今季のウインタースポーツで最も顕著な成績を残した日本人だろう。スノーボード男子ハーフパイプの19歳、戸塚優斗(ヨネックス)が3月に米コロラド州で開催された世界選手権で初優勝を飾った。1本目は最初の大技で手を突いてしまったが、2本目に93.00点を出して首位に立つと、最終3本目のランではさらに高いエアを繰り出して96.25点。3連覇中だったスコット・ジェームズ(オーストラリア)に5.75点の大差をつけて勝利し、「前回('19年)は2位だったので今回勝てて凄くうれしい」と笑みを浮かべた。

 昨季のUSオープンを初制覇してからの成長は目を見張るばかりだ。コロナ禍の昨夏は国内で陸トレに励み、下半身を強化。今季は出場した全試合で勝った。中でも自信になったのは憧れのXゲームでの優勝。勢いのまま臨んだ3月の世界選手権、さらには約1週間後のW杯最終戦を制し、種目別総合優勝に輝いた。

 平昌五輪シーズンだった'17年9月のW杯開幕戦で、初出場ながら優勝して脚光を浴びた。だが、16歳で出た平昌五輪では決勝の2本目にパイプの縁に落ちて負傷。11位に終わった。しかし、それから3年がたち、「平昌五輪は雰囲気にのまれた。技術的な面でもすごく下手だった。でも今はメンタルも強くなっている」と胸を張る。技術面ではかつて苦手だった「スイッチバック」を克服したのが大きく、今季はルーティーンの中盤に組み込んでいる「キャブダブル12からスイッチバックサイドのつなぎ」が得点源となっている。

「このまま順調に行ければ、良い順位が」

 北京五輪に向けては、「このまま順調に行ければ、良い順位がとれるんじゃないかと思う」と自信をのぞかせつつも、口調自体は慎重だ。ソチ、平昌五輪で2大会連続銀メダルを獲得し、その後はスケートボードで東京五輪出場を目指してきた平野歩夢が控えているからだ。今年になって米国で平野と同じ場所で練習したという戸塚は、「本当にスノーボードを休んでいたの? と思うような滑りをしていた」と明かす。五輪3大会金メダルのショーン・ホワイト(米国)もいる。

 だが今の戸塚が本物の実力を身につけていることに疑いはない。「北京では誰もできないルーティーンをやって勝てたらうれしい」。これがまだ伸び盛りの王者の本心だ。

文=矢内由美子

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