雑誌「Sports Graphic Number」と「NumberWeb」に掲載された記事のなかから、トップアスリートや指導者たちの「名言」を紹介します。今回はLGBTのアスリートにまつわる2つの言葉です。

<名言1>
自分の事を嫌いな人からのネガティブなコメントも力になる。それがなかったら今の自分はない。
(アダム・リッポン/NumberWeb 2018年2月25日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/830010

◇解説◇
 近年、アメリカをはじめとした世界各国で、政治的主張や自らの信念をハッキリと示すアスリートが増えている。特にその傾向が強まったのがドナルド・トランプ前大統領時代だったが、2018年平昌五輪の前後で歯に衣着せぬ発言を繰り広げていたのが元フィギュアスケーターで、同性愛を公表しているリッポンもその1人だった。

平昌五輪のアダム・リッポン©Tsutomu Kishimoto/JMPA

 舌戦の相手となったのは、マイク・ペンス前副大統領である。過去には同性愛者を“矯正治療”する団体に出資したと噂されるペンス氏だが、大会前にアメリカ代表の激励に訪れる予定だった。

 しかしリッポンは現地紙の取材に対して「僕たちを病気とみなして『矯正』させようとする奴なんかに会いたくない。試合後なら考えてもいいけど」と拒否。それを聞きつけたペンス氏はサイド面会を申し出たものの、リッポンの答えは「ノー」。そしてリッポンはSNS上で同じく同性愛を公表しているスキー選手とともに写真に収まり「ペンス、悔しいだろう」と挑発的なコメントを掲載した。

 この行動は、ファンからは“勇気ある行動”と喝采を受ける一方で、トランプ政権支持者とみられるアカウントからは、誹謗中傷コメントが送り付けられたという。

平昌五輪男子シングルスで10位に入ったリッポン©Tsutomu Kishimoto/JMPA

 ただリッポンは冒頭の言葉のように批判もどこ吹く風とばかり、フィギュアスケート団体戦で銅メダル、個人戦で10位に入るなど大舞台で自らを表現しきった。

<名言2>
ロナウドやメッシが人種差別や性差別に反対するメッセージを発したら、それを無視できる人間はサッカー界にはいない。逆に広範な支持を得るのは間違いない。
(ミーガン・ラピノー/NumberWeb 2020年3月22日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/842887

◇解説◇
 アスリートにおけるLGBTや政治的発言などで世界的に注目された一人に、サッカー・アメリカ女子代表のMFラピノーがいる。

2012年ロンドン五輪、日本との決勝でもスタメンだったラピノー(15番)©Asami Enomoto/JMPA

 2019年女子W杯ではチームを優勝に導き、得点王とMVPを獲得。ピッチ内での存在感とともにラピノーに注目が集まったのは、マイノリティの権利・利益のために戦う“社会活動家”としての先鋭さゆえだ。当時のドナルド・トランプ大統領との“舌戦”はスポーツの枠を超えて世界的なニュースとなったほどである。

アメリカが優勝した2019年女子W杯©Getty Images

 女子バロンドールを獲得した2019年、「フランス・フットボール」誌のインタビューに応じたラピノー。「間違いなく生涯最高の年だった」と自身のパフォーマンスを振り返るとともに、サッカー界に対して思うことを包み隠さず口にした。それはクリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシという2大スーパースターも対象となった。

2019年FIFA年間最優秀選手として表彰されたメッシ(左)とラピノー  (C)Getty Images

「私も彼らスーパースターたちがうんざりするのを覚悟の上で、メッセージを発するように働きかけてはいる」

 もちろん、スターたちにその声は確実に届いており、行動に移している。

 例えばロナウドは2018年、対戦相手のナポリのDFクリバリーが人種差別的チャントを受けた際に「世界のフットボールにおいて、僕は絶えず教養とリスペクトを求めている。人種差別やいかなる攻撃も許さない」と自身のインスタグラムで発信するなど、サッカー界のアイコンとして差別撲滅を率先して訴えているのだ。

文=NumberWeb編集部

photograph by Getty Images