7月4日、函館競馬場のメインレース・巴賞を勝ったのはサトノエルドール(美浦・国枝栄厩舎)。2番人気の5歳牡馬を勝利に導いたのはクリストフ・ルメール騎手。この勝利が今年の100勝目となるゴールだった。

 自身の持つ年間最多勝記録達成時を上回るペースでの勝ち鞍量産ぶりだが、もちろん数だけでなく、その内容も超一流だ。この春だけでもGIを4勝、2着も3回もある。

 今回は本人にこの春を振り返っていただこう。

「サトノレイナスは素質でここまで走れている」

 GI戦線の幕開けとなるフェブラリーS。1番人気のカフェファラオ(牡4歳、美浦・堀宣行厩舎)に騎乗すると、ここをいきなりの勝利で飾った。同馬とのコンビでは続くかしわ記念(船橋競馬場)で5着に敗れてしまうのだが、パートナーは言う。

「まだ4歳でこれからの馬です。むしろ今の時点でよくフェブラリーSを勝ちました。これから楽しみな事に変わりはありません」

 この春の3歳クラシック路線でコンビを組んだ馬達にも同じようなセリフを述べる。

アカイトリノムスメは惜しくも2着に敗れた

 桜花賞ではサトノレイナス(牝3歳、美浦・国枝栄厩舎)に騎乗してソダシを追い込むも2着。同馬とは勇躍ダービーに挑んだが5着に敗れた。そして、サトノレイナスのいなくなった牝馬路線・オークスではアカイトリノムスメ(牝3歳、美浦・国枝栄厩舎)とタッグを組んだ。ここも善戦したが、ユーバーレーベンの2着に惜敗。この2頭の国枝厩舎勢については次のように語った。

「サトノレイナスの桜花賞は大外枠が響いて追い込み切れませんでした。でも末脚は良かったので、距離が延びるのは絶対に良いと思ったし、ダービーでも好勝負が出来ると感じました。結果、ダービーは5着に負けてしまったけど、牡馬相手に悪くない内容でした。また、アカイトリノムスメのオークスも負けたといえそう差のない競馬をしてくれました。2頭共に現時点では素質でここまで走れている感じで、本当に強くなるのはまだまだこれからです。当然、楽しみです」

マイルに矛先を向けたシュネルマイスター

 一方、見事に勝利したのがNHKマイルCのシュネルマイスター(牡3歳、美浦・手塚貴久厩舎)だ。弥生賞を2着して皐月賞の出走権を得ながらもその権利を行使せず、マイルに矛先を向けてきた関東馬での優勝劇だった。

NHKマイルで見事に差し切ったシュネルマイスター

「距離短縮は良いと思いました。でも、最後の直線で池添君の馬(ソングライン)が抜け出した時は、一瞬、届かないと感じました。でも、諦めずに最後まで追ったらゴールの時にギリギリかわして(ハナ差)勝ってくれました。シュネルマイスターも若い馬。将来が楽しみです」

グランアレグリアは「絶対的な能力が高い」

 勝利の歓喜と敗北の屈辱の両方を味わったのがグランアレグリア(牝5歳、美浦・藤沢和雄厩舎)だ。

 まずは大阪杯。昨年のJRA賞最優秀短距離馬に選定されたこの牝馬を、陣営は2000メートルのGIに出走させてきた。

「正直、2000メートルは少し長いかな?という気持ちはありました。でも絶対的な能力の高い馬なので折り合い次第でこなせない距離ではない。そう思って臨みました」

クリストフ・ルメール©Satoshi Hiramatsu

 しかし、結果は逃げたレイパパレを相手に一度は差を詰めながらも最後は逆に突き放される形で4着に沈んだ。

「これから、という時に伸びてくれませんでした。雨が降って道悪(重馬場発表)になったのも結果的に良くなかったです」

 それでも続くヴィクトリアマイルでは本来の彼女の力を発揮した。2着から8着までが0秒2差の中に収まる激しい争いを尻目にただ1頭、2着に0秒7差、4馬身の差をつけてゆうゆうとゴール。昨年の安田記念でアーモンドアイをちぎった舞台でそのスピード能力を存分に見せつけた。

「やっぱり1600メートル戦なら強いです。この距離で普通に走ってくれれば強いのは分かっていたけど、本当に素晴らしかったです」

ヴィクトリアマイルのグランアレグリア©Satoshi Hiramatsu

「あんな手応えでも伸びるんだ!?」

 ところが続く安田記念では思わぬ結果が待っていた。ヴィクトリアマイルと同じ東京の芝1600メートルで、昨年も勝ったレースとなれば大きな期待が懸かるのは当然。ファンは彼女とルメール騎手のコンビを単勝1.5倍の圧倒的1番人気に支持して迎えた。そして、鞍上もまたファンと同じように「期待していた」と言う。

「いつも通り走ってくれれば大丈夫だろうという気持ちで臨みました」

「大丈夫だろう」はすなわち「勝てるだろう」という意味。ルメール騎手はレース前の心境をそう述懐した後、更に続けた。

「でも、スタートしたらすぐにいつもと違うと感じました。いきなり大きな息をして、追走をするのも苦しい感じでした」

 気付くと目の前には実績馬のインディチャンプがいた。

「少し気合を入れて追走すべきか、この手応えなら無理せずに控えるか、どちらが良いか一瞬、迷いました」

 そう考えてしまうくらい手応えは良くなく、この時によぎった不安を、次のように続ける。

「正直、8着とか、そういう負け方をしちゃうと覚悟しました」

 それでも直線、追いまくると反応してくれた。

「『あんな手応えでも伸びるんだ!?』と思いながら追っていました。さすがグランアレグリアだなって感じていました」

安田記念のグランアレグリア©Satoshi Hiramatsu

「中身が本物ではなかったのかもしれません」

 ゴール直前には「差し切れるか!?」とも思った。しかし、アタマ差で伏兵ダノンキングリーに敗れ、2着に終わった。

「ゴールの瞬間は負けたのが分かりました。潜在能力の高さであそこまで追い上げてくれたけど、並みの馬なら惨敗だったと思います」

 そう語った後、改めてパートナーだから感じた敗因を挙げた。

「GIなので皆、しっかり仕上げてくるから少しでもうまくいかないと負けてしまう可能性は高くなります。グランアレグリアは中間、爪を痛めて少し楽をさせたと聞きました。競馬当日の爪自体は問題なかったけど、調整が少し狂った分、中身が本物ではなかったのかもしれません」

天皇賞(秋)での巻き返しは?

 さて、秋には再び2000メートルに挑戦、天皇賞(秋)を目指すプランもあるようだが、それに対しては次のような意見を述べる。

「大阪杯では2000メートルは少し長いと感じたけど、東京競馬場なら1ターンです。阪神よりはこなせるはずなので、あとは良馬場で走らせてあげたいです」

 捲土重来を期す昨年の最優秀短距離馬をリーディングジョッキーがどう導くのか。秋の動向に注目しよう。

 さて、文字数が多くなったので、クロノジェネシスと宝塚記念に関しては次週、記させていただこう。

文=平松さとし

photograph by Sankei Shinbun