2020年、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ドラフト会議部門の第3位は、こちら!(初公開日 2020年10月16日)。

即戦力に頼らざるを得なかった楽天

◇2010年楽天指名一覧◇
×1位 大石達也(早稲田大・投手)
1位 塩見貴洋(八戸大・投手)
2位 美馬学(東京ガス・投手)
3位 阿部俊人(東北福祉大・内野手)
4位 榎本葵(九州国際大付高・外野手)
5位 勧野甲輝(PL学園高・内野手)
育成1位 加藤貴大(北信越BCリーグ富山・投手)
育成2位 木村謙吾(仙台育英高・投手)
育成3位 川口隼人(滋賀高島ベースボールクラブ・内野手)

 球界に参画して6年目(ドラフト参加は7回目)の若い球団だけに、ドラフトでは常に即戦力を求めざるを得なかった。05年から3年間続いた分離ドラフト(高校生ドラフトと大学生&社会人の指名を別々に行う方式)で田中将大投手(06年高校生1巡目)を指名できたのは制度の恩恵。もし通常のドラフトだったら楽天はこの年、即戦力が期待される大学生か社会人の投手を指名していたはずだ。

1、2位がしっかりと戦力になった星野体制

 10年の1位塩見、2位美馬は戦力になった。

 塩見は通算46勝55敗。筆者が基準とする成功選手の目安「投手・通算50勝、300試合登板、野手・500安打、1000試合出場」への到達は目前。今年の防御率は4.41とよくないが、首位を走るソフトバンクには2勝0敗、防御率0.66と相性がいい。美馬は51勝60敗を挙げた19年限りでFA権を活用してロッテへ移籍。今季は13日時点ですでに9勝3敗の好成績を挙げ、塩見同様、首位争いを演じるソフトバンクには前年の3勝1敗に続き、今年も4勝1敗と相性がいい。

 高校生だった榎本、勧野はともに現役を引退。どちらも期待されたほど足跡を残すことができなかった。ただ、それは2人だけではない。この年まで生え抜き高卒選手で戦力になったのは田中将、銀次、辛島航の3人ぐらいだろう。通算でも松井裕樹がここに加わるだけで、高卒選手育成は難しさを痛感する。

3回外した末に指名したのは……

◇2010年オリックス指名一覧◇
×大石達也(早稲田大・投手)
××伊志嶺翔大(東海大・外野手)
×××山田哲人(履正社高・内野手)
1位 後藤駿太(前橋商高・外野手)
2位 三ツ俣大樹(修徳高・内野手)
3位 宮崎祐樹(セガサミー・外野手)
4位 塚原頌平(つくば秀英高・投手)
5位 深江真登(関西独立L明石・外野手)

 近年のオリックスは1位の重複を避けるイメージがあるが、当時は人気選手の競合に挑んでいる。田中将大(06年)、中田翔(07年)に始まり、この年のあとも高橋周平(11年)、藤浪晋太郎(12年)に入札した。

 だが、2010年は3度もくじを外した。大石の抽選に外れると伊志嶺(ロッテ)、山田(ヤクルト)に向かい、そのあと“外れ外れ外れ1位”で後藤に落ち着いている。ここで注目したいのは外れ1位で野手の伊志嶺に向かい、外れ外れ以下も山田、後藤と野手に向かっている点だ。07年に中田を外して野手の丹羽将弥を獲得し、11年は高橋周平の抽選で外れて内野手の安達了一を指名している。いろいろ不満な点はあるが、向っている方向は間違っていないことがわかる。

守備力、走力で貢献する後藤

 後藤はルーキー年の11年以降、毎年一軍でプレーしている。キャリアハイは15年の135試合出場、打率.234、安打78、盗塁8で、100試合出場は13〜17年まで5年間続いている。通算出場試合は822なので私が成功選手の基準にする1000試合出場は間近である。打撃以外の守備力、走力だけでもチームに貢献できるところが野球の面白いところである。

 3位宮崎は19年限りで引退し、4位塚原は15、16年に中継ぎとして40試合以上登板して勝利の方程式の一翼を担い、やはり19年限りで引退している。

“引きの強さ”を見せつけた日ハム

◇2010年日本ハム指名一覧◇
1位 斎藤佑樹(早稲田大・投手)
2位 西川遥輝(智弁和歌山高・外野手)
3位 乾真大(東洋大・投手)
4位 榎下陽大(九州産業大・投手)
5位 谷口雄也(愛工大名電高・外野手)
6位 齊藤勝(セガサミー・投手)

 プロ野球界でドラフト巧者と言えば最初に頭に浮かぶのが日ハムだ。1位では他球団との競合を恐れず「その年に最もいい選手を指名する」を信条とし、04年以降はダルビッシュ有、中田翔、菅野智之(入団拒否)、大谷翔平、有原航平を指名。それぞれをプロ野球界を代表する選手に育て上げている。

 この年も4球団が競合した斎藤に入札し、見事当たりクジをゲット。引きの強さを証明した。だが、その斎藤はここまで大きな足跡を残したとは言いづらい。ハンカチ王子として甲子園を沸かせた右腕は今年でもう32歳。ひと花咲かせることができるだろうか。

中学時代から異次元のスピード

 プロ入り後、最も活躍したのは2位西川だ。

 筆者が西川を初めて観たのは彼が中学2年のとき。全国大会ジャイアンツカップに敗れたあとのエキシビションゲームでその足の速さに驚いた。当時の中学3年生の一塁到達タイムは平均で5秒以上かかっていたが、西川はバントの時に4.2秒台で一塁に到達した。智弁和歌山高に進学後も注意深く見守った。

 甲子園では足や肩など常に故障を抱えた状態での出場となったが、その才能を見抜いた日本ハムは2位という高順位で指名している。2年目の12年には早くも71試合に出場、14年には147安打を放ち、43盗塁でタイトルに輝いた。

 5位谷口も未だ現役で健在。12年以降、17年を除いてコンスタントに試合に出場し続け、貴重なバイプレーヤーとして存在感を発揮している。

熾烈なレギュラー争いを戦った伊志嶺

◇2010年ロッテ指名一覧◇
×斎藤佑樹(早稲田大・投手)
1位 伊志嶺翔大(東海大・外野手)
2位 南昌輝(立正大・投手)
3位 小林淳(七十七銀行・投手)
4位 小池翔大(青山学院大・捕手)
5位 江村直也(大阪桐蔭高・捕手)
6位 藤谷周平(南カリフォルニア大・投手)
育成1位 黒沢翔太(城西国際大・投手)
育成2位 山口祥吾(立花学園高・投手)
育成3位 石田淳也(NOMOベースボールクラブ・投手)

 10年前、ロッテはまだ将来性に目を向けていなかった。本指名6人中、高校生は5位江村だけ。私が成功選手の基準とする数字に到達した選手は1人もいない。

 最もレギュラーに近づいたのは1位伊志嶺だ。1年目に126試合に出場し、打率.261(安打110)、盗塁32を記録している。このくらいの成績をルーキー年に挙げればそのままレギュラーに定着するケースが多いが、前年のドラフトで1位荻野貴司、4位清田育宏を指名し、さらに1歳上に独立リーグ出身の角中勝也がいた。ここにサブロー、岡田幸文を交えた激しい外野のレギュラー争奪戦を伊志嶺は勝ち抜けなかった。

難病を患いながら戦う南

 投手で300試合登板に近づいたのは2位南だ。立正大のリーグ戦初優勝、全国大会(明治神宮大会)優勝の原動力になった本格派で、2年目の12年に26試合に登板して初勝利を挙げると、16年にキャリアハイとなる57試合に登板、5勝4敗16ホールド、防御率2.74の好成績を挙げる。国が難病に指定する「黄色靭帯骨化症」にかかり19年以降、登板の機会が少なくなっているが、リリーフ陣に弱さがあるチームには必要不可欠な人材。復活が待たれている。

大石の穴を補完したサブマリン牧田

◇2010年西武指名一覧◇
1位 大石達也(早稲田大・投手)
2位 牧田和久(日本通運・投手)
3位 秋山翔吾(八戸大・外野手)
4位 前川恭兵(阪南大高・投手)
5位 林崎遼(東洋大・内野手)
6位 熊代聖人(王子製紙・外野手)

 1位入札で6球団が重複した大石を獲得し、永年の課題だったリリーフ投手の確保が実現した西武。しかし、これほどまでの投手が、まさか通算5勝6敗8セーブ12ホールドで終わるとは思わなかった。その欠落感を埋めたのが2位牧田だった。通算319試合に登板し、54勝50敗26セーブ75ホールド、防御率2.78を挙げている。18、19年にはメジャー挑戦のため渡米し、所属したパドレスでは27試合にリリーフ登板している(0勝1敗2ホールド)。帰国した20年に楽天へと活躍の場を移し、42試合に登板、勝負どころのゲーム後半を担っている。

西武の主力打者はドラ3が多い?

 3位秋山は山田(ヤクルト)、柳田(ソフトバンク)に匹敵する10年組の“顔”だろう。19年まで1207試合に出場、通算成績は打率.301(安打1405)、本塁打116、打点513、盗塁112を記録し、ベストナイン4回、ゴールデングラブ賞6回に輝き、打撃タイトルは首位打者1回、最多安打4回を数えている。

 歴代の西武の主力打者は、松井稼頭央(93年)、栗山巧(01年4巡目)、浅村栄斗(08年)、金子侑司(12年)、外崎修汰(14年)、源田壮亮(16年)……と、なぜかドラフト3位が多い。1、2位の上位は投手を指名しがちだが、ここに野手をもっと混ぜたらどのくらい強力な打線が出来上がるのか興味がある。

語り継がれるソフトバンクの指名

◇2010年ソフトバンク指名一覧◇
×斎藤佑樹(早稲田大・投手)
1位 山下斐紹(習志野高・捕手)
2位 柳田悠岐(広島経済大・外野手)
3位 南貴樹(浦和学院高・投手)
4位 星野大地(岡山東商高・投手)
5位 坂田将人(祐誠高・投手)
育成1位 安田圭佑(四国九州IL高知・外野手)
育成2位 中原大樹(鹿児島城西高・内野手)
育成3位 伊藤大智郎(誉高・投手)
育成4位 千賀滉大(蒲郡高・投手)
育成5位 牧原大成(城北高・内野手)
育成6位 甲斐拓也(楊志館高・捕手)

 2010年のソフトバンクの指名は、のちのプロ野球界に衝撃を与える面々ばかりだ。

 2位柳田は大学4年間のリーグ戦通算打率.428と目を引くが「地方リーグ・広島六大学リーグで」という注釈がついていた。プロで一軍定着の目安を「シーズン100安打」に置くとすれば、柳田がレギュラーになったのは4年目の14年。大卒選手としては遅い部類に入る。だが、この年は144試合に出場して打率.317、本塁打15、打点70、盗塁33を挙げ、ベストナインとゴールデングラブ賞を受賞。翌15年には打率.363、本塁打34、打点99、盗塁32でトリプルスリーを達成と、あっという間にトップに躍り出た。

 これまで打撃タイトルは首位打者を2回獲得して、今季も打率.336(3位)、本塁打26(3位)、打点73(3位)と上位をキープ。ヤクルトの山田とともにこの年のドラフトを象徴する打者と言っていい。

千賀、甲斐、牧原…スカウト陣は殿堂入り級

 柳田以外では育成ドラフトで指名された3人が注目の的だ。まず4位で千賀を指名すると、6位でも甲斐を指名。現在のチームの核となる打者とバッテリーを一度のドラフトで獲得してしまったことになる。球団に殿堂があれば、この年のスカウト陣は間違いなく選考されているだろう。育成5位牧原も言わずもがな、十分戦力になっている。

 千賀に関しては思い出深いシーンがある。12年のプロ入り初登板のピッチングが話題になり、筆者は躊躇なく2度目の登板(5月11日ロッテ戦)を視察した。最速149キロだけでなく、3番井口資仁(現ロッテ監督)の胸元に腕を振って146キロのストレートを投げる勝負度胸と抜群のコントロール、さらに投球フォームのよさなど全てに衝撃を受けた。この日は2回途中でKOされながらも、いいところしか目に入らなかった。改めて強調するが、この年のドラフトは永遠に語り継がれていくと思う。

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文=小関順二

photograph by Mami Yamada