伊藤美誠が水谷隼とともに出場した混合ダブルスで金メダル、シングルスでは銅メダル。そして伊藤、石川佳純、平野美宇の3人で臨んだ団体では銀メダル。近年の国際大会での好成績そのままに、卓球女子日本代表は東京五輪でも活躍し、大会を終えた。

 団体では2012年のロンドンから3大会連続でのメダル獲得となった。大会ごとにメンバーが入れ替わりつつ残したこの成績も、日本女子卓球の層をあらためて示している。

 その充実ぶりは、代表争いの激しさにもつながってきた。卓球はシングルスに2名、団体戦のメンバーとして1名の計3名が選ばれるが、まずシングルスの2名を巡る競争が激しく、そして団体戦の代表になるのも容易ではなかった。2016年リオデジャネイロでは石川と福原愛がシングルス、伊藤が団体戦に選ばれた。リザーブメンバーとなった平野はその悔しさをばねに、東京の団体戦メンバーとして奮起した。

東京五輪で銀メダルに輝いた平野、石川、伊藤の女子団体

伊藤、平野と同じ「黄金世代」の逸材

 この層の厚さは、次のオリンピックへ向けての代表争いの激しさも予見させる。

 石川は今後について「しばらく考えたい」と語っているが、他の2人、同じ2000年生まれの伊藤と平野は、パリ大会を迎えるときには伊藤が23歳、平野は24歳。中学生時代から国際大会で華々しい活躍を続け、「黄金世代」とも称される2人は、さらに階段を上って3年後の五輪シーズンを迎えることができる。容易に代表の座を明け渡しはしないだろう。

 2000年生まれが黄金世代と言われる理由は、この2人の存在だけにあるのではない。東京五輪でリザーブメンバーであった早田ひなもまた、2000年生まれである。

早田ひな

 167cmの長身をいかした強烈なフォアドライブを武器とする早田もまた東京の代表入りを目指していたが、落選。しかし直後の2020年1月の全日本選手権では、準決勝で伊藤、決勝で石川を破り初優勝を果たした。

「平野選手、伊藤選手に続きたいという思いはありました」

 代表落選に沈むことなく、むしろ糧にしようとした姿勢は、選ばれなかったことを聞いたとき「限界を作らないようにしよう」と決意し、練習時間を長くしてプレーの中身も見つめ直したところに表れていた。平野がリオで試合を見守ったように、早田もまた、東京五輪での時間を財産にできるはずだ。

10代の若手有望株の台頭も?

 伊藤たちの1つ上、1999年生まれの加藤美優も今後が期待される1人。小学生の頃、「ミユータ」と称される逆チキータを生み出し台頭。2019年には国際大会で世界ランキング1位であり東京五輪でも金メダルの陳夢を破っている。

加藤美優

 現在23歳の佐藤瞳も日本卓球女子を担う1人。相手のボールを粘り強く拾い続ける「カット主戦型」という世界上位でも限られた戦型とともに国際大会で活躍してきた。2017年のカタールオープンでの試合で、時間にして10分13秒、766ラリーを続けたこと(国際卓球連盟は「史上最長ラリーである」と伝えた)、2020年オマーンオープン決勝で加藤と対戦し、1時間38分の世界最長試合を繰り広げた末に優勝したこともその粘り強さを示している。

 さらには日本でもトップクラスと言われるボールの威力を武器に、2019年の世界ジュニア選手権シングルスで日本選手史上初の優勝を果たした19歳の長崎美柚、同じ2019年の全日本選手権において史上最年少の14歳5カ月で決勝に進んだ17歳の木原美悠もいる。この2人はダブルスでペアを組み、同年のワールドツアーグランドファイナルで東京五輪の中国代表である孫穎莎、王曼昱を破るなどして優勝している。

 そのほかにも将来を嘱望される選手たちが数多くいる。

日本でここまで若手が育つワケ

 中国に次ぐ、そして中国にも食い下がろうとする段階まで来た。

 国内外で活躍する有力選手が多く表れている背景には、日本卓球協会による育成がある。1980年代に、普及と育成を目的とし、小学6年生以下によるホープス、小学4年生以下のカブなど年代別の全国大会を設け、2001年には小学生のナショナルチームである「ホープスナショナルチーム」を立ち上げた。選ばれた選手たちは合宿などを通じ、プレーをはじめ選手としての心構えなどを学んでいった。また、ここに携わる多くのコーチにとっても、指導の技量をあげる機会となり、それも卓球界の財産となっただろう。

 さらにはナショナルトレーニングセンターを拠点とする「JOCエリートアカデミー」もスタートし、加藤、平野、長崎、木原らがここで練習に励んだ。

木原

 特定の指導者や指導拠点に頼らず広く普及と強化を根底に置いた、長期的な育成の取り組みが現在の隆盛につながっている。

 それが生み出した熾烈な代表争いが、日本女子のレベルをまた高めることになる。

 それぞれにプレースタイルを磨き、キャリアを重ねてきた選手たちは3年後へ向けてどう進んでいくのか。最終的にオリンピックに出場できる選手、出場できない選手がいる。ただ、代表へと向かう選手たちの過程を見守りたい。

文=松原孝臣

photograph by Takuya Matsunaga/JMPA