関東インカレでは、駒澤大学、青山学院大学、早稲田大学が多くの選手の好走を実現し、結果を出すことでチーム力をアップさせることに成功した。一方で、箱根駅伝の強豪校として今回の結果から今後に少し不安を感じてしまうチームもあった(不調だった大学編/ダークホース候補編・好調トップ3編)。

東洋大)長距離5種目で「まさかの入賞者ゼロ」

 昨季の箱根駅伝総合3位の東洋大は、1500m、5000m、10000m、ハーフ、3000m障害の1部長距離5種目で入賞者ゼロという結果に終わった。

 5000mでは1年時に箱根10区19位の及川瑠音(3年)が2000m手前まで日本人トップ集団でレースを展開していたが14分12秒89で11位。1カ月前の日体大記録会5000mで13分58秒06の自己ベストを出していただけにもったいない結果に終わった。同じく5000mに出場した箱根2区4位と好走した松山和希(2年)は体にキレがなく、レース後トラックに倒れこむなど、14分20秒87で18位に終わった。

 10000mは、柏優吾(3年)が28分49秒72の自己ベストで14位、箱根6区14位の九嶋恵舜(2年)が29分19秒31で19位。ハーフは佐藤真優(2年)が63分17秒で10位に入ったが、主力の前田義弘(3年)は63分38秒で13位、蝦夷森章太(4年)が64分32秒で23位とやや物足りない結果に終わった。5000mには箱根1区9位の児玉悠輔(3年)、10000mは主将の宮下隼人(4年)が出走予定だったが脚の状態が万全でないことから出場を取り止めている。

箱根2区4位と好走した松山和希(2年)は体にキレがなく、レース後トラックに倒れこむなど、14分20秒87で18位に終わった

“大物ルーキー”のデビューはまだだが……

 チームを引っ張る上級生は悪くはないが、もうひとつピリッとした走りを見せていないのが気になるところ。春のトラックシーズンもチーム全体として目立つ結果が出せていない。ただ、これから宮下を始め、故障組が戦列に復帰し、夏合宿で状態を上げていけば本来の力を発揮できるレベルに戻してくるだろう。

 今シーズンに活躍が期待される1年生は、高校歴代3位の3分44秒62を持つ甲木康博が得意の1500mに出場し、決勝進出を果たした。だが、優勝した三浦龍司(順大)に10秒差をつけられ、3分58秒44の10位に。大学トップランナーとの実力の違いを見せつけられた。

 今後、5000mで13分34秒74の高校記録の保持者である石田洸介ら大物ルーキーがデビューしていくだろうが、ポテンシャルの高い1年生がどこまで力をつけていけるか。例年、夏を終えてからチームが整ってくるが、今のところ東洋大の飛躍を予想するには材料的にやや乏しい状況だ。

東海大)1500m優勝候補が「予選敗退」

 東海大は、ここ2年で館澤亨次ら「黄金世代」と3本柱(塩澤稀夕、名取燎太、西田壮志)が卒業し、新たなチーム作りが求められていた。そんな中、関東インカレで誰が頭角を現すのか、注目だった。

 1500mでは「優勝候補」と言われ、三浦龍司(順大)との一騎打ちが話題になった飯澤千翔(3年)が予選でまさかの敗退。ラストでついていけず、大失速でレース後の会見を拒否するほどの落ち込みぶりだった。

 ハーフでは箱根10区8位の竹村拓真(3年)が63分45秒の16位とまずまずの結果を出した一方、入田優希(2年)は20位、5000m13分57秒91を持つ松尾昂来(2年)は26位と存分に力を発揮できなかった。3000m障害では杉本将太(3年)が6位に入賞し、持ち味のスピードのあるところを見せてくれた。

 5000mは、喜早駿介(2年)が14分33秒62で22位。2週間前の日体大記録会で13分53秒42の自己ベストを更新していたが、結果はいまひとつだった。徳丸寛太(1年)は、14分28秒42で21位と順位こそ振るわなかったが、持ちタイムは13分48秒59で力がある選手。夏合宿で体と脚を作り、昨季の石原翔太郎(2年)や佐伯陽生(2年)のような活躍を実現できるかどうか。

1500mの優勝候補と目されていた東海大年・飯澤千翔(420番)は「まさかの予選敗退」だった ©Yuki Suenaga

 そんな中、エースの力を見せたのは、10000mの石原と5000mの市村朋樹(4年)だった。

 石原は、留学生2人とともに終始トップ集団で残り1600mから前に飛び出した。ラスト300m付近で抜かれたが、28分05秒91の自己ベストで堂々の2位に入った。昨季の全日本大学駅伝4区、箱根駅伝3区でいずれも区間賞を獲得している実力者だが、両角速監督も「物怖じしないし、気持ちの強いランナー」と勝負強さに太鼓判を押す。本人は「今日は最後イケると思ったんですが、相手が速かった」と悔しさを見せていたが、自己ベストを出してもなお負けたことへの悔しさを見せるところが彼の良さでもある。

 市村は、三浦龍司(順大)、千明龍之佑(早大)らと日本人トップ集団を走り、残り600mあたりで離されたが13分56秒99で5位。トラックの5000mをメインに調整してきた成果をしっかりと見せてくれた。レース後に、「日本選手権の時の反省で、うしろからすごく消極的な走りをして、たれる(ペースダウンする)んだったらつぶれる覚悟で最初から飛ばして前でレースするのが目標でした。それができたのはよかったですし、これからも攻めの走りを続けていきたい」と手応えを得ていた。

 チーム全体でいうと、4年生が就活中で練習に参加できないことが多く、市村曰く「もうひとつまとまりに欠けている」という状態だ。主将の本間敬大(4年)や佐伯ら故障者上がりや故障者が多い中、なかなかチームとしてのギアを上げられない。両角再生工場で練習をつづける松崎咲人(2年)の復活も気になるところだ。

 これから夏合宿などで本間、市村、長田駿佑(4年)ら4年生がどれだけチームを引っ張っていけるか。東海大は、他大学以上に3、4年生の踏ん張りが駅伝の結果に大きく影響している。駅伝シーズンまでこのままいくとは思わないが、現状では駒大など上位校の仕上がりが良いため、東海大の遅れが気になるところだ。

国学院大)優勝には「中間層のレベルアップが課題」

 国学院大は、昨季の箱根駅伝で総合9位に入り、3年連続でシード権を獲得した。今年は、箱根駅伝優勝が目標だが、関東インカレの結果を見る限り、中間層の実力がまだまだ足りないといった感じだ。

 10000mでは、箱根1区12位の藤木宏太(4年)が28分10秒30の自己ベストで5位入賞、箱根6区4位の島崎慎愛(4年)が29分00秒73で22位という結果に終わった。藤木は、「手応えとしては、まだもう少しいけそうです。中間走を早く走れそうな感じがあり、余裕もあって、ラストスパートで負けただけなので。その余裕をなくしていけたら27分台を目指せるかなと。今後はそこを意識した練習ができればと思っています」と語った。島崎は、順位はともかく、「エースとしての自覚」を掲げ、今年は藤木、中西大翔(3年)とともにチームを引っ張る覚悟でいる。

昨季の箱根1区12位の藤木は、10000mで8位入賞を果たしが…… ©Yuki Suenaga

 ハーフでは、中西大翔の双子の兄・唯翔(3年)が63分00で8位、殿地琢朗(4年)が63分46秒で16位、藤本竜(3年)が64分07秒で22位という結果だった。中西は1年時から三大駅伝で活躍している駅伝男。昨季の箱根ではいまひとつだったが、同じ轍は踏まないだろう。殿地は1年から箱根を駆け、8区12位、10区4位、5区8位と派手さはないが安定しており、監督にとっては計算ができるありがたい選手だ。

 5000mは、藤木、中西大翔、島崎のエーストリオが出走予定だったがキャンセルになった。

どれだけチームの選手層に厚みを出せるか?

 今シーズンはこの3人が軸となり、主将の木付琳(4年)とともにチームを盛り上げていくことになる。課題の中間層は箱根8区9位の伊地知賢造(2年)が学生ハーフ64分12秒で21位に入るなど主力になりつつあるなか、今回ハーフを走った藤本、中西唯翔、坂本健悟(3年)、阿久津佑介(3年)ら3年生がどこまで上げていけるか。

 さいわい、ルーキーは力のある選手が揃った。

 5000m13分48秒89の山本歩夢は、2年時にインターハイ1500mで決勝に進んだスピードが魅力。14分03秒41の平林清澄は、藤木が「強い選手」と非常に期待する有望選手で、14分04秒93の中川雄太も夏を越えて実力を増してくるだろう。

 藤木は、「土方(英和)さんたちと同じチームを作っては同じところにはいけないので、自主性を重んじつつ、メリハリをつけて、あの時のチームを越すつもりではいます」と今後のチーム作りに意欲を見せている。主力級が順調なだけに中間層、とくに1年生がレベルを上げて、どれだけチームの選手層に厚みを持たすことができるか。前田康弘監督の手腕が問われることになる。

帝京大)箱根3位には「物足りない結果に」

 帝京大は昨季、箱根駅伝で総合8位に入り、4年連続でシード権を獲得した。今季は、箱根駅伝総合3位以内を目指しているが、今大会では少し物足りない結果に終わった。

 エースの遠藤大地(4年)は10000mに出場したが、26位(29分37秒19)と28分34秒88のタイムを持つ実力からすると物足りない結果に。箱根4区9位の中村風馬(4年)はハーフに出場したが63分49秒の17位。ハーフでチーム最速(63分19秒)なだけにもう少し粘り強い走りを見せて欲しかった。5000mは、森田瑛介(4年)が25位(14分34秒53)、西脇翔太(2年)が30位(14分42秒28・今大会で細谷翔馬が更新)に終わった。

 一方で、ハーフでは、細谷翔馬(4年)が62分12秒で4位に入り、ロードでの強さを見せた。昨季の全日本大学駅伝では8区9位、箱根では5区区間賞を獲っているが、今年は「エースとしての自覚」を持ち、心技ともに充実した状態で、さらにスケールアップした走りを見せてくれた。細谷以外では、箱根9区3位の橋本尚斗(4年)が10000mに出場し、16位(28分54秒13)と自己ベストの28分52秒73と同じレベルで走り、まずまずだった。

©Yuki Suenaga

「上級生の奮起がなければ」シード権も危うい?

 例年、帝京大は上級生が活躍して、箱根で順位をキープしてきた。昨年の箱根経験者は6名残っているが、彼らの奮起がなければ総合3位以内どころか、シード権のキープも危うい。夏以降、チーム全体として調子を上げてくるだろうが、4年生が現状維持ではなく、どこまで伸びて、下級生を引っ張っていけるか。西脇、昨年の全日本大学駅伝1区18位の小野隆一朗(2年)らの成長に繋げられると選手層に厚みと勢いがつけられそうだ。

(【#3を読む】 “大学No.1レベル”三浦龍司の順天堂と…「駒澤を脅かす」“ダークホース候補の4校”とは〈箱根路の中間テスト〉)

(【初回を読む】箱根駅伝の“中間テスト”「優勝候補は?」「どこが好調なの?」 1位は駒澤、2位は青学、では3位は……?)

文=佐藤俊

photograph by Yuki Suenaga