブW杯、プレミアの3大主要タイトルを総ナメにしただけのことはあるだろう。

 現時点で、南野の序列は各ポジションで「Bランク」にある。故障で離脱中の選手が復帰してくれば、再びベンチに入れるか、入れないかの当落線上に置かれるはずだ。

 その一方で、日本代表は今季の試合でCFとウイング、インサイドハーフのすべてのポジションでプレーした唯一の選手でもある。こうしたポリバレントな能力は南野の特性であり、リバプールで生き残っていくための大きな武器となるだろう。

 特に今シーズンはコロナ禍で過密スケジュールが続き、筋肉系の故障者が続出している。たとえBランクであっても、今後も出場機会は必ずまわってくるだろう。また、クロップ監督はトレーニングから選手たちの動きを非常によく見ている。実際、クリスタルパレス戦後には「タキは今、なにより調子がいい。中盤、前線のどこであっても起用したかった」とし、好調の南野をどうしても起用したかったと明かした。

 練習から鋭い動きを見せていけば、クロップも序列を飛び越えて日本代表アタッカーを抜擢するはずである。

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文=田嶋コウスケ

photograph by Getty Images/Sports Graphic Number