2020年のオリックス・バファローズへの印象を一言で言えば「そこまでに負けるチームではなかった」ということになる。

<2020年チーム成績>
45勝68敗7分 勝率.398(6位)
打率.247(4位)本塁打90本(4位タイ)442打点(6位)95盗塁(2位)
防御率3.97(3位)20セーブ(6位)84ホールド(4位)107被本塁打(3位)

 得失点差に基づく勝率である「ピタゴラス勝率」では、オリックスは49勝64敗、勝率.437、やはり最下位ではあるが、5位西武(勝率.438)とのゲーム差は2差、4位日本ハム(.466)とは1ゲーム差。Bクラスではあるにしても、一人負けではなかったはずだ。

 またオリックスからは首位打者の吉田正尚、最多奪三振の山本由伸と、タイトルホルダーが2人も出ている。陣容もそれなりに揃っていたはずなのだ。

 オリックス・バファローズは「なぜ実力以上に負けたのか?」について考えたい。

 最大の要因はやはり、西村徳文前監督時代に大負けしたことか。
 
<西村監督時代と中嶋聡監督代行時代の戦績>
西村監督
16勝33敗4分 勝率.327
中嶋監督代行
29勝35敗3分 勝率.453

 中嶋監督代行になっても負け越してはいたが、勝率は大幅に改善された。

序盤の「同一カード6連戦」に泣かされた

 とにかく、シーズンの立ち上がりが最悪だった。昨年のパ・リーグは、開幕2カード目から「同一カード6連戦」という変則日程だったが、オリックスはロッテ戦で6連敗したのだ。

 同一カード6連戦6連敗は、今後二度と出そうにない珍記録ではあるが、それもあって開幕の6月は1勝9敗。早々に諦めムードになってしまったのだ。

 筆者は8月以降に京セラドーム大阪でオリックス戦を10試合ほど見たが、特に打線の淡白さが気になった。8月7日のロッテ戦では17安打で3得点。4併殺でことごとくチャンスをつぶしていた。観客席からはチャンスでも「どうせまたゲッツーやで」と嘲笑が起こっていた。

西村監督と中嶋監督代行時代の違いとは

 西村監督時代と中嶋監督代行時代の違いについて、もう少し詳しく見てみよう。

<西村監督が解任された週の終わりである8月24日時点と、中嶋監督代行時代のチーム打率と防御率>
西村監督時代 打率.246 防御率4.29
中嶋代行時代 打率.248 防御率3.69

 チーム打率は大きく変わらないが、防御率が大幅に向上している。つまり投手陣が立て直されたのだ。これは、捕手出身の中嶋監督代行の手腕が発揮されたとみるべきではないか。

山本由伸、増井が明らかに良くなった

 先発ではエース山本由伸の変化が目覚ましかった。

西村監督時代 9試合3勝1敗 60.2回 防御率3.41
中嶋代行時代 9試合5勝3敗 66回 防御率1.09

 西村監督時代は9試合で5度のクオリティスタート(QS。6回以上投げて自責点3以下、先発投手の最低限の責任)だったが、中嶋監督代行になってからの9試合はすべてQS。千賀滉大に防御率1位のタイトルこそ奪われたが、リーグ屈指の先発投手になった。

 また増井浩俊は配置転換で復活した。

西村監督時代 11試合0勝1敗5ホールド 9.2回 防御率3.72
中嶋代行時代 5試合2勝1敗 26回 防御率2.78

 日本ハムからFA移籍してクローザーとして活躍した増井だが、2019年以降救援に失敗すること多くなり、7月27日に二軍落ち。しかし中嶋監督代行に代わった9月3日に一軍に再昇格すると先発投手として立ち直ったのだ。

 西村監督時代の正捕手は若月健矢だったが、中嶋監督代行は伏見寅威を重用。捕手出身だけに、このあたりにも眼力を発揮したのかもしれない。

 野手陣では、中嶋監督代行は二軍で4割近い打率を残していた杉本裕太郎を中軸で起用し、打線の厚みが増した。また育成上がりの新人の大下誠一郎を抜擢。9月15日の一軍デビュー戦で初打席初ホームランの派手なデビュー、以後もムードメーカーとして存在感を示した。

二軍監督だった中嶋監督代行だからこそ

 端的に言えば「空気が変わった」ということか。

 2019年もオリックスは最下位だったが、西村徳文監督は留任。そもそもロッテ出身でオリックスには縁の薄い監督だったが「若手が育っている」ことを理由にもう1年務めることになった。しかしチームの士気は上がらなかったようで、球場には沈滞ムードが漂っていた。

 その空気が二軍監督で、チームの実情をよく知る中嶋監督代行になって一掃されたのだろう。

 端的に言えばオリックスは「底を打った」とは言えよう。ただし上昇基調ではあろうが、まだまだ上位を狙うには戦力不足なのは間違いない。

吉田正尚の「17敬遠」が物語る課題

<今季のRC(Runs Created/打者の総合指標)10傑>
1吉田正尚 95.75
(408打143安14本64点8盗 率.350)
2T−岡田 49.75
(328打84安16本55点5盗 率.256)
3ジョーンズ 40.97
(302打78安12本43点1盗 率.258)
4福田周平 36.24
(260打67安0本24点13盗 率.258)
5安達了一 35.35
(266打77安2本23点15盗 率.289)
6モヤ 27.44
(164打45安12本38点0盗 率.274)
7伏見寅威 20.85
(189打49安6本23点0盗 率.259)
8若月健矢 19.48
(192打46安3本19点2盗 率.240)
9ロドリゲス 19.46
(193打42安6本25点1盗 率.218)
10大城滉二 15.50
(251打52安1本14点7盗 率.207)

 今季の吉田正尚はパ・リーグではソフトバンクの柳田悠岐に次ぐ活躍で、初の首位打者も獲得したが、オリックスにはこれに続く打者がいなかった。相手投手のマークは吉田正に集中し、リーグ最多の17敬遠を記録している。

 本来であればMLB通算282本塁打の大物外国人、アダム・ジョーンズが吉田正と強力タッグを組むはずだったが、時折大当たりは見せるものの集中力がない打席も多く、期待外れに終わった。

 外国人ではむしろスティーブン・モヤに期待したい。2019年開幕後に中日から金銭トレードでやってきた選手だが、今季は9月以降スタメンに定着し、勝負強い打撃を見せていた。当たりだすと手が付けられない印象がある。

 2010年の本塁打王、T−岡田は長い低迷が続いていたが、2020年は故障も癒えて3年ぶりに規定打席に到達。しかし左投手に.200と弱く、信頼を勝ち得るには至らなかった。

 今、打線に欲しいのは「若手の中軸打者」だ。

 吉田正の前後を固めるような若手が出てくれば、吉田へのプレッシャーも軽減される。前述の杉本、大下をはじめ、頓宮裕真、中川圭太など候補はいるのだ。ここから一本立ちする選手が欲しいところだ。

 なお、佐野皓大は投手から外野手に転向、昨年は20盗塁4盗塁死と抜群の足を見せた。周東佑京ばりの「切り込み隊長」に成長すれば、これもオリックスの売りになるだろう。

先発陣はリーグ上位クラス、救援陣は?

 一方で先発投手陣は、すでに現段階でリーグでも上位ではないだろうか。

<主要な先発投手陣の成績>
山本由伸 18試8勝4敗126.2回 率2.20
田嶋大樹 20試4勝6敗122.1回 率4.05
アルバース 16試4勝8敗89回 率3.94
山崎福也 15試5勝5敗84回 率4.50
山岡泰輔 12試4勝5敗69.1回 率2.60
張奕 13試2勝4敗48回 率4.31
榊原翼 9試1勝4敗43.1回 率5.19

 規定投球回数以上が2人、80イニング以上が4人。勝ち星こそ上がっていないが、先発投手陣はAクラスだろう。

 山本由伸は昨年、リーグ4位の126.2回を投げたが、投手の酷使度を示すPAP(Pitcher Abuse Point)は50276、黄信号とされる10万の半分の数値だった。肩肘の負担はそれほど大きくなかったと言えよう。

 山本由伸は来季23歳、田嶋は25歳、山崎は29歳、山岡は26歳と日本人先発は全員が若く、伸びしろがあるのも好材料だ。陽岱鋼のいとこの張奕は2019年のプレミア12で、台湾のエースとして活躍しており。彼にも期待できる。打線とうまくかみ合えば、十分に戦えるだろう。

 逆に救援陣は問題ありか。

<主要な救援投手の成績>
ディクソン 39試0勝4敗16SV 5HD 35.2回 率3.28
漆原大晟 22試0勝0敗2SV 5HD 23.2回 率3.42
鈴木優 13試1勝3敗1SV 2HD 38.2回 率6.52
吉田一将 23試1勝1敗1SV 0HD 35.1回 率4.08
ヒギンス 41試3勝3敗0SV 19HD 41.1回 率2.40
山田修義 48試4勝5敗0SV 18HD 39.1回 率3.89
比嘉幹貴 20試0勝0敗0SV 9HD 12.2回 率0.71
吉田凌 35試2勝2敗0SV 7HD 29回 率2.17

 ここ2年、ディクソンがクローザーを務めたが、ゆったりとしたマウンドさばきは先発のものであり、どうにもすわりが悪い印象だった。

ディクソン先発でクローザーをどうする?

 中嶋監督はディクソンを先発で起用する意向のようだ。これによりローテーションは強化されるだろうが、クローザーはイチから探すことになる。ベテランの比嘉をクローザーに回すのは難しそうだが、昨年の新人、漆原大晟は勢いのある速球を投げる。吉田凌にも期待が持てそうだ。

 実績十分の増井浩俊も含めて、クローザーの固定が急務になるはずだ。

 オリックスは2014年にCSに出場して以来、ポストシーズンとは無縁だ。日本シリーズ出場はイチローがいた1996年まで遡る。負けることに慣れてしまった印象が強い。

 中嶋聡監督にとって、最大の敵は「負け癖」ではないだろうか。それを払しょくできるか、興味深く見守りたい。

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文=広尾晃

photograph by JIJI PRESS