雑誌「Sports Graphic Number」と「NumberWeb」に掲載された記事のなかから、トップアスリートや指導者たちの「名言」を紹介します。今回は35歳となったウサイン・ボルトにまつわる4つの言葉と伝説を写真とともに振り返ります。

<名言1>
これでオレは伝説になった。最高のアスリートだ。
(ウサイン・ボルト/Number818号 2012年12月6日発売)

◇解説◇
 2008年の北京五輪では3種目で金メダルを獲得。そして衝撃的な「最後は手で胸を叩きながらの9秒69」をマークし、ボルトは一躍超スーパースターとなった。そんなボルトはことあるごとに「伝説になりたい」と口にし続けた。

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 そして迎えた4年後のロンドン五輪。まずは最大の関門だった100mを制する。

「これで伝説に一歩近づいた」

 さらには「オレの種目」と豪語する200mでは一度もトップを譲ることなく2つめの金メダルを獲得。さらに4×100mリレーでも優勝し、2大会連続で3冠を達成。名実ともに「伝説」となったのだ。

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陸上はオレのスポーツ。だからこそベストを

<名言2>
陸上はオレのスポーツ。だから、いつでも、どんな状態でもベストを尽くす。それがオレ流なんだ。
(ウサイン・ボルト/Number736号 2009年9月3日発売)

9秒58を出したボルト ©Getty Images

◇解説◇
 2009年8月16日、ボルトは前人未到の境地へとたどり着く。世界陸上男子100m走決勝で、人類史上初の9秒5台となる9秒58の世界新記録をたたき出したのだ。ちなみにボルトはこれで史上3度目の世界記録更新となり、これもまた100m走でただ1人しか達成していない偉業である。

 そんなボルトだが、北京五輪直後にはこのように語っていたことがある。

「子供の頃の僕は、平均的な選手だった。でも成長するにつれ、タイムも伸びて結果も出せるようになったころから、自分は特別なのかなと思うようになった。20年に1人とか、50年に1人とか、あるいは1世紀に1人とか、すべてのスポーツに、マイケル・ジョンソンのような特別な選手がいて、多分、自分もその中の1人なんだと思う」

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 10代のジュニア時代は100mで図抜けた成績を残していたわけではなかった。また持病である脊椎側彎症による独特なフォームだったが、肉体にかかる負担を軽減するために筋力アップに努めた結果、驚くべきタイムをたたき出していくことになった。まさに「いつでもベストを尽くした」からこそ、超人ボルトが誕生したのだった。

200mはアートでありテクニック

<名言3>
100mはショーでありドルだ。200mはアートでありテクニックであって、僕はこっちの方が好きだね。
(ウサイン・ボルト/Number884号 2015年8月20日発売)

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◇解説◇
「とりわけ200mのコーナーワークに関しては、何年間ものトレーニングの集積だ。コーナーは僕の弱点で、克服のためもの凄く努力した」と、ボルトは200mの「複雑」さを強調する。そして100mを「ショーでありドル」と表現した辺りにも、彼自身のプロフェッショナル性とプライドを感じさせる。

 2011年大邱世界陸上の100mでは、フライングで失格となり「ショー」の幕は開かなかったが、2015年の北京世界陸上では100mと200mを制し、ボルト健在をアピールしたのだからさすがだ。

<名言4>
オリンピックが終わったら引退する、なんて一度も言ったことはないんだよ。
(ウサイン・ボルト/Number908・909・910号 2016年8月10日発売)

リオ五輪4×100mリレーのボルト ©JMPA

◇解説◇
 リオ五輪前は引退時期に関して明言することを避けていたボルトだったが、噂通り2017年の世界陸上がラストランに。「俺は本物のレジェンドになりたい」と事あるごとに語っていたが、100mはライバルであるジャスティン・ガトリンに敗れ、まさかの3位に終わった。

 そして4×100mリレーでは最終走者でエントリーしたが、バトンを受け取った直後に足を痛めて棄権……。壮絶な引退レースとなり、違う意味で伝説を残したのだった。

引退後も何かと話題、カタカナシューズも

 陸上の第一線から身を引いたボルトだが、相変わらず人気者だ。現役時代にマンチェスター・ユナイテッドの練習場でクリスティアーノ・ロナウドらと触れ合うなどサッカーが大好きということで、引退直後の来日時には川崎フロンターレの練習に訪れたこともある。また翌年にはオーストラリアリーグのクラブで練習生になるなど、その愛情が本気であることも話題となった。

 東京五輪後には自身のインスタグラムに「ボルト」というカタカナ文字を入れたシューズをアップロードするなど、何かと話題を提供してくれる辺りはスーパースターと言っていいだろう。

ボルトが自身のインスタグラムでアップした「ボルト」シューズ ※ボルトのインスタグラムより引用

文=NumberWeb編集部

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