4月3日から競泳日本選手権が開幕する。1年延期となった東京五輪の熾烈な選考争いに加えて、池江璃花子も4種目にエントリーするなど話題は豊富だ。そこで今大会の注目選手、そして池江の凄みを、元五輪スイマーである伊藤華英氏に聞いた(全2回/池江編はこちら)

 第97回競泳日本選手権、東京オリンピックの1年延期もあって代表選考会としても仕切り直しとなりました。本番の舞台となる東京アクアティクスセンターでの戦いはとても熱いものになるかと予想していますが、数多くの注目選手がいます。その観戦ガイドとして五輪本番にも期待したい有力選手、そしてここにきて実力をつけてきた新鋭の選手たちをご紹介したいと思います。

 まずは一番注目してほしい選手から。「カツオ」のニックネームで知られる松元克央選手――本名は「カツヒロ」なんですが(笑)――ですね。

自由形金メダル候補の松元(2019年撮影)©Getty Images

 ご存じのない方のために説明すると、松元選手は現在世界ランキング1位。自由形での金メダルを射程にとらえている日本のエースです。200m自由形での自己ベストは1分45秒13で個人での派遣標準記録を突破していますが、日本選手権では1分44秒台を出してくるのではないかなと予想しています。

 オリンピックでは1分44秒台の勝負が求められることが想定されますが、レベルが上がったとしても期待できる潜在能力があります。五輪本番で金メダルという最高の結果を得るために、その想定の中でしっかりと練習を積んでいると感じます。

 メダルと言えば、やはり男子個人メドレーの瀬戸大也選手萩野公介選手という2人の五輪メダリストにも注目したいです。

リオ五輪の瀬戸(左)と萩野©Ryosuke Monju/JMPA

 瀬戸選手は自らの問題があってからの立て直しが求められますが、きちんと心身が整えば、飛びぬけた実力の持ち主です。萩野選手は五輪連覇がかかっていた400m個人メドレーに出場しないものの、200m個人メドレー、背泳ぎ、自由形の3種目に絞りました。

 ただ――個人メドレーでは、瀬戸選手と萩野選手だけでなく新星にも注目です。

 それは小方颯選手田渕海斗選手という10代の2人です。

 この4月で高校3年生となった17歳の小方選手はジャパンオープンの400m個人メドレーで予選1位通過をしていますし、大学1年生となった18歳の田渕選手も400m個人メドレーで4分13秒台の自己ベストをマーク。また200mでは本来背泳ぎの砂間敬太選手が萩野選手に次ぐ記録で、それぞれ派遣標準記録を切っているなど、一気に台頭してきた印象です。

急成長している田渕海斗©MATSUO.K/AFLO SPORT

 長年にわたって「瀬戸・萩野時代」が続いていた個人メドレーですが、「パリ五輪まで3年」であることを踏まえると、2人のような若い力が台頭してほしい時期でもありますね。4年ですら"あっという間"なのですが、3年というと……"もっとあっという間"になってしまいますからね。

 近年の競泳界は練習環境の充実などによって、昔と比べて年齢を重ねても長く競技を続けられるようになっています。そういった意味で男子個人メドレーは、世代間でのハイレベルな競争を楽しめるのでは、と思います。

男女ともに平泳ぎは激戦必至

 そのほかの種目でも非常に激しい競争が繰り広げられています。

 男女ともに平泳ぎは激戦になることが予想されます。特に女子100m平泳ぎでは青木玲緒樹選手渡部香生子選手、また記録を一気に伸ばしている宮坂倖乃選手、そして経験値のある鈴木聡美選手も健在です。

鈴木聡美はロンドン、リオに続く五輪出場なるか©Asami Enomoto/JMPA

 一方で男子平泳ぎは200mが最もレベルの高いレースになるのではないでしょうか。

 2017年に世界新をマークした渡辺一平選手と、すでに2分6秒台をマークしている佐藤翔馬選手の2強体制であることは確か。ただし2020年に急成長した武良竜也選手、そして佐藤選手と慶大で同学年の深沢大和選手、2019年の世界選手権代表の小日向一輝選手らもいるため、お互いが切磋琢磨して好記録が期待できるのでは――と期待しています。

世界で見てもランキング上位に数多くの日本勢が

 またこれは世界全体で言えることですが、各種目の記録が一覧できるサイト「swim swam」を見ると、コロナのパンデミック下にあっても、トップの選手はしっかりと記録を伸ばしています。その中で日本人選手もランキングに数多く名前を連ねているのは心強いですね。

大橋悠依(2019年撮影)©Getty Images

 今大会は自粛を強いられた中で、調整をどれだけ突き詰められたか。そこで差が出るかと思いますが、女子個人メドレーの大橋悠依選手のように真面目な選手はしっかりと自分の課題と向き合い、力を蓄えてきたかと思います。それを日本選手権という大舞台で発揮してほしいなと願っています。

 そして今大会で最も注目される池江璃花子選手については、また別枠でお話しできればと思います。

(白血病から2年で……池江のスゴさ編は関連記事からもご覧になれます)

文=伊藤華英

photograph by JIJI PRESS