もともと「打ってナンボ」のチームだっただけに、バットが湿っては勝てない。2020年の西武は打線がヘコんだことがすべてだった。

<2020年チーム成績>
 58勝58敗4分 勝率.500(3位)
 打率.238(5位)本塁打107本(3位)459打点(4位)85盗塁(4位)
 防御率4.28(6位)35セーブ(1位)90ホールド(3位)106被本塁打(4位)

 <ここ3年間のパ・リーグRC(Runs Created/打者の総合指標)5傑>
 〇2018年
 1秋山翔吾(西)127.53
(603打195安24本82点15盗 率.323)

 2柳田悠岐(ソ)126.52
(475打167安36本102点21盗 率.352)
 3山川穂高(西)125.21
(541打152安47本124点0盗 率.281)

 4吉田正尚(オ)112.46
(514打165安26本86点3盗 率.321)
 5浅村栄斗(西)108.30
(565打175安32本127点4盗 率.310)

 〇2019年
 1吉田正尚(オ)114.45
(521打168安29本85点5盗 率.322)
 2秋山翔吾(西)109.54
(590打179安20本62点12盗 率.303)
 3森友哉(西)108.06
(492打162安23本105点3盗 率.329)
 4山川穂高(西)104.50
(524打134安43本120点1盗 率.256)

 5浅村栄斗(楽)100.63
(529打139安33本92点1盗 率.263)

 〇2020年
 1柳田悠岐(ソ)116.04
(427打146安29本86点7盗 率.342)
 2吉田正尚(オ)95.75
(408打143安14本64点8盗 率.351)
 3浅村栄斗(楽)95.59
(432打121安32本104点1盗 率.280)
 4近藤健介(日)87.23
(371打126安5本60点4盗 率.340)
 5西川遥輝(日)86.41
(422打129安5本39点42盗 率.306)

森に山川、さらには外崎に中村がいた

 2018、2019年とパ・リーグのRC上位5傑には西武の選手が3人含まれていた。

 2019年には浅村栄斗が楽天に移籍したが、秋山、森、山川が2〜4位を占め、さらに外崎修汰が6位(95.34)、中村剛也が10位(90.61)にいた。中心選手が抜ければ替りの選手が後釜に座って活躍する。そしてベテランの中村も久々に復活。好循環になっていたのだ。

 しかし2020年の西武の最高は、新外国人スパンジェンバーグの65.77(9位)。試合数が少なくRCの数値は下がっているにしても、大山脈のような西武打線は一気に崩れ去った。

 2020年の西武打線をあらためて見てみよう。RC順に並べている。

 1 スパンジェンバーグ 65.77
(407打109安15本57点12盗 率.268)
 2 栗山巧 57.81
(372打101安12本67点0盗 率.272)
 3 外崎修汰 55.48
(433打107安8本43点21盗 率.247)
 4 山川穂高 55.25
(322打66安24本73点0盗 率.205)
 5 源田壮亮 51.84
(455打123安1本21点18盗 率.270)
 6 森友哉 45.30
(358打90安9本38点4盗 率.251)
 7 木村文紀 29.82
(264打61安8本33点5盗 率.231)
 8 中村剛也 29.43
(258打55安9本31点0盗 率.213)
 9 金子侑司 28.81
(301打75安3本21点14盗 率.249)
 10 メヒア 25.72
(237打49安11本33点0盗 率.207)

 西武が誇る山川穂高、森友哉、中村剛也、外崎修汰の強力打線が軒並み成績を急落させた。2019年の4人の本塁打数は合わせて122本、これが2020年は50本にまで減った。そんな中では今年38歳になる栗山巧が渋い働きをして打線を支えたのは救いではあったが、打線の迫力は半減した。

 しかし本当に痛かったのは、彼ら長距離打者の不振ではない。

 それ以上に秋山翔吾のMLB移籍が大きかった。

 秋山は2015年から2019年までの5年間で最多安打4回、得点王3回、出塁率は4割前後。リードオフマン、そして中軸打者として八面六臂の活躍をしていたのだ。秋山の四球と安打を足した出塁数は、2017年:257、2018年:272、2019年:257と、いずれもパ・リーグ1位。圧倒的な出塁数でチームに貢献したのだ。

 チームの出塁率は2019年の.344(1位)から2020年は.315(6位)と急落。秋山の退団によって打線のつながりがなくなり、得点能力も大きく減退したのだ。

 ただし2020年の山川穂高のBABIP(本塁打を除く安打率)は.210。BABIPは選手の実力に関わらず3割前後になるとされる。この数値が低いということは「昨年はツキがなかった」ということになる。体調が万全なら今季は、本来の力を発揮するのではないか。

 また、森友哉も近年、打率が3割台→2割台→3割台→2割台と繰り返している。そのパターンでいえば2021年は「表年」だ。

 とはいえ西武は、秋山に代わるリードオフマンを早急に決定する必要があるだろう。今のところ金子侑司が有力だが、筆者は二軍で.384という出塁率を記録し、今年25歳となる山田遥楓に期待したい。

先発投手陣は高橋光成が規定投球回到達

 投手陣はどうか。菊池雄星がMLBに移籍して以降、エースと呼ぶべき投手は出てきていない。2020年、30イニング以上投げた先発投手。今井、浜屋は先発の成績のみ。

 高橋光成 20試8勝8敗120.1回 率3.74
 ニール 21試6勝8敗112回 率5.22
 松本航 20試6勝7敗103回 率4.37
 今井達也 11試2勝4敗51回 率6.53
 浜屋将太 8試3勝3敗42回 率4.07
 與座海人 8試2勝4敗38回 率5.45
 本田圭佑 7試1勝4敗35.1回 率4.08

 2013年夏の甲子園の優勝投手の高橋光成が初めて規定投球回数に達して8勝を挙げたが、それ以外の先発投手の防御率は良くて4点台。信頼に足る先発陣とは言えなかった。

 ただ西武が今後も強力打線を売り物に戦っていくとすれば、必要なのは際立った投球をする大エースではなく、そこそこ失点をしながらもイニングを消化するイニングイーターだろう。必要なのは完投、完封ではなくQS(先発で6回以上を投げて自責点3以下、先発の最低限の責任)なのだ。

 2018年は多和田真三郎が16勝5敗で最多勝を獲得したが、防御率はリーグ8位の3.81、援護率が6.95もあった。4点取られても味方打線が7点近くとって白星につなげてくれたのだ。

 多和田のようなタイプの先発が3〜4枚いれば西武先発投手陣は格好がつくのではないか。多和田は頻脈性不整脈という難病で育成契約となったが、彼の復帰も待たれるところだ。

 これまで西武は先発陣の補強には積極的ではなかったが、日本ハムの左腕、吉川光夫の移籍が決まった。2012年にMVPを取った実力者だが、どこまで通用するか。今年41歳になる松坂大輔も2021年の契約が決まったが、戦力としてみるのは少々厳しいだろう。むしろ2020年から西武の一員となった左腕・内海哲也が、円熟の投球を見せる可能性はある。

 <西武の先発、救援別の投手成績>
 先発 32勝50敗 防御率4.87
 救援 26勝8敗35セーブ90ホールド 防御率3.48

 この数字でもわかるように、西武がAクラス、3位に滑り込めたのは救援陣が優秀だったからだ。

 <救援投手の成績 ※平井は救援の成績だけ>
 平良海馬 54試1勝0敗1SV 33HD 53回 率1.87
 ギャレット 49試3勝2敗0SV 16HD 49.1回 率3.10
 宮川哲 49試2勝1敗0SV 13HD 44.2回 率3.83
 増田達至 48試5勝0敗33SV 1HD 49回 率2.02
 森脇亮介 47試7勝1敗1SV 16HD 46.2回 率1.35
 小川龍也 38試2勝1敗0SV 3HD 25.2回 率2.10
 平井克典 37試4勝2敗0SV 7HD 43回 率3.14
 田村伊知郎 31試0勝0敗0SV 0HD 41回 率3.95

 平良海馬が彗星のように登場して新人王を獲得。100マイルの速球は魅力的だ。開幕から27連続アウトを取って「ノーヒットノーラン」と話題になったが、その後もセットアッパーとして活躍。さらにギャレット、森脇もセットアッパーとして活躍。中日から2018年に移籍した左腕小川もワンポイントで渋い働きを見せた。

 こうした投手がつないで、最後は増田達至が例年と変わらず安定感のある投球で33セーブを挙げた。この救援陣が、シーズンを通して機能したことで、打線が弱体化した西武は、辛うじてAクラス入りを果たしたのだ。

 強力打線が先制し、先発投手がQSを記録してセットアッパーにつなぎ、クローザーで試合を締める。この西武の勝ちパターンはしばらく変わらないのだろう。

 それはドラフトでの選手獲得でも見て取れる。

 西武は2020年のドラフトで、桐蔭横浜大学の内野手、渡部健人をドラフト1位で指名した。この選手は、極めて“西武的”だと言える。

 渡部健人 176cm112kg
 中村剛也 175cm102kg
 山川穂高 176cm103kg

 3人ともに右投げ右打ちの内野手。中村と山川は打席の構えは区別がつかないほどによく似ているが、野村克也ばりの柔らかな打撃を見せる中村、豪快なフルスイングの山川穂高に続いて「おかわり3世」が個性的で豪快な打撃を見せれば、西武打線は再び魅力を取り戻すだろう。

 筆者は「打ってナンボ」という西武の豪快なコンセプトは非常に魅力的だと思う。アンバランスであっても、この個性が維持できるのであれば、パ・リーグのペナントレースは面白くなるだろう。

文=広尾晃

photograph by Nanae Suzuki