日本代表FW南野拓実が、サウサンプトンに今季終了までの期限付き移籍を果たして2カ月が経とうとしている。

 昨季のリーグ覇者であるリバプールではベンチを温める試合が多かったが、サウサンプトンでは主力として稼働している。ここまでのところ、今回のレンタル移籍は順調だと言えよう。

元豪州代表GKシュウォーツァーも「良いビジネス」と

 実際、現役時代にミドルズブラやフルアムでプレーした元オーストラリア代表GKのマーク・シュウォーツァーは、今回のレンタル移籍を「サウサンプトンと南野、リバプールにとって良いビジネスだった」と評価する。

 南野としては実戦経験を継続的に積むことができ、怪我人の多いサウサンプトンにとっても貴重な即戦力が加わった。そして、リバプールとしても、南野が試合を重ねることでプレミアリーグへの適応が進む──。つまり、3者にとってプラスに作用したというわけだ。シュウォーツァーは次のように言葉をつないだ。

「南野は、サウサンプトンで非常に良いプレーを見せている。ザルツブルク時代のように効果的なプレーだ。実際、チェルシー戦(2月20日)で素晴らしいゴールを決めた。ネイサン・レドモンドのラストパスも良かったが、それ以上に南野が見せたゴール前での落ち着きは特筆に値する。キックフェイントでGKを欺く、素晴らしいゴールだった。

 リバプールでは出番が少なく、重要な役割を果たせなかった。サウサンプトンでの活躍を見ると、このレンタル移籍は成功だと言える。チェルシー戦後、ラルフ・ハーゼンヒュットル監督も攻撃面での貢献を高く評価していた」

チェルシー戦は相手GK、DFにしりもちをつかせる鮮やかな一撃だった©Getty Images

リバプールで勝負の2年目だったが

 リバプール在籍2季目となる今シーズンは、南野にとって勝負の年だった。20年1月に世界王者のリバプールに加わり、昨シーズンの後半戦は「適応期間」として試合経験を積むことに重きが置かれた。ところが、夏の移籍期間でポルトガル代表FWディオゴ・ジョタが加入。プレシーズンマッチで好調だった南野の序列は低下し、試合勘の欠如からパフォーマンスが振るわない試合もあった。

 年末あたりからは、リバプールの不振も重なった。CBのビルヒル・ファンダイクとジョー・ゴメスを筆頭に、怪我人が続出。チームは攻守のバランスを失い、無敵を誇ったリバプールに黒星が増え始めた。また、体力を著しく消耗するハードな戦術も影響して、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う過密日程が選手たちに重くのしかかった。

初ゴールを決めても出番の声はほとんどかからず

 試合が2〜3日おきに行われた年末年始には、ユルゲン・クロップ監督のセレクションが守りに入ったようにも映った。先発メンバーは、あくまでも既存戦力が中心。特に、モハメド・サラー、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノの3トップは連戦の影響で疲労の色が濃かったが、それでも3人はピッチに立ち続けた。南野が12月19日のクリスタルパレス戦でプレミア初ゴールを決めても、出番の声はほとんどかからなかった。

プレミアリーグ初得点となった渾身のシュート©Getty Images

 それゆえ、サウサンプトンへのレンタル移籍は、まさに渡りに船だった。

「サウサンプトンではサッカーを楽しんでいる」

 レギュラーとして躍動し始めた南野について、英BBC放送でも次のようなやり取りが繰り広げられた。まず同局のアナウンサーが、サウサンプトンの戦術と南野の親和性について説明を始めた。

「南野は、レッドブル・ザルツブルクで5年間プレーした。一方、サウサンプトンのハーゼンヒュットル監督は、イングランドに渡る前にレッドブル・グループの姉妹クラブ、RBライプツィヒ(ドイツ)で指揮を執った。両クラブはプレー哲学を共有しているため、南野はハーゼンヒュットル監督の志向に合致している」

 すると、現役時代にリバプールやフルアムなどでプレーした元イングランド代表MFのダニー・マーフィーは「その通り」と返答。3月14日に行われたプレミアリーグのブライトン戦で、4-4-2の左MFとして先発した日本代表のプレーを高く評価した。

「南野は、非常にインテリジェンスがある選手。特に際立っているのが、左サイドから中央部にポジションを移す動きだ。誰が南野のマークにつくのか、ブライトンは把握できていない。南野は非常に危険なエリアに顔を出しており、ブライトンにとって脅威となった。南野は、リバプールで出場機会が少なかった。サラー、マネ、フィルミーノのフロントスリーから立ち位置を確立するのが非常に難しかったが、サウサンプトンではサッカーを楽しんでいるようだ」

実際に移籍後、南野らしいプレーが増えた

 実際にサウサンプトン移籍後、南野らしいプレーが格段に増えている。

 ゴール前に滑り込み、ラストパスを呼び込むフリーランは、すでに貴重な攻撃のアクセントになっている。またマーフィーの言葉通り、自軍がボール保持した時に左サイドから中央に絞る動きも、攻撃の厚みをもたらすことにつながっている。アタックが単調になりがちなサウサンプトンの中で、“タキ”の愛称で呼ばれる日本代表アタッカーの特性は光っている。

サイドから中央エリアに入り込んでいく動きは、南野の巧さと言える©Getty Images

 ただし、課題もある。

 前出のシュウォーツァーは「守備面ではまだ努力が必要。また90分を通して、もっとチームに貢献する必要がある」と述べ、「ディフェンスと継続性」が今後の課題になると指摘。また、マーフィーも、ブライトン戦の南野について「後半はほとんど存在感がなかった。65分の早い時間帯での交代もやむを得ない」と語っていた。

 中盤のパスワークに密接に関わりながら、ポジショニングを含めた守備でも貢献する。そして、90分間を通して存在感を示し続けることが、ステップアップのための条件となりそうだ。

進化の過程にある南野を目撃できるはず

 南野は日本代表の3月シリーズに招集され、英国を離れた。

 リバプールで出場機会の少なかった昨年10月、11月の代表戦に比べると、今回の3月シリーズでは試合勘とコンディションが大きく上向いている。なにより、昨年は出場機会に恵まれなかっただけに、南野としては貪欲に試合に出場したい時期だろう。

 リバプールではレギュラー陣の壁に苦しんだが、トレーニングから得られるものは大きかった。サウサンプトン移籍後は、プレミアリーグの実戦経験を重ねることで日々成長を感じている。

 韓国との強化試合、そしてモンゴルとのW杯アジア2次予選をこなす今回の代表戦で、進化の過程にある南野を目撃できるはずだ。

文=田嶋コウスケ

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