雑誌「Sports Graphic Number」と「NumberWeb」に掲載された記事のなかから、トップアスリートや指導者たちの「名言」を紹介します。今回は日韓戦にまつわる4つの言葉です。

<名言1>
今日は韓国が完全に支配した。しっかり分析する。失望はわかる。私も残念だ。
(ヴァイッド・ハリルホジッチ/NumberWeb 2017年12月20日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/829531

◇解説◇
 日韓戦の敗北が解任の引き金になった直近の代表例といえば、ハリルホジッチ監督が臨んだ2017年のE-1サッカー選手権だろう。

2017年のE-1選手権©Getty Images

 国内組で臨んだ大会でなおかつJリーグのシーズン終了直後という難しいタイミングだったとはいえ、日本は韓国に1−4と大敗を喫した。優勝のかかった中で、ライバル相手の完敗。この一戦はハリルホジッチ監督の求心力が低下するきっかけとも言われているが、誰よりもこの結果に落胆したのは――縦に速いサッカーを志向しながらも、それを実現できなかった指揮官自身だったのかもしれない。

カズが魂を込めた“あの一撃”

<名言2>
ところでさあ、ロマーリオっぽくなかった。あのシュート?
(三浦知良/Number327号 1993年11月5日発売)

◇解説◇
 20世紀の日本サッカーは、立ちはだかる韓国の壁にW杯への道を閉ざされていた。その道を開きかけたのは、1993年、アメリカW杯アジア最終予選・日韓戦だ。オフトジャパンは3試合を終えた時点で1勝1敗1分け。迎えた第4戦・ライバルとの決戦で輝いたのはカズだった。中盤のキーマンだった森保一を出場停止で欠いたこの一戦、0−0のまま試合が進んだ中で59分に背番号11のエースが均衡を破る。

ホン・ミョンボとマッチアップするカズ©Naoya Sanuki

「もう絶対ボールが返ってくると思った。信じて走ったよ」

 ストライカーの得点嗅覚で奪った決勝ゴール。カズも試合後思わず、当時世界最強と評されたブラジル代表の点取り屋の名前を引き合いに出し、会心の一撃を振り返っていた。

山口素弘の伝説ループ弾、しかしその後……

<名言3>
名波、中田の2人を潰せば、日本の攻撃は寸断できる。
(チャ・ブンクン/Number429号 1997年10月9日発売)

◇解説◇
「コーチの仕事を始めて30年が経ちますが、これだけの大観衆から応援を受けたのは初めてで感激しています。できましたら、勝って一緒に喜びたかったのですが、残念な結果に終わってしまいました」

 1997年9月28日、フランスW杯アジア最終予選、日本のホーム国立競技場で行われた日韓戦後の加茂周監督のコメントである。

 試合は67分、山口素弘の芸術的ループシュートが決まって日本が先制した。

芸術的なループシュートを決めた山口素弘©Kazuaki Nishiyama

 全体を通じても押し気味で進めており、日本はついにW杯予選で「韓国の壁」を突き破る瞬間がきた。そう思ったサッカーファンは数多かった。いや、加茂監督らピッチレベルの指揮官や選手たちも同じ思いだったかもしれない。

 では一方、敵将チャ・ブンクンはどのように考えていたのだろうか?

1点リードを奪われた直後、韓国側の“やり取り”

 試合前から中盤のキーマンである名波浩と中田英寿を徹底的に“消す”ことを命じるとともに、試合中もこのようなやり取りをしていたという。

中田英寿と加茂周監督(当時)©Kazuaki Nishiyama

「1点リードされた時も私は落ち着いていました。ホン・ミョンボが『前に出てもいいですか』と尋ねてきたが、私はなだめました。落ち着きなさい。いつもの通りやれば逆転できるからと」

 果たして、展開は一変する。秋田豊投入で逃げ切りに入った日本に対して、韓国は84分、87分と立て続けにゴールを奪い、スコアをひっくり返したのだ。

 加茂監督はこうも振り返っている。

「ラスト10分、選手の足が止まってしまい、組織が乱れてしまいました。しかしまだ終わったわけではないので……」

 そう、日本にとってのW杯最終予選はまだ序盤戦だった。しかし、このショッキングな敗戦で加茂周監督に対する逆風が強烈に吹くことになった。続くカザフスタン戦で終了間際に追いつかれてドローに終わり、「加茂監督更迭」のトリガーは引かれたのである。

オシムが高評価した本田圭佑の万能性とは

<名言4>
コレクティブかどうかはさておき、本田もポリバレントにプレーできることを示し始めた。
(イビチャ・オシム/Number772号 2011年2月9日発売)

◇解説◇
 海外組を含めた公式戦での日韓戦で印象深い激闘といえば、2011年アジアカップ準決勝だろう。アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本代表は持ち前の攻撃力を発揮し、順調な勝ち上がりを見せた。一方で韓国は大エースのパク・チソンが健在。まさに雌雄を決する戦いとなった。

 試合は日本が先制を許すものの鮮やかな連係での前田遼一の同点ゴール、延長戦での細貝萌の勝ち越しゴールが生まれたと思えば、延長後半終了直前に韓国が追いつき、2−2に。PK戦では川島永嗣の2本連続セーブによって日本が決勝への切符を手にしたが、まさに死力を尽くした120分間プラスアルファだった。

©Takuya Sugiyama

 この試合で抜群の存在感を見せたのは本田圭佑だった。延長前半にPKこそ失敗するなど無得点だったものの、フィジカルを生かして前線の起点となるプレーぶりに、韓国守備陣は明らかに手を焼いていたのだ。

 また遠くヨーロッパの地でテレビでチェックした名伯楽オシムは「戦いを恐れず、自分から仕掛けるから相手はファウルを犯す。優れたシュート力もある」「さまざまなポジションで起用でき、他の選手より屈強だから、どこに置いても危険な存在だ」と高く評価していた。

©Takuya Sugiyama

文=NumberWeb編集部

photograph by Takuya Sugiyama/Kazuaki Nishiyama