1月6日、2020年度のJRA賞が発表され、アーモンドアイが年度代表馬に選出された。

 2019年の有馬記念では9着と思わぬ大敗となったアーモンドアイ。ドバイターフと天皇賞・秋と、GIを2勝しながらもグランプリで敗れた事でJRA賞は何一つ手に出来ずに終わってしまった。

 巻き返しを誓い、昨年の始動戦に選んだのはドバイターフ。連覇を狙い中東に乗り込んだが、ここで思わぬアクシデントに遭遇する。折からのコロナ禍により1週間を切った時点で突然、ドバイ国際レースの開催が中止(発表は1年後に延期)となってしまったのだ。

 これによりドバイまで行きながら競馬には使えず帰国したアーモンドアイは、改めて日本で立て直す。その1戦に選ばれたのがヴィクトリアマイル(GI)だった。

芝GI8勝でルメールが流した喜びの涙

 ここで彼女は驚きのパフォーマンスを披露した。結果的に無駄になったUAE往復など感じさせない走りで2着につけた差は実に4馬身。先行策から直線だけでアッという間に突き放し快勝。これが彼女にとって芝GI通算7勝目。ディープインパクトやシンボリルドルフらと並ぶJRAタイ記録となった。

ヴィクトリアマイル

 有馬記念で負けた時には「年齢的な衰え」を説く専門家もいた。そんな雑音を封じる復活劇を演じたアーモンドアイだが、続く安田記念(GI)では1つ年下の新快足女王に敗北を喫した。スタートで後手を踏んだアーモンドアイは最後の直線で良く追い上げたもののゴールラインではその2馬身半前にグランアレグリアがいた。残念ながら2着に敗れたのだが、結果的に彼女にとってこれが昨年の唯一の敗戦となった。

安田記念

 一息入れ、秋初戦となった天皇賞・秋(GI)では天皇賞・春の覇者フィエールマンや、宝塚記念の優勝馬でのちに有馬記念も制するクロノジェネシスらを完封し、同レースの連覇を達成。同時にJRA新記録となる芝GI8勝目をマークした。これには冷静で知られる主戦のクリストフ・ルメール騎手が珍しく感情をあらわにした。人目もはばからず喜びの涙を流したのだ。

「GI新記録というのは自分で考えていた以上にプレッシャーになっていたようです。達成出来た事で、それに気付きました。自然と涙が出てきたのは、プレッシャーから解放された証だと思います」

 勝利したGI全てでコンビを組んで来たルメール騎手はそう語った。

ジャパンカップは3強対決ながら1頭が図抜けていた

 続く一戦はアーモンドアイにとって現役最後のレース、ジャパンC(GI)となった。ラストランという事で、ルメール騎手は前走の天皇賞・秋同様のプレッシャーを感じているかと思いきや、全く違った。

「最後だから楽しんで乗ろうと思っていました。プレッシャーはありませんでした」

 相手はこの年、無敗で牡牝の3冠レースを制していたコントレイルとデアリングタクト。アーモンドアイを含め3冠3頭による対決は“3強による史上最強の1戦”とも言われた。実際、人気は3頭に集中した。アーモンドアイが2.2倍で1番人気、コントレイルが2.8倍の2番人気でデアリングタクトは3.7倍の3番人気。4番人気のグローリーヴェイズの単勝オッズが17.2倍だからいかに3頭が抜けた下馬評だったかが分かる。

 結果は上位3頭が人気通りの順番でゴールした。アーモンドアイが優勝し、コントレイルが2着、デアリングタクトが3着だったのだ。

ジャパンカップ

 しかし、内容的には3強での決着というより、アーモンドアイ1頭が抜けた存在というべきレースだった。先行策から早目に抜け出すとゆうゆうとゴールに飛び込んだ。コントレイルとデアリングタクトはまだ3歳であり、もっと成長が見込める今年は更なる活躍を期待したいが、このジャパンCの時点では残念ながら完成度でまだ差があったと言わざるをえないだろう。ルメール騎手の弁にも、同様の評価がうかがえた。

「アーモンドアイは経験値が違いました。彼女が力を出し切ってくれれば大丈夫だと思っていたので、僕も楽しんで乗る事が出来ました」

コントレイルやグランアレグリアにも票が入ったが

 これで昨年のアーモンドアイはGIばかりに走り4戦3勝2着1回という成績を残した。こうした結果を受け、彼女が年度代表馬に選出されたのは実に妥当だったと思う。また、この女王にこそ敗れたものの、今後の競馬界を引っ張ってくれると思える3冠馬、コントレイルに票が入ったのも頷ける。更にはグランアレグリアにも2票入ったが、これもアーモンドアイをねじ伏せた事実を思えば決して奇をてらった投票ではないだろう。ただ、やはり同じGI3勝とはいえ、GIの中でも格の高い天皇賞とジャパンCを制したアーモンドアイに票が流れたのは仕方のないところではないだろうか。

コントレイル ジャパンカップ

最優秀3歳馬部門はいずれも満票で選出

 ちなみに最優秀3歳馬部門はコントレイルとデアリングタクトがいずれも満票で選出された。共に無敗の3冠馬。当然の結果だろう。両頭共に古馬となった今年は世代の壁を越えて戦う事になるが、3冠での勝ちっぷりやジャパンCでのパフォーマンスを見る限り、大きくブレーキがかかる事はなさそうだ。

 更には春秋のグランプリを圧勝して特別賞に選ばれたクロノジェネシスもいれば、今年は春から2000メートル路線に参戦するかと噂されるグランアレグリアもいる。アーモンドアイこそターフを去ったが、スター性の高い馬達がまだまだいる競馬界がこれからどう転がっていくのか楽しみは尽きない。あとは1日も早くコロナ禍が収まり、ファンの皆様と共に競馬場で歴史的瞬間を目撃出来る日が来る事を願う。昨年度のJRA賞の結果の先に、そんな明るい未来が待っている事を期待したい。

アーモンドアイ ジャパンカップ

文=平松さとし

photograph by Satoshi Hiramatsu