コントレイルの一強ムードだった昨年とは打って変わって、今年の牡馬クラシック戦線は大混戦の様相を呈している。クラシック三冠競走の皮切りとなる、第81回皐月賞(4月18日、中山芝2000m、3歳GI)も、難解な一戦になりそうだ。

 ここに至るステップレースではことごとく1番人気が負け、しかも、本番ではこうならないだろうと思われるスローペースが多かった。その結果をどのくらい参考にしていいのか、悩ましい。

サンデーの4×3、エフフォーリアの前走

 そうしたなかでも、3戦無敗のエフフォーリア(牡、父エピファネイア、美浦・鹿戸雄一厩舎)の前走、共同通信杯の勝ち方は見事だった。道中は緩い流れのなか、掛かり気味に先行。エネルギーのロスが心配されたが、外から他馬に追い越されても、それ以上ムキになることはなかった。3コーナーでは、鞍上の横山武史の指示を受け入れ折り合い、抜群の手応えで直線へ。ラスト400m付近でゴーサインを受けると力強く末脚を伸ばし、2着のヴィクティファルスを2馬身半突き放した。3着はシャフリヤール。1番人気に支持されたステラヴェローチェは5着だった。

 その後、このレースで2着だったヴィクティファルスが次走のスプリングステークスを制し、3着だったシャフリヤールが毎日杯をレコード勝ち。エフフォーリアの強さを裏打ちする結果となった。

 エフフォーリアは、サンデーサイレンスの4×3という血統構成だ。名種牡馬の4×3は昔から「奇跡の血量」と呼ばれており、サンデーの4×3の馬で初めてクラシックを制したのが、昨年のデアリングタクトだった。「サンデーの血の飽和状態」と言われた日本の生産界が出した解決策のひとつとして、今後、この血量の一流馬が多くなっていくだろう。

 ひとつ気になるのは、皐月賞当日の馬場状態だ。ただでさえ中山の芝コースは使い込まれて傷んでおり、天気予報では、土曜日から日曜日にかけて傘マークがついている。稍重か重の道悪になりそうだ。

 エフフォーリアの過去3戦はすべて良馬場だった。道悪でも力を発揮できるか心配になってくるが、かき込むようなフットワークなので、こなせるのではないか。いとこのアドマイヤムーンが雨で稍重になった京都記念や宝塚記念を勝っているのも心強い材料だ。

ストライドが大きいダノンザキッドは

 昨年、3戦3勝でホープフルステークスを制したダノンザキッド(牡、父ジャスタウェイ、栗東・安田隆行厩舎)は、コントレイルの再来になるかと思われたが、前走の弥生賞ディープインパクト記念で3着に敗れてしまった。

 ホープフルステークス同様、序盤から行きたがり、向正面に入ってもまだ鞍上の川田将雅が手綱を引いていた。3コーナーから前と差を詰め、直線入口ではいつでもかわせそうに見えたが、タイトルホルダーに逃げ切られてしまった。道中2番手にいたシュネルマイスターが2着という「行った行った」の競馬に、悪い形で嵌まってしまった。

 直線に入ってもすぐには手前(軸脚)を替えず、ラスト200m付近でようやく右から左にスイッチするなど、終始スムーズな内容ではなかった。それでも、最後は鋭く追い上げるなど、さすがというところを見せてくれた。

 ストライドが大きいので道悪はマイナスに思われるが、この馬の場合、大阪杯を勝ったレイパパレと同じように、滑る馬場で力を加減して走ることによって、折り合える可能性もあるのではないか。

グラティアスも一発のあるパターン

 ミルコ・デムーロが乗る2戦2勝のグラティアス(牡、父ハーツクライ、美浦・加藤征弘厩舎)も、姉がレシステンシアなので道悪を苦にするタイプではないと思われる。

 エフフォーリアが7番、ダノンザキッドが8番と、包まれると馬場の悪いところを走らされる可能性のある枠を引いたのに対し、こちらは外から2頭目の15番という、道悪では好枠と言える枠を引いた。道悪を苦にしない馬が、少しでも馬場のいいところを走れる枠を引き、道悪で結果を出している騎手を背にする――というのは、2018年の有馬記念を勝ったブラストワンピースのように、一発のあるパターンだ。

エフフォーリアが鹿戸師の思いに応えられるか

◎エフフォーリア
○ダノンザキッド
▲グラティアス

 エフフォーリアのように、共同通信杯を勝ってから皐月賞というローテーションでは、過去10年で2012年ゴールドシップ、2014年イスラボニータ、2016年ディーマジェスティと3頭が皐月賞を勝っている。

 この馬がデビューする前から稽古をつけてきた主戦の横山は22歳。ここを勝てばGI初制覇となる。管理する鹿戸雄一調教師は、騎手時代から親分肌で、横山の父・横山典弘も可愛がっていた。所属騎手ではないが、横山も育てていこうという男気を持って接しているはずだ。

 鹿戸師は、本来ならランドオブリバティもここに送り込みたかったところだろうが、逸走したホープフルステークスの次走のきさらぎ賞で3着、スプリングステークスでは7着と、結果を出せなかった。

 管理馬のスクリーンヒーローで2008年のジャパンカップを勝っているが、クラシックは未勝利だ。

 そんな鹿戸師の思いに応え、勝つたびに2着との着差をひろげているエフフォーリアが、混戦を断つと見た。

文=島田明宏

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