1月16日、ラスベガスで開催されていた全米選手権でアイスダンスの決勝が行われた。

 4度目の優勝を果たしたのは、マディソン・フベル&ザカリー・ドノヒュー。2位はマディソン・チョック&エバン・ベイツ、3位はケイトリン・ホワイエク&ジャン=ルック・ベイカー。いずれも、多くのアイスダンスメダリストを育ててきたカナダのマリーフランス・デュブリュイユとパトリス・ローゾンのコーチチームの生徒たちである。

 ダイナミックでスピードのある滑りが持ち味のフベル&ドノヒュー、身体の柔らかさを駆使したリフトなどが得意なチョック&ベイツ、アーティスト気質のホワイエク&ベイカーと、それぞれ全く違ったタイプの3チームは、他の組を引き離して抜き出ていた。

「ダイスケ」の名前が出ると目が輝いた

 ズームでの優勝会見では3チームとも、このパンデミックの中で全米選手権が開催されて出場できたことの嬉しさを異口同音に述べた。

 アメリカ人の記者の質問が出尽くしたところを見計らい、高橋大輔と村元哉中の競技演技を見る機会があったのか、もし見たのなら感想を聞かせて欲しいと頼んだ。

 全米選手権の話題から脱線した質問だったので、遠慮しながら聞いたのだが、「ダイスケ・タカハシ」の名前を出したとたん、彼らの目が嬉しそうに輝き、みんなが揃って頷くのがズーム画面からもよく見えた。

「まず最初に言いますが、ダイスケはぼくのお気に入りのスケーターで、ぼくは彼の演技を見ながら成長したんです」と、ザカリー・ドノヒューが口火を切った。

「あの『ワンダフル』な年齢で種目の転向というのは、小さな挑戦ではありません。体の使い方、靴も違うし、ターンやエッジの使い方も違う。リフトを学び、パートナーと一緒に揃って滑らなくてはならない。学ぶことは山ほどあるんです。その勇気だけでも、本当に尊敬します。

 彼はすごい才能の持ち主ですが、ダイスケらしい演技を見せてくれたと思う。彼は楽しんでいるように見えるけれど、ぜひとも続けてこれからも面白いプログラムを見せてくれるのを、楽しみにしています」

「カナの果たした役割は大きい」とフベル

 パートナーのマディソン・フベルがこう続けた。

「私は元々スケートのファンで、ジュニアの試合も見るほど好きなんです。日本のテレビで放映されたものも、映像で良く見ます。ダイスケのアイスダンスへの転向は、好奇心を持って見守っていました。彼は素晴らしいスケーターで、そのことはすでにわかっていたけど、アイスダンスチームになってどのようになるのかわからなかった。

 短期間であれほどパートナーとのコネクションを確立できたのは、カナの果たした役割も大きいと思います。試合でミスもあったけれど、それは誰もが通る道です。彼のようなキャリアを成し遂げた選手が、アイスダンスに情熱を持って転向してくれたのは、とても嬉しいことです。歓迎します」

 次に、マディソン・チョックが口を開いた。

「ダイスケが氷の上に戻ってきてくれたのは、本当に素晴らしいこと。彼は大好きな選手でした。カナは美しいアイスダンサーで、彼にとってこれ以上考えられないほどパーフェクトな素晴らしいパートナーだと思います。

 あと、彼の黄色いパンツがとっても気にいっています(笑)。この美しいパートナーシップはこれから先、もっと育っていくことを疑っていません。素晴らしい可能性を秘めた彼らの、これからの演技を見るのが待ち遠しいです」

おざなりではない熱意のあるコメント

「ジャン=ルックと私は更衣室で、一緒にNHK杯の映像を見ていました」

 そう語り始めたのは、ケイトリン・ホワイエクである。

「男子としてあれほどの歴史を築いたダイスケは、私のお気に入りの選手の1人でした。彼の演技を見て彼のモーホークやロッカーターンなど、うまいなと感心していました。違う種目であれほど名をなした選手が、アイスダンスに来てくれたのは素晴らしいこと。アイスダンスにはジャンプなどはないけど、目に見えない何か特別なものがあるんです。彼の転向を、両手を広げて歓迎しています」

 どの選手も口を揃えるのは、高橋大輔がお気に入りの選手だった、ということである。元々スケーターというのは全体的にマナーが良く、育ちの良さを感じさせる行儀のよいコメントが多いが、彼らの口調には表面的ではない熱意が感じられた。

次に行くために必要なものは?

「彼が次のレベルに行くために、どんなことが必要と感じるか、男性パートナーの意見を聞かせてくれますか」と補充の質問をすると、フベルが「ワンポイントアドバイス? それは、あまりたくさんはあげられないわ。だって競争相手ですもの」と冗談っぽく言うと、爆笑の渦になった。たとえ冗談半分でも、二度世界選手権の表彰台に上がった彼女からライバル視されるというのは、彼らにとって名誉なことに間違いない。

 ドノヒューがマイクを取って、こう語った。

「自分も途中からアイスダンスに転向したのですが、もっとも大変だったのは、常にパートナーのことを優先して考えなくてはならないこと。ぼくは頑固なのでそれに慣れるのは、本当に大変だった。でも結局そのことが、パートナーシップの向上とスケーティング技術への向上につながっていきました。ダイスケも、そしてカナも、黄金の心(heart of gold/思いやりのある心)を持っているから、きっとできると思う」

 エバン・ベイツがこう補足した。

「彼らはまだ2度しか大会に出ていないけれど、特に最初のうちは進歩が明確にわかるので、すごく楽しいんですよ。彼らはすでにたっぷり楽しんでいるようですが、良く味わって楽しんで欲しい。

 ぼくはダイスケと同じ『素晴らしい』年齢層(笑)なので、彼と少しだけ一緒に時間を過ごしたこともありますが、彼はとても楽しい人。彼の性格の良さが、氷の上にも良く出ている。コーチの選択も良かったと思います」

 明るい表情でそう言葉を結んだ。高橋大輔も、村元哉中も、どれほどスケート仲間たちから慕われているのかが良くわかったアイスダンス会見の締めくくりとなった。

文=田村明子

photograph by Koki Nagahama-ISU via Getty Images