2020年から2021年(対象:12月〜3月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト3を発表します。2021箱根駅伝部門の第2位は、こちら!(初公開日 2020年3月8日)。

 4月には、多くの優秀な高校生ランナーが大学に進学する。

 昨年は、コロナ禍の影響で監督や選手への挨拶が難しくなり、インターハイを始め各大会が中止になるなどスカウティング活動がままならない状態だった。それでも、各大学の進学予定者を見てみると来年の箱根駅伝で活躍が期待できる選手は多い。

 高校生の基準は、5000mのタイムになる。今春卒業する高校生ランナーのトップ5(5000mの記録順、留学生は除く)はどの大学を選んだのか?

 ここでは、その進路を紹介するとともに、2年生以上も含めた各大学の新しい“勢力図”を検討したい。

※(学校名・5000mのタイム)

高校ランナー4位・徳丸寛太は「東海大学」へ

 徳丸寛太(鹿児島実業・13分48秒59)は東海大に進学予定だ。昨年の10月に長崎ナイター5000mで13分台の記録を出し、都大路では1区4位という好成績。長い手足を活かしたバネのある走りで、東海大のエース候補としても期待できる。

 他にも都大路に出走して東海大を選択した選手は多い。1区6位の梶谷優斗(滋賀学園・14分05秒38)、1区20位の竹中博駿(高岡向陵・14分27秒80)、1区45位の小出橘平(高知中央・14分37秒20)、3区6位の越陽汰(佐久長聖・13分53秒77)、7区11位の八澤輝人(須磨学園・14分37秒83)の4名が入学予定だ。

 13分台は、徳丸と越の2名だが、梶谷は全国高等学校陸上競技大会2020の5000mで3位と結果も出し、竹中とともに駅伝に強いタイプ。早い段階で上位グループに入ってきそうだ。小出は体格が良く、腰高でバネのある走りが特徴。また、1年の時に北関東5000m決勝で唯一1年生として出走し7位、茨城県高校予選では1区区間新の走りを見せた。現在14分フラットのタイムを持つ五十嵐喬信(水戸工業)、さらに長い距離が得意な吉田響(東海大翔洋・14分19秒52)、水野龍志(小林・14分08秒01)、負けん気が強く気持ちで走るタイプの藤井利哉(西脇工業・14分29秒48)など、従来のスピード型よりもむしろロードに強い選手のスカウティングにシフトした結果がどうレースに出るか、非常に楽しみだ。

優勝への鍵は「新入生をどれだけ育成できるか」

 東海大は、塩澤稀夕、名取燎太、西田壮志の3本柱が卒業。3年時から主力として欠かせない戦力になっていただけに、黄金世代が卒業した時よりも実質的な損失が大きい。

©Yuki Suenega

 箱根奪回を目指すには、名取のように両角再生工場で松崎咲人(2年)が復活を果たし、中間層の選手のレベルアップが欠かせない。その上で、新4年生の本間敬大主将を軸に長田駿佑ら上級生がどれだけ引っ張っていけるか、新入生をどれだけ育成できるかも重要なポイントになってくるだろう。

高校ランナー3位・鶴川正也(九州学院)は「青山学院大学」へ

 鶴川正也(九州学院・13分45秒28)は、青学大への進学が予定されている。

 都大路では洛南、浜松商業との競り合いからラストで持ち前のスピードを見せて1区区間賞を獲得。青学大は、昨年、1区日本人選手の区間最高記録(28分48秒)を出した佐藤一世(八千代松陰)につづいて、スピードと駅伝力のある選手を獲得したことになった。

男子1区終盤で先頭に立ち、たすきを手に中継所に向かう九州学院(熊本)の鶴川正也 ©JIJI PRESS

 同じく1区3位の若林宏樹(洛南・13分58秒77)、1区8位の喜多村慧(須磨学園・14分13秒55)、1区10位の太田蒼生(大牟田・13分55秒74)、1区13位の田中悠登(敦賀気比・14分07秒10)ら都大路出走メンバー選手が入学予定。特に、若林は京都陸協記録会で13分台のPBを出し、段違いのスピードで圧巻のレースを見せる“本番に強い”選手。脚に地力があり、山の下り区間も走れそうで、同じ京都洛南高校の先輩でスーパールーキーとして注目された三浦龍司(順天堂大学)につづく活躍を見せてくれそうだ。

高校ランナー5位・野村昭夢も青学大へ進学

 鶴川と同じく5000m13分台の鹿児島城西・野村昭夢(13分48秒83)も青学大へ進学予定。野村は鹿児島高校駅伝大会の1区で鹿児島実業の徳丸寛太と争い、惜しくも2位になったが、2020年5000mの高校生ランキングでは5位の逸材だ。

 さらに宮城県高校生駅伝の1区で仙台育英の吉居駿恭と競った白石光星(東北・14分12秒04)、2年時から愛知県高校駅伝で活躍した片山宗哉(愛知・14分28秒40)らが入学予定になっている。

 ずらりと並ぶ1区のエースと高校生トップランナーたち。青学大のスカウティングは例年以上に素晴らしく、質の高い選手を獲得することに成功している。今春、神林勇太、吉田圭太のダブルエースに加え、岩見秀哉が卒業することを見据えてのスカウティングなのかもしれない。

今年の箱根駅伝では、まさかの往路12位から総合4位まで追い上げた青山学院大学。ゴールした中倉啓敦(2年)を迎える吉田圭太(4年) ©Nanae Suzuki

 ただ、新入生以外の選手層は相変わらず分厚い。エースの岸本大紀(2年)、箱根7区3位の近藤幸太郎(2年)、10区4位の中倉啓敦(2年)に加え、駅伝力のある4区4位の佐藤一世らがいる。上級生は一時伸び悩んだ時期もあるが、9区2位の飯田貴之(3年)、6区3位の高橋勇輝(3年)は箱根で結果を出した。新主将の飯田と在学生とともに、新入生の鶴川、若林、野村らが1年目からもちろん、2年、3年とさらに力をつけ、成長していけば、2度目の黄金期を迎えそうな勢いを感じる。

高校ランナー2位・伊藤大志は「早稲田大学」へ

 高校生ランナー・2位の伊藤大志(佐久長聖・13分36秒57)は、多くの箱根常連校から勧誘を受けたが早い段階でエンジのユニフォームを選んでいたという。成績優秀、性格も非常に真面目で、キャプテンシーもある。佐久長聖高校の高見澤勝監督が「非の打ち所がない」と語るほどの優等生ランナーだ。

 佐久長聖高校から早稲田大学への流れは、日本のトップランナー・大迫傑が歩んだ道だが、伊藤も大迫に負けずとも劣らないポテンシャルを持っている。早稲田のエース候補、キャプテン候補として、1年目から存在感を示していくだろう。

佐久長聖高校で練習する伊藤大志(右) ©Asami Enomoto

 前回の箱根駅伝で4年生が出走したのは7区のみ。1年生では5区19位の諸冨湧、6区8位の北村光、2年生では1区5位井川龍人、4区3位鈴木創士、9区4位の小指卓也の5名が出走して力をつけている。3区6位の中谷雄飛(3年)、2区13位の太田直希(3年)、10区7位の山口賢助(3年)らが最上級生としてチームを引っ張るなかで、課題は山上りの5区。2区を始め往路の主要区間を伊藤が走れることができれば、来年の早稲田はかなり怖い存在になるだろう。

 早稲田には、東京都高校駅伝で3区区間賞の石塚陽士(早稲田実・14分08秒79)も入学予定だ。

 では、2020年の高校生ランナーNo.1はどこへ行くのか?

高校ランナー1位・石田洸介は「東洋大学」へ

 5000mの高校生記録を持つ石田洸介(東京農大二・13分34秒74)は、尊敬する服部勇馬や相澤晃のような選手になるために、酒井監督の指導を受けたいと東洋大を選択した。

 都大路では1区でスタート直後からハイペースで先頭に立ったものの、6キロ手前で失速した。だが、5000mの持ちタイムを示すようにポテンシャルはハイレベル。東京五輪10000m代表に内定しているOB相澤晃(旭化成)は3年からの活躍だったが、石田は田澤簾(駒大)のように1年目からの活躍が期待できる超大物ルーキーだ。

昨年7月の男子5000mで高校新記録をマークした石田洸介(群馬・東農大二高)。しかし、その後9月27日に行われた東海大記録会男子5000mでも再び記録を更新した ©JIJI PRESS

 東洋大には、石田のチームメイトとして都大路を4区9位で駆けた北村勇貴(14分16秒75)も入学予定だ。さらに1区11位と健闘した梅崎蓮(宇和島東・14分14秒95)、3区18位の永吉恭理(須磨学園・14分15秒29)、5区24位の小林亮太(豊川・14分10秒84)に加え、広島県高校駅伝4区3位の吉田周(広島国際学院・14分18秒44)、東京都高校駅伝で最長区間(10キロ)の1区区間賞の甲木康博(城西・14分12秒20)など、都大路は未出走ながら有力な選手が揃う。甲木はセイコーゴールデングランプリリの1500mのドリームレーンで出場し、3分44秒62のPBで高校歴代3位の記録を出したスピードランナー。全国高等学校陸上競技大会2020の1500mでも2位になっている。

 東洋大は今年の箱根駅伝で1年が2名走り、松山和希が2区4位と好走。2年生も1区9位の児玉悠輔、3区8位の前田義弘、10区9位の清野太雅の3名が出走した。山の5区には、山の神候補の宮下隼人(3年)が控えている。全日本大学駅伝3区9位でデビューした佐藤真優(1年)や、同じく6区5位と好走した腰塚遥人(3年)、箱根経験者の蝦夷森章太(3年)、鈴木宗孝(3年)もいる。来年の箱根駅伝は石田や甲木らが順調に成長していけば往路優勝はもちろん、総合優勝を狙える分厚い選手層が整いそうだ。

 今年の箱根駅伝が終わってまだ2カ月。しかし、すでに来年の箱根駅伝に向けて、戦士たちの闘いはすでに始まっている。

(【箱根駅伝上位校編を読む】“中村匠吾超え”のルーキーも…箱根駅伝〈シード校〉に入る「高校生トップランナー」の実力とは【駒澤、創価…】 へ)

文=佐藤俊

photograph by JIJI PRESS