東京五輪で水谷隼と伊藤美誠が金メダルを獲得した卓球の混合ダブルス。

 ただ、水谷は競技から退く意向を示しており、必然的に、抜群のコンビネーションを見せた2人のペアが次のオリンピックで見られることもなくなった。3年後のパリ五輪では新たなペアが出場することになる。水谷と伊藤の後を継ぐのは誰になるのか。

混合ダブルスのペアはどうやって決まる?

 その前提として、選考方法を把握しておきたい。混合ダブルスはそれ自体の代表枠があるわけではなく、シングルスに出場する2名、団体に出る1名の男女各3名のうちから選ばれる。東京五輪で言えば、男子はシングルス代表の張本智和、丹羽孝希、団体の水谷、女子はシングルスの伊藤、石川佳純、団体の平野美宇が対象であった。

 だからまずは、シングルス、団体戦の計3名に入ることが混合ダブルスに出場するための条件となる。

東京五輪の混合ダブルスでは見事なコンビネーションで金メダルを獲得した水谷・伊藤

 選ばれた各3名の中からの選出方法については、今年3月に日本卓球協会が発表した「2024年パリオリンピック男女日本代表候補選手選考基準の考え方」に次の一文がある。

「代表候補男女各3名の選手の中で、最高のペアリングと思われる混合ダブルスペア1組」

 これは東京五輪の選考基準と同じで、どの組み合わせならいちばんよい結果を残せるのか、という観点が根本となる。

 参考として、近年の混合ダブルスの動向を振り返りたい。

伊藤美誠の次なるペアは誰になるか

 混合ダブルスで実績を残してきたペアと言えば、吉村真晴と石川に行き当たる。2017年世界選手権で金メダルを獲得し、2019年の同選手権でも銀メダルと、国際大会で実績を残してきた。

 張本と早田ひなも存在感を示してきた。2019年6月、組んでからさほど間もないタイミングで迎えた2人にとっての2戦目、国際大会のジャパンオープンで準優勝。早田が「攻撃的に勝負できて、すごく相性がいいかなと思いました」と言えば、張本も「早田さんは男子と打ち合う力もあって、組みやすいです」と手ごたえを語った。その言葉の通り、同年11月のオーストリアオープンでは中国の上位ペアの一組である林高遠・朱雨玲ペアを決勝で破り優勝を飾っている。

 伊藤には水谷以外にも実績をあげてきた相手がいる。森薗政崇だ。2019年のカタールオープンでは東京五輪決勝でも対戦した中国の許昕・劉詩雯と決勝で戦い、敗れたものの準優勝の成績を残している。そしてこの二人は、全日本選手権で2018年から2020年にかけて3連覇を果たしているのだ。

2018年のワールドツアーにて。左が森薗

張本・長崎の新星ペアは日本一まであと一歩だった

 その全日本選手権の決勝で、森薗・伊藤と2019、2020年に2年連続で対戦したのが張本と長崎美柚だ。

 2度目の決勝で敗れたあと、張本は「(森薗・伊藤は)いいときは2人が1人の感じ。僕たちはまだ少しばらばらな部分がありました」とコンビネーションに差を感じつつ、「昨年より可能性を感じました」と手ごたえも語っている。

 ここまでいくつかのペアを見てきたが、2017年6月の国際オリンピック委員会臨時理事会で混合ダブルスの五輪採用が決まってから、東京五輪を見越して卓球協会が有力選手にペアを組ませて大会に出場させるケースもあった。先にあげた2019年世界選手権は、もともとは張本と石川のペアを予定していたが、張本の怪我により吉村が出場した経緯がある。また、2018年の全日本選手権には張本と平野がペアを組んで出場しているが、これも協会による推薦という形式だった。

張本智和とのペアで日本選手権を2度準優勝している長崎美柚

 いずれにせよ、どれだけ国内外の大会で実績を残しても、個人で五輪代表枠に入らなければならないのは先に記したとおりであり、オリンピックを見据えたペアリングの対象になるにしても、五輪出場の可能性を持つ位置にいなければならない。

混合ダブルスでは、2人の「相性」が重要

 その上で、混合ダブルスについて言えるのはシングルスで強い選手同士が組んだからといって、必ずしも好成績を上げられるわけではないことだ。水谷と伊藤の強さは、年齢は離れていても早くから知り合いで意思疎通の良さがあり、そして伊藤の積極性や攻撃性といった持ち味を受け止めてプレーできる水谷の懐の深さにあった。性格的なものも含め、しばしば選手が「相性」について触れるのも、混合ダブルスで成績を残せるかどうかが個々の技量のみによるわけではないことを物語っている。

「五輪代表の3人の中から」という縛りはあるにせよ、その中でどのようなペアが生まれるのか。

 今年11月にはアメリカ・ヒューストンで世界選手権が行なわれる。8月30日から9月2日にかけて実施された代表選考会で男子3名、女子2名が代表に決定した。男子は宇田幸矢、森薗政崇、戸上隼輔、女子は早田ひな、芝田沙季だ。すでに代表入りが確定していた五輪代表選手も含め、男女各5名が代表となるが、混合ダブルスも2ペアが出場する。混合ダブルスについてはシングルスの代表以外から選ばれる可能性もあるが、どのようなペアがエントリーすることになるだろうか。

 パリ五輪に向けても、楽しみなところだ。

石川・吉村も長年活躍してきたペアだ

文=松原孝臣

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