ドラフト2位の選手が大成するか否か――実はそこにスカウトの眼力や球団の育成力が試されているのではないだろうか。

 ドラフト1位は「その年のナンバーワン」を指名する球団が少なくない。その評価基準などは球団によって様々ではあるものの、最初に名前を読みあげられる12名はドラフト前からある程度名の通った選手たちで占められる。

 それが2位指名になると一転する。

 しっかりとアマチュア球界の情報を整理していなければ、見聞きしたことのない選手がポツポツと現れるのだ。されど、2位指名である。プロ球団からすれば、数多のアマチュア選手の中から上位で評価をした、ある意味では1位以上に「名より実」と認めた選手なわけである。

 昨年、プロ野球史上2球団目の4年連続日本一を成し遂げたホークスを見れば、そんなドラフト2位の選手たちがチームを支えていることが分かる。柳田悠岐(2010年)に森唯斗(2013年)、日本シリーズMVPに輝くなど飛躍を遂げた栗原陵矢(2014年)や2年前の新人王の高橋礼(2017年)も然りだ。

栗原陵矢 ©Nanae Suzuki 鷹の守護神・森唯斗は2013年ドラフト2位指名でソフトバンク入り ©Nanae Suzuki

ドラフト2位新人は「柳田2世」

 その系譜がまた受け継がれるのか。そんな大器の予感を漂わせる楽しみなドラフト2位新人がまたホークスに入団してきた。

 彼の名は、笹川吉康。

 すでに「柳田2世」と評判高い大型外野手だ。

 球団編成育成本部の永井智浩本部長は自信をのぞかせる。

「1位指名の井上(朋也=花咲徳栄)君はどの球団も高い評価をしていたと思うけど、2位の笹川君に関しては高校生の外野手だし、なにより前年に我々ホークスは外野手を補強したうえであえて指名をした。それくらい高い能力の持ち主。ホークスに入ったら、是非皆さんにも見ていただきたい」

 ホークスは2019年ドラフト1位でJR西日本の佐藤直樹を指名しただけでなく、5位でも慶応大学の柳町達を獲得している(2人はともに外野手)。また、高校生外野手を2位以上で指名したのは2003年ドラフトの城所龍磨以来で、球団がソフトバンクとなって以降は初めてのことだった。

小さい頃はサッカーをしていたが……

 笹川の身長は“本家・柳田”よりも5センチ高い193cm。手足が長いが、顔は小さめ。だから余計に大きく見える。

 左投げ左打ち。胸囲もヒップも100cm。握力は右82kgで、左80kg。背筋力は300kgを記録する。

「細身だけど、パワーには自信があるんです」と笹川本人も胸を張る。

 柳田2世の名に恥じない規格外ルーキーに、球団も「背番号44」を用意した。柳田が入団から4年間つけていた背番号である。

 笹川は神奈川県で生まれ育ち、幼少期はサッカーを楽しんだが、小学校3年生の時に「友達のお父さんに誘われた」のをきっかけに野球を始めた。小学校6年生時にはすでに身長168cmあったという。そこから中学の3年間でさらに20cm伸び、「Y校」の愛称で親しまれている高校球界の伝統校である横浜商業高校に入学した。1年時からベンチ入りを果たすと、投手兼外野手としてチームの主軸となった。

柳田悠岐 ©Hideki Sugiyama

民家の屋根のソーラーパネルを壊してしまって……

「憧れの選手っていないんです。スポーツは陸上競技もバレーボールも得意だけど、見るよりやるタイプ。プロ野球も見なかったので、好きなチームとかファンもない。選手も知らないので、覚えないといけないんですが(苦笑)」

 誰かを見本にしたり名選手の真似をしたりするわけでもなく、基本的に自分の感性のままでプレーを作り上げてきた。リンゴを潰すほどの握力でぎゅっと強く握られたバットから放たれる打球に興味がわかないはずがない。今までで一番飛んだ打球は?と訊ねると、「いっぱいあるんですけど……」と高校通算40本塁打の中から思案した一つを紹介してくれた。

「よく覚えているのは、日大高校のグラウンドでの練習試合で右中間に打ったホームランです。防球ネットがあって、その10mほど奥にも『絶対越えちゃいけない』高さ20mほどのネットがもう一つあるんですけど、それを越えちゃったんです。結局、民家の屋根のソーラーパネルを壊してしまって、学校が入っていた保険で弁償してもらいました」

 そんな驚嘆エピソードに「ほぉほぉ」と頷く報道陣に、笹川はさらにこう続けた。

「普通のホームランじゃつまんないと思うんです。観客の度肝を抜くようなホームランを打ちたいです」

 昨年12月の新入団発表の席上ではボソボソと喋る感じで大人しい性格との印象だったが、囲み取材になると次々と「字になる」逸話を放り込んでくる。取材慣れしてくれば、ファンの興味を惹く言葉も次々と出てきそうだ。プレー以外にも、スターの階段を上っていくには大事な要素となる。

横浜商高時代はピッチャーも務めた。写真は昨夏の神奈川代替大会 ©JIJI PRESS

長距離走は苦手だけど……

 彼にとってルーキーイヤーとなる2021年を迎え、1月10日から始まっている新人合同自主トレでもひと際異彩を放っている。プロで使用するバットは34インチ(約86.4cm)の長尺で重さは910グラム。昨今の球界では800グラム台の軽量バットが好まれるが、怪力自慢はこの新しい相棒を使いこなしていくつもりだ。

 ランニングメニューでは視察する首脳陣の前で後れをとり「長距離走は苦手なんです」とバツが悪そうだったが、「バッティングに自信があるので、そっちを見てもらいたかった。今度はその機会があれば」と負けん気をのぞかせた。体力測定では、メディシンボールを背後に投げる距離を測り、柳田の新人時代を上回る記録もマークしたという。

「将来の目標はトリプルスリーです。打つだけの選手ならたくさんいるけど、走るのも(短距離の)スピードには自信がある。そこも生かしていきたい」

 ホークスの外野手はもう何年も大きな補強ポイントでなかったためか、意外と「柳田2世」と呼ばれる若手が多くなかった。或いは初めて誕生した本格的な「柳田2世」だ。この超有望ドラフト2位を、ホークスがどのように育て上げていくのだろうか。

 また楽しみが増えた。

※追記) 期待たっぷりに書き終えて編集部に入稿した後の1月14日、残念なニュースが飛び込んできた。この日の新人合同自主トレの最中に笹川は左足を痛め、筑後市内の病院にて親指の不全骨折と、中指の軽度の骨挫傷と診断されたとのこと。「球団寮に入寮して3日で体重を1キロ増やすことが出来た」と喜んでいた矢先のアクシデントとなってしまったが、今回に限らずプロ野球人生に山あり谷ありは付き物だ。逆境の時こそ、真価が問われる。目の前の瞬間、瞬間を無駄にすることなく、必ずや這い上がってきてほしい。

文=田尻耕太郎

photograph by Kotaro Tajiri