2月1日、プロ野球12球団が一斉にキャンプインした。新型コロナウイルス禍で無観客での練習となる中、なかなか報じられない二軍キャンプの様子について、複数球団にわたってお送りする。

 2月になると筆者はキャンプ地をほぼくまなく回っている。特に二軍キャンプは観客こそ少ないものの、いろいろ楽しいものではある。果たして、新型コロナ禍の今年はどうなのか? いくつかの球団の二軍キャンプのレポートをしたい。

 事前申請の段階で各球団、取材日直前のPCR検査を求めていた。また細かな取材ルールの書類を送信してきた球団もあった。

 2月1日、初日は宮崎県西都市のヤクルト二軍キャンプである。受付で応対してくれたのは、去年まで中継ぎで投げていた中澤雅人マネージャーだ。こういう出会いも魅力ではある。1年目ということで表情こそやや硬いが、社会人野球出身だから名刺交換はスムースだ。

 以前訪れた時には西都原運動公園野球場は、ずいぶん古い球場だったが、今年の春季キャンプに合わせて観客席を改装し、外野の芝生も張り替えていた。小ぶりながらも美しい球場に生まれ変わったのだが、残念なことにお客はいない。

 今年は、事前申請したカメラマンを除き、取材陣もグラウンドレベルに立ち入ることはできない。観客席からキャンプを見ることになる。声をかけてコメントを取ることもできない。

池山監督がお神酒を撒いていた

 練習開始前に、グラウンドに池山隆寛二軍監督が現れた。

 初日に当たりグラウンドにお神酒を撒き、清めの塩を振るのだ。マウンドに、各ベースに、池山監督は一升瓶の清酒を入念に撒いていた。「選手が怪我をしないように」「頑張れるように」、そして今年はそれに加えて「コロナに感染しないように」だろうか? 切実な思いがあると思う。

 キャンプ初日はユニフォーム姿の写真撮影があるから、少し始動が遅れがちだ。球場に隣接した陸上競技場でストレッチ、アップ、ランニング。

 宮崎県は南国と言われるが、寒いときは寒い。吹雪の中でのキャンプもあるが、この日は最高気温20度、天候に恵まれ、選手の表情も緩んでいる。

 まさにこの瞬間にプロとして第一歩を踏み出す選手がいる。昨年のドラフトで入団した選手たちだ。

 今年はドラ1の慶応大の木澤尚文、2位の東北福祉大の山野太一は一軍始動だから、新人の一番上は3位、星稜高校の捕手、内山壮真になる。背番号は「33」。いい番号をもらっている。172cmとひときわ小さいが、実家で体を動かしてきたのだろう。先輩捕手に交じって、動きはきびきびとしている。

春季キャンプがゆっくりと進行するワケ

 春季キャンプはゆっくり進行する。特に宮崎では気温が低い中で急に運動すると故障のリスクが高まる。インターバルを十分に取るのだ。

 野手組はグラウンドに移動して、キャッチボール、ペッパー。ボールを手にすると選手は急に元気になる。当たり前の話だが、野球が好きなのだ。

「いいね! 気品あふれる守備だね!」

 ベースランニングを経て、内野ノック。この日は捕手4人が一組になって、内野ノックを受けた。ひときわ大きな声を上げてノックを受けていたのが、嶋基宏。今年は二軍スタート。捕手組の先頭に立って、ゴロを取っている。

 今年は元の相棒の田中将大がNPBに復帰した。嶋はどんな気持ちなのか、聞いてみたいが、声をかけることはかなわない。

「いいね! 気品あふれる守備だね!」

 嶋の声に内野陣は沸く。一緒に守っていた新人の内山は「プロってこうなんだ」と思ったに違いない。

東大卒トライアウト経由の宮台がブルペン入り

 ブルペンではいい音が響いている。始動は早い。今年は取材陣はブルペンに入ることもできない。横の金網越しに投手を見ることになる。

 昨年日本ハムを自由契約になり、トライアウトを経てヤクルト入団が決まった宮台康平が投げている。恩師である東大の浜田一志前監督は宮台について「天が与えたもうた才能」と言った。故障さえなければ「東大卒」の肩書抜きにして、一線級の活躍ができた投手といわれる。

 まなじり決して投げる宮台は、宮崎の地から沖縄の一軍首脳陣にアピールしているのだろう。

 バッティング練習では、2015年の首位打者、川端慎吾が早くもケージに入った。いい当たりを飛ばすというよりは、投球の軌道をきっちり見極めている印象。丁寧にバットを振っていた。

池山監督がわざわざスタンドまで来てくれた

 そしてありがたいことに、池山隆寛二軍監督に話を聞くことができた。普通はネット裏の一室で話を聞くのだが、今年はメディアは室内に入れない。わざわざスタンドまでご足労いただいた。ICレコーダーをどこに置こうか迷っていると、「僕が持とうか?」と池山監督。誠に恐縮する。

「2月1日にユニフォームを着れることはうれしいですね。現役の時からそうですけど、ユニフォームを着ると気持ちも体もぎゅっとしまってきますんで。何とも言えない気持ちになります」

――二軍春季キャンプで一番大事なことは?

「ルーキーからベテランまで、数多くの選手がいるんですけど、立場も違います。ルーキーは違う環境になって張り切りすぎることもあるので、見極めないといけません。

 二軍は一軍のバックアップですから、常に調子のいい選手を上にあげるように推薦しますが、今は二軍の練習風景は映像にして、高津臣吾監督はじめ首脳陣に見ていただいてるので、早く状態を伝えることができるようになっています」

――嶋基宏選手や川端慎吾選手など二軍スタートのベテランも元気そうでしたが?

「僕もベテランになってから二軍スタートになったことがあります。その時の僕の気持ちと彼らの気持ちを比較しながら接しています。無理なく、張り切りすぎず、怪我なくというところですね。ルーキーの場合は『緊張』という2文字が先走ると思うので、しばらくは静観ですね」

――今年はお客がいないキャンプになりましたが……。

「西都の球場は1月30日に落成式を経たばかりで、せっかくきれいな球場になったのに、もったいないですね。キャンプは選手との距離が縮まる絶好のチャンスです。シーズン中は結果に追われて神経ピリピリしていますが、キャンプは比較的リラックスしていますんで、そういうところを見ていただきたかった。僕だけじゃなく選手も残念に思っていると思います」

 55歳になったが、池山監督は「ブンブン丸」のやんちゃな表情が随所に残っている。この元気な監督のもと、2021年がスタートしたのだ。

「球春」がそのまま無事に「開幕」につながることを祈りたい。

文=広尾晃

photograph by Kou Hiroo