マンチェスター・ユナイテッドの関係者、サポーターは、はらわたが煮えくり返っている。ポール・ポグバのエージェントを務めるミーノ・ライオラが、またしても不適切な発言で物議を醸した。

「ユナイテッドとポグバの関係はすでに冷え切っている。現行の契約が切れる2022年を持つまでもない」

 イタリアの有力紙『トゥット・スポルト』に語ったとされる発言が、ユナイテッド側の逆鱗に触れたのは当然だ。このひと言が公にされたのはチャンピオンズリーグのグループステージ最終節、ライプツィヒ戦の直前だった。

『トゥット・スポルト』の取材は1、2カ月前だったとしても、のちにライオラが「すぐに移籍するとは言っていない」と反論したため、ユナイテッドを批判したことだけはおおよその察しがつく。

 さらに、「ユナイテッドとポグバの関係はすでに冷え切っている」という部分は否定していないのだから、「移籍を企んではいるのだな」が、我々一般大衆の着地点になるだろう。しかし……。

慌てて火消しを試みた?

 ポグバの発信はどのように捉えればいいのだろうか。

「俺はユナイテッドを愛しているし、サポーターと勝利を分かち合いたい。内部事情を知らない連中は口を閉じていろ」

 ライオラを否定しているようにも受け取れる。エージェントと協議し、慌てて火消しを試みたようにも感じられる。

 ユナイテッドの元キャプテン、ロイ・キーンが「ポグバとライオラが袂を分かつはずがない。彼らの真意はつかみかねる」と語っていたように、政治的な動きを頭の片隅に置いていた方がいいのかもしれない。

 また、スペインのスポーツ紙『AS』は、「ライオラとユベントスが接触。ポグバ復帰に関して話し合った」と報じているが、信憑性の高い情報とは考えづらい。なぜならコロナ禍で各クラブの財政が苦しく、冬の市場で大金が動く気配がないからだ。ユベントスが目論んでいるローン移籍は、ユナイテッドが断固として拒否する。一銭の得にもならないビジネスを、受諾するはずがない。

「あの男にかまうだけ時間の無駄だ」

 したがって、とりあえず残留、市場活発化後に移籍――が、ポグバとライオラの考え方ではないだろうか。世間の流れを踏まえれば、いまはおとなしくしている方が賢明だ。

「あの男にかまうだけ時間の無駄だ」

 オーレ・グンナー・スールシャール監督は、ライオラに対する嫌悪感を露わにしている。

「(ポグバの)ポテンシャルは特大さ」

 ライオラの不適切発言後も、指揮官はポグバを信頼している。しかし、どのポジションで起用すれば本来の力を発揮するのか、監督就任後2年が過ぎたいまでも試行錯誤が続いている。

アンカーで起用するのは危険

 キープ力を過信し、自陣深めでも細工しようとするため、プレスの餌食になりやすい。アンカーで起用するのは危険だ。2列目中央? ブルーノ・フェルナンデスほどには違いを創れず、4-2-3-1の中盤センターでは守備力に不安がありすぎる。

 フランス代表のディディエ・デシャン監督は「ポグバは4-3-3のインサイドハーフが適している」と語っているが、ユナイテッドにはエンゴロ・カンテのような優れたアンカーがいない。ハリー・マグワイアとビクトル・リンデロフは揃って“控えめ”。アンカーの脇に生じるスペースを埋めることなく、最終ラインで迎撃するタイプだ。

 とはいえ、インサイドハーフはユナイテッドでも候補として考えられるポジションだ。中盤ダイヤモンド型の頂点にB・フェルナンデス、左にスコット・マクトミネイ、アンカーはフレッジ、そして右インサイドにポグバを置く。ポグバのエリアが狙われた際はフレッジとマクトミネイがスライドすることによって対応。システム上はピンチを防げるはずだ。

 また、ビルドアップの質を上げるためにもポグバの右インサイドハーフは悪くないプランだ。なぜならユナイテッドの攻撃は左サイドに偏っている。B・フェルナンデスとマーカス・ラッシュフォードが左サイドでのプレーを好み、左SBのルーク・ショー、アレックス・テレスも攻撃参加を繰り返すからだ。

右サイドの仕切りを任せてみる?

 一方、右サイドは静かに時が過ぎていく。フアン・マタが2列目の右に起用されても、ボールがよく動く左サイドまで寄ってくる。アーロン・ワン・ビサカはショーやテレスほどビルドアップに貢献できない……どころか、低質なクロスやパスでせっかくのチャンスをフイにするケースも少なくない。

 ならばポグバに右サイドの仕切りを任せてもいいだろう。ユナイテッドがボールを保持している際、右サイドにはスペースがある。彼のポテンシャルを活かす唯一の領域かもしれない。しかし……。

 いま、ユナイテッドの中盤における序列はB・フェルナンデスがアンタッチャブルで、豊富な運動量と守備面の貢献が光るフレッジ、リーズ戦で2ゴールをあげ、大半のメディアがマン・オブ・ザ・マッチに挙げたマクトミネイが、スールシャール監督の信頼を得ている。

 そのリーズ戦ではチーム全体のスプリント回数が205回に達し、それまでの平均回数を65回も上回った。110.2kmを計測した走行距離も、107・15kmだった平均値を越えてきた。したがって、この一戦が指針となり、スールシャール監督がようやくカウンター主体に舵を切るものと推察できる。

ポグバ抜きの4-2-3-1

 こうして、ポグバの居場所が狭くなってきた。ユナイテッド移籍後はコンディショニングに苦しみ、走行距離やスプリントの回数で評価されたケースは一度もない。前線に飛び出した後、B・フェルナンデスのように全速力で戻りもしない。

 当然、ポグバの序列は上がらず、リーズ戦の4−2−3−1(図参照)が今後の基軸となる公算が大きくなりつつあるいま、ポグバが先発に起用される確率は低い。とはいえスーパーサブという位置づけでは、彼のプライドに傷がつく。

 今年1月までなら、絶対的なクオリティーで傑出するポグバを中核としたチームを構築すべきだったが、B・フェルナンデスの加入で事情が変わった。もはやポグバが先発から外れても驚きはなく、彼抜きのリーズ戦で今シーズン最高といって差し支えないパフォーマンスを見せたのだから、スールシャール監督も断固たる決断を下すときがやって来た。

 扱いに不満を抱いたポグバがライオラに愚痴る→強欲エージェントが脚色してメディアに情報を流す→タブロイド紙がさらに盛って伝える→ユナイテッドとポグバの関係が悪化する……。

 何度となく繰り返されるイメージダウンの寸劇。ライオラが懲りずに情報操作を試みたら、ポグバと袂を分かつしかない。

 ポジションは、自分でつかみとるものだ。

文=粕谷秀樹

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