アルビレックス新潟の快進撃が止まらない。今季J2で13節を終えて、10勝3分。開幕から13戦無敗とクラブ新記録を更新中だ。

 そんな快進撃を支えるのは、13試合で31得点を叩き出す好調な攻撃陣。そのキーマンであり、現在の新潟で象徴的な存在となりつつあるのがMF高木善朗(28歳)とMF本間至恩(20歳)の2人である。

 4-2-3-1のトップ下でレギュラーの座を掴んだ高木は、神出鬼没な動きで相手のギャップに潜り込み、ミスの少ない高い技術でボールを収めたり、パスを展開して攻撃のリズムを作り出している。さらにフィニッシャーとしても高い能力を持ち、これまで6得点9アシストと大暴れしている。

 一方、左サイドハーフに位置する本間は、相手を欺く高速フェイントを駆使したドリブルで無双。ドリブルのキレ、タイミング、ボールコントロールの精度はJ2屈指で、相手からすれば「わかっていても止められない」といった感覚だろう。今季は4得点4アシストと、高木同様に目に見える結果を残している。

攻撃の軸を担う高木(左)と本間 ©Takahito Ando

アルベルト監督のベースづくり

 今回、注目したいのは、この2人の「活かし方」だ。

 昨季から新潟はスペイン人のアルベルト・プッチ・オルトネダ監督を招聘している。以前までの新潟の攻撃陣はレオナルド、シルビーニョなどの外国人選手の強烈な個に頼りすぎる傾向があったが、アルベルト監督はそこに依存せずに、ベースとなる形を植え付けることを一から始めた。

 選手たちと積極的なコミュニケーションを図り、それぞれの能力やパーソナリティーを把握しながら、マイボールの時間を長くするポゼッションと攻撃から守備へのトランジションの意識とアプローチを徹底。速攻と遅攻を使い分けながら、選手の距離感を意識させ、ボールをロストした瞬間に素早くボール奪取に切り替えるといった明確なコンセプトを置いた。

新潟を率いて2シーズン目を迎えるアルベルト監督 ©Takahito Ando

 昨季はそのコンセプトがチームに浸透するまで時間を要し、J2リーグ11位とJ1昇格からは大きく遠かったが、アルベルト監督は今季もその信念をぶらさずに邁進している。

 そんなアルベルト監督のサッカーにおいて、水を得た魚のように特徴を最大限に発揮しているのが前述の2人だ。

 トップ下に入る高木の役割は攻撃を円滑に進めるための潤滑油。ボールキープ力に長け、パスとシュートもうまく、かつ瞬間的なスピードに秀でている彼の特性を最大に活かすためには、フリーマン的な自由度が必要だ。これまで彼はサイドハーフやボランチでの起用が多かったが、役割が限定的になる。そこでアルベルト監督は高木に一定の自由を与えた。

 1対1に無類の強さを見せる本間はドリブル技術だけでなく、先をしっかりと予測し、直前で判断を変えられる高性能な頭脳とクイックネスを併せ持つ。いかに勝負できる場面を増やせるか。彼の長所を引き出す狙いはそこにあった。

 高木の自由度を高め、左サイドの本間には積極的に勝負させる。アルベルト監督はこの2つのタスクをチームの共通理解として浸透させた。そこに今季の新潟の強さの要因があると見ている。

ベテランDF千葉和彦の獲得

 今季、センターバックにビルドアップ力に長けたベテランDF千葉和彦を新戦力として獲得。彼がボールを持った時に両サイドバックが高い位置に張り出して幅を取ることで、両サイドハーフが中央のスペースに入り込み、高木へのマークを分散させている。高木がボールを受けた瞬間や右サイドにボールが入った瞬間には左サイドの本間のマークが外れ、1対1の局面でボールを受けやすい状況を作り出している。

今季から新潟に加入した千葉和彦。最終ラインから組み立てに参加する ©ALBIREX NIIGATA

 最終ラインは千葉と守備力の高いDF舞行龍ジェームズのコンビがファーストチョイスだが、ビルドアップ能力とパスセンスのあるDF早川史哉と千葉を組ませることで、より分厚い攻撃を仕掛けられるというオプションも用意。最終ラインの組み合わせ、ダブルボランチのポジショニング、両サイドハーフのポジショニングと連動する形で、縦へのパスコースを構築するなど、常に前への圧力を維持した状態でゲームをコントロールしている。チーム内でやるべきこと、方向性が明確になっているのはここまでの試合を見れば明らかだ。

 快進撃を続けてきた新潟の強さを象徴する試合が、直近のJ2第13節松本山雅戦だった。この試合は開幕戦以降初となる無得点に終わったが、徹底した新潟対策をしてきた松本に対し、今シーズンの躍進を確信させる戦術的、戦略的な“粘り強さ”を披露した。

 松本はキーマン高木がボールを受けにくくするために、最終ライン5枚の前にダブルボランチを配置。守備時には前線の2シャドーのうち一方がボランチラインまで落ちて、3ボランチ気味にしてスペースを徹底的に埋めてきた。さらに本間に対応する右のウィングバックには、松本・柴田峡監督が「ウチで1番身体能力が高くて、1対1に強い」と評価するDF大野佑哉を起用。大野の本職はセンターバックだけに、いかに警戒していたかが窺える。

 新潟にとっては、高木の自由度を奪われ、本間の左サイドを封じられたことで思うように攻撃の形が作れなかった。しかし、後半になると高木は、1トップの位置にいたFW谷口海斗の横に並ぶ形で、松本のセンターバックとウィングバックの間を狙うポジショニングを取るようになった。それにより本間が中に絞り、高木と縦関係になることで相手の2つの守備ブロックを牽制。

 明確な狙いの共有、そしてチーム内でそれぞれの特徴を理解しあっているからこその修正力で新潟は徐々にリズムを掴んでいく。

「圧倒的に押されていた」

 63分の谷口のシュートを皮切りに流れを取り戻した新潟は、69分には本間のドリブル突破から谷口へ狙い通りのスルーパスが渡って決定機を迎えるなど、試合を掌握。73分には千葉を起点とする配球で本間が左サイドの1対1の局面を迎えた。本間はカットインから相手DF2人を翻弄し、シュート。惜しくもゴールとはならなかったが、「うちはバーに2回弾かれましたが、オープンプレーの中でのチャンスの数は新潟さんに圧倒的に押されていた」(柴田監督)と敵将に言わしめる連動で、攻守において主導権を握り続けた。

 得点こそ奪えなかったが、警戒される中でも修正して勝ち点1をもぎ取ったことは今後の長いシーズンにおいてさらなる自信になったことだろう。こういった小さな取りこぼしがJ1昇格に大きく響くことは、他でもない新潟がここ数年で痛いほど味わってきていることだ。

「我々は自分たちのプレースタイルを信じています。プレースタイルをダメな時にも苦しい時にもそこは信じてやらないといけない。このプレースタイルこそが我々を勝利に導いてくれるからです」(アルベルト監督)

ツエーゲン金沢戦でゴールを決めた矢村(中央左)を囲む高木(一番左)、早川(中央右)、本間(右)、阿部(上) ©ALBIREX NIIGATA

 ホームで行われた松本戦では1万3101人のサポーターが詰めかけ、スタジアムをオレンジに染めた。2017年以来となる5シーズンぶりのJ1昇格に向けて羽ばたこうとしている『白鳥』に多くのサポーターが熱い視線を向けている。新潟の街の象徴として、アルベルト監督という高性能な羅針盤を信頼し、アルビレックス新潟は信念を持って突き進む。

文=安藤隆人

photograph by ALBIREX NIIGATA