ポルトガルリーグのレベルは、欧州5大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス)のすぐ下。過去、ここからFWクリスティアーノ・ロナウド(スポルティング→レアル・マドリーなど)、FWジョアン・フェリックス(ベンフィカ→アトレティコ・マドリー)らが世界トップクラブへ羽ばたいており、才能豊かで野心的な選手がひしめく。

“スターへの登竜門”とも呼べるこのリーグで、現在、5人の日本人選手が奮闘している。

 このうち、特筆すべき活躍をしているのがボランチの守田英正(25)だろう。

 対人守備が強く、キープ力があり、優れた状況判断から精度の高いパスを繰り出す。2018年、流通経済大から川崎フロンターレへ入団してたちまちレギュラー。2018年のJリーグ優勝、昨年のJリーグと天皇杯の二冠獲得に貢献した。昨年、Jリーグのベスト11にも選ばれた日本屈指の守備的MFで、2021年1月7日、サンタクララへ移籍した。

初出場初得点に監督も「素晴らしいプレー」

 サンタクララは、ポルトガル本土の約1000km西方に浮かぶアゾレス諸島(人口約24万人)に本拠を置く小クラブだ。長く2部に留まっていたが、2017-18シーズンに1部昇格を決めて、昨年は9位(18チーム中)だった。

 守田は、1月25日のリーグ第15節リオアベ戦(アウェー)に初先発。中盤で幅広く動いて守備のタスクをこなすと、1−1の後半44分、猛然と攻め上がる。右サイドからの浮き球のパスを胸で止めると、その落ち際を右足で強烈なシュート。これがファーサイドに突き刺さり、決勝点となった。チームメイトから手荒い祝福を受け、ダニエル・ラモス監督から「素晴らしいプレーをしてくれた」と賞賛された。

 欧州クラブリーグへ移籍して初出場でいきなり得点をあげた日本人選手には、MF中田英寿(湘南→ペルージャ。1998年ユベントス戦で2得点)、平山相太(筑波大→ヘラクレス=オランダ。2005年、デンハーグ戦)、FW三好康児(横浜FM→アントワープ。2019年、アンデルレヒト戦)らがいるが、守備的なポジションの選手としては初めてだった。

 その4日後のポルトガル杯ブラガ戦(アウェー)でも先発。2点リードされた後半アディショナル・タイムにやはり攻め上がり、右から絶妙のパスを送ってチーム唯一の得点をアシストした。

7試合すべてでフル出場している

 ボランチでありながら、状況に応じて攻撃参加する大胆さと状況判断の確かさが光った。この2試合で監督とチームメイトの信頼を勝ち取り、以後、すべての試合(リーグ戦6試合、カップ戦1試合)にフル出場している。

 本人は、自身のSNSで「毎試合、毎日が勉強になる。言語、移動の量や食事、日程、スタイル、ジャッジ、芝の質、環境、何から何まで全てが違う。素晴らしい」、「楽しみながら日々努力してここから頑張ります」とコメント。環境の激変に戸惑いながらも、困難を乗り越えて成功をつかもうという強い気持ちが感じられる。

 2018年9月以降、日本代表にも招集されて3試合に出場しているが、まだ常連ではない。

 引き続き試合に出続け、高い個人能力を持つ選手との対戦を通してさらに成長すれば、さらなるステップアップが可能となる。日本代表でも貴重な戦力となるだろう。

ヴェルディ出身21歳藤本も頑張っている

 21歳のMF藤本寛也も、頑張っている。東京ヴェルディの下部組織出身でキープ力があり、中盤から多彩なパスを配給する。年代別日本代表の常連だった。

 2018年にトップチーム(J2)でデビューすると、2年半ほどの間に48試合に出場して4得点。昨年8月、ジウ・ビセンテへ期限付き移籍した(今年5月末まで)。

 これまでのところ、3トップの右サイドで起用されることが多い。徐々に出場機会を増やし、2月5日のリーグ戦でスタメン出場。9日の強豪スポルティング戦でも先発すると、左サイドからのクロスを左足ボレーで鮮やかに叩き込んで初得点をあげた。

 この試合では他にも惜しいミドルシュートを放っており、地元メディアから「スポルティングにとって最大の脅威だった」と高く評価された。直近の4試合ですべて先発出場しており、今後が楽しみだ。

マンC→スコットランド→ポルトガルの食野は?

 食野亮太郎は、小柄だがスピードとテクニックを生かしたドリブルが得意な22歳のウイングで、決定力も高い。五輪世代で、昨年1月のアジアU-23選手権に出場している。

 2019年8月にガンバ大阪からマンチェスター・シティへ移籍したが、すぐにハーツ(スコットランド)へ貸し出されてリーグ20試合で3得点。昨年9月、今度はリオアベに貸し出された(今年6月末まで)。

 9月20日のリーグ第1節トンデラ戦の終盤に初出場すると、いきなり初ゴール。途中出場が多いが、13試合で3得点をあげている。

 しかし2月1日にポルトガルU-20代表の精鋭が加入すると、以後、3試合連続でベンチに据え置かれた。21日のリーグ戦で後半途中から出場したが、大きなインパクトは残せなかった。

 リオアベは昨季リーグ5位で、今季は欧州リーグ予選にも出場した強豪だ。それだけに、レギュラー争いのレベルが高い。食野にとっては厳しい環境だが、ここで結果を出してポジションを獲得できれば、将来の日本代表入りが見えてくる。

安西は安定したプレー、中村は現状控えGK

 ポルティモネンセには、2019年7月からSB安西幸輝(25、前鹿島)が、今年1月からGK中村航輔(25、前柏)が在籍する。

 安西はほぼレギュラーで、両サイドをこなせるSBとして重宝されている。しかし、中村は当面、第3GK扱い。リーグ戦で6試合にベンチ入りしたが、まだ出場機会がない。

 置かれた状況はそれぞれ異なるが、いずれも日本のA代表もしくは年齢別代表の経歴の持ち主で、伸びしろがたっぷりあるのは間違いない。

 現在、ポルトガルリーグは日程の半分を終えたところ。ここからが、チームにとっても選手にとっても勝負所となる。

 守田が語るように「毎試合、毎日」、精進を重ねての急成長を期待したい。

気になる中島翔哉、そして本田圭佑

 なお、2019年7月に名門ポルトと5年契約を結んだFW中島翔哉(26)は昨季に続いて今季もポジションをつかめず、1月16日、アルアイン(UAE)へ期限付き移籍した(今年6月末まで)。セルジオ・コンセイソン監督は「中島にはかなりチャンスを与えたのだが、結局、チームに馴染めなかった」と漏らした。

ポルト時代の中島©Getty Images

 ポルトは欧州チャンピオンズ・リーグでグループステージを突破し、ラウンド16の第1レグでユベントスに先勝。リーグでも2位につけている。仮に中島がアルアインで大活躍したとしても、今後、ポルトに居場所があるかどうか。

 最後に、本田圭佑について。昨年末にボタフォゴ(ブラジル)を退団し、2月初めに自らポルティモネンセ入団を発表した。しかし、冬の移籍期限までに契約を完了しなかったためリーグへの選手登録が認められず、契約解除を余儀なくされた。

 このような事態を招いた最大の理由はクラブ(と本人サイド)のリーグ規約確認のミスだろうが、本人が納得できるオファーが来なかったため期限ギリギリまで契約を躊躇したこともその一因のようだ。

 昨年のボタフォゴでのプレー内容と「所属クラブなし」という状況を勘案すると、「オーバーエージ枠での東京五輪出場」という目標を達成するのは極めて難しいと思わざるをえない。

文=沢田啓明

photograph by Global Imagens/AFLO