本来ケガにタイミングの良し悪しなどはないけれど、いろいろな意味で、これは「最悪」と言える。

 4月1日、R・マドリーはセルヒオ・ラモスが左ふくらはぎの腓腹筋内側頭を痛めていることを発表した。完治に要する期間は「回復の進み具合による」模様だが、1カ月ほどはかかると見られている。

 つまり、タイトル獲得のためには絶対に落とせないリバプールとのCL準々決勝2試合(勝ち進めば、おそらく準決勝も)とリーガ第30節のバルセロナ戦には出られないということだ。

クラシコでメッシらと丁々発止のバトルを繰り広げ続けた

 ちなみに、ここ2年のR・マドリーのCL敗退はS・ラモスを欠いた試合で決まっている。2018−19シーズンはアヤックス戦で、2019−20はマンチェスター・シティ戦で、どちらもノックアウトラウンドの1回戦だ。とはいえ、どちらもケガのためではなく、前者は警告の累積、後者は第1レグで受けたレッドカードによる出場停止が欠場の理由だった。

マドリーは“慎重起用”も代表戦で先発

 S・ラモスは、今年に入ってからほとんど試合に出ていない。だましだまし使ってきた左膝が1月14日のスー パーカップ準決勝アスレティック・ビルバオ戦で限界に達し、内視鏡を用いた手術を受けたからだ。

 3月13日の第27節エルチェ戦で2カ月ぶりにピッチに戻り、続くCLアタランタ戦でも64分間プレーした。が、第28節セルタ戦は遠征メンバーからも外れた。アタランタ戦で左脛を打撲したことで、ケガ明けであることを踏まえて「念のため休ませる」というのがクラブの説明だった。

 ところが、その5日後のW杯予選ギリシャ戦にはスペイン代表のユニホームを着て先発出場し、ハーフタイムに退いている。

勝利は実質確定なのに4分だけ出場のナゾ

「事前に話し合い『前半だけ』と決めていたからであって、彼のコンディションは完璧」と代表監督のルイス・エンリケは釈明したが、S・ラモスが本調子でなかったのは明白であり、R・マドリーのOBでもあるアナリストのアルバロ・ベニートはこう評している。

「膝のせいかわからないが100%じゃない。あらゆるプレーに全力を出すのが彼なのに、力を加減しているように見えた」

 その後、3月28日のジョージア戦には出場しなかったが、31日のコソボ戦は86分からピッチに立った。スコアは3−1で、スペインの勝利は実質確定していた。

 試合後は控え組と一緒にピッチに残り、トレーナーの下で身体を動かした。そんななか負ったのが、冒頭のケガだった。

©Getty Images

マドリディスタが納得するわけがない

 納得がいかないのはR・マドリーのサポーターである。

 今季の結末を左右する大事な時期に差し掛かっているのに、S・ラモスはなぜ万全とは言えない体調でL・エンリケの招集に応じたのか。

 中途半端に試合に出て活躍もせず、試合が終わった後に負傷だなんて、代表にとってもクラブにとっても良いことなしだったではないか――。

 疑われているのは、S・ラモスの個人記録への執着だ。

 ギリシャ戦とコソボ戦に出たことで、彼の代表キャップは世界歴代3位の180となった。現役で競り合っているクウェート代表FWバデル・アルムタワは先月末に数字を181試合に伸ばしたが、エジプトのアフメド・ハサンが持つ世界記録184まであと4試合である。

EURO2008の頃はサイドバックだった©Takuya Sugiyama

 L・エンリケの不自然な起用法も、そんなS・ラモスの希望に応えた形であったとすれば腑に落ちる。

 S・ラモスとR・マドリーの契約は、今年の6月末で切れる。両者はしばらく前から延長交渉を続けているが、現在の手取り1200万ユーロ(約15億7000万円)の10%減での1年延長を最終オファーとしているクラブを見限り移籍を決意していると、一部のメディアは報じている。

 それが本当ならば、S・ラモスは近々退団を発表するだろう。そのときにR・マドリーの今季の無冠が決まっていたら、「チームより自分を優先し、金を求めて他所へ行く亡者」というレッテルを貼りつけるサポーターが現れるかもしれない。

 まことタイミングの悪いケガである。

文=横井伸幸

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