雑誌「Sports Graphic Number」と「NumberWeb」に掲載された記事のなかから、トップアスリートや指導者たちの「名言」を紹介します。今回は9月23日に誕生日を迎えた日本が誇る3人のスコアラーにまつわる3つの言葉です。

<名言1>
チームの勝利や若手が育つのも嬉しいけど、何よりも自分のゴールが自分を奮い立たせてくれる。サッカーが好きなんだなというところに戻れますね。
(小林悠/NumberWeb 2020年10月12日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/845375

◇解説◇
 2010年代において、Jリーグで安定感を誇った日本人ストライカーの代表格と言えば、小林悠(34)だ。

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 2011年から2020年の10シーズンでリーグ戦2ケタゴールをマークしたのは2017年の得点王(23得点)を筆頭に計7回。そして今季も8月28日の北海道コンサドーレ札幌戦で10ゴール目を決め、ジュニーニョ以来クラブ史上2人目となる6シーズン連続2ケタ得点をマークした。

 小林と言えば川崎フロンターレで鍛え上げられた連動性とスキルでゴールを積み重ねてきた。それとともにワントップだけでなくサイドFWでも出場し、攻守に奮闘するなどポリバレント性を兼ね備えたタレントである。

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 一方でチームとしての機能性を考えながら試合に臨み、そのジレンマに思い悩む時期も少なからずあったという。

 ストライカーとしてのエゴか、チームのバランスか。それについて30代になって向かい合った小林は2020年、このような考え方に至ったという。

 「キャプテンになって年齢を重ねていって、チームのことを考えなければならない中で、まだ1人のサッカー選手として幸せを感じるのはゴールなんだなと感じました」

 チームの中で機能し、その上でゴールを奪い取る。両立することは不可能ではないとの思いで、今も王者・川崎の攻撃の看板として君臨する。

<名言2>
日本の選手の方が楽しそうにサッカーをやっていた。
(川澄奈穂美/NumberWeb 2020年4月27日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/843306

◇解説◇
 なでしこジャパンが世界の頂点に立った10年前、アタッカーの1人として大活躍したのは川澄奈穂美(36)だった。

 ルックス面での注目が先行したものの、スウェーデン戦で決めた超ロングシュートやアグレッシブな仕掛け、そして労を惜しまないプレスでチームの起爆剤となった。

 そして迎えた決勝、アメリカとの大一番でもスタメン出場した。チームはビハインドが続く展開となったものの、澤穂希の鮮やかな同点ゴール、そして劇的なPK戦の末に悲願のW杯優勝となったわけだが、川澄はこの展開を楽しんでいたことを明かしている。

「2点目を決められたときも永ちゃん(永里優季)と2人で『これぐらいの方が楽しいよね』って。今日は本当に負ける気がしなかった」

 なおこのシーズン、川澄はなでしこリーグでも活躍した。

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 自身の誕生日である9月23日のジェフ千葉レディース戦で2ゴールを決め、コンスタントにゴール積み上げた。12ゴールを挙げて自身初のリーグ得点王、MVPとベストイレブン、そして所属するINAC神戸もリーグ制覇を果たすなど、日本サッカー史に残るゴールゲッターへと飛躍した。

 ちなみに11日間で5試合という強行日程で行われたロンドン五輪アジア最終予選でも、川澄は3連戦にすべて先発出場し、オーストラリア戦でゴールを決めた。その直後の印象深いコメントがある。

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「次も先発でいきたいです」

 この芯の強さと貪欲さこそが、川澄の本質だろう。

<名言3>
褒め言葉は自分をだめにするから好きではない。
(中山雅史/Number798号 2012年2月23日発売)

◇解説◇
 褒められて嫌な気持ちになる人はいない……ほとんどはそうだろうが、中山雅史(54)は例外だ。1998年、フランスW杯を前にして中山は、4試合連続ハットトリックの快挙を成し遂げ、ギネスブックにまで認定された。

 中山の謙虚さについて、ジュビロ磐田でチームメイトだった名波浩はこのように証言していたことがある。

「どんなに点を入れてもゴンちゃんは『いいボールが来たから』としか言わなかった。もし奢っていたら、きっとあれほどボールは集まらなかったと思う」

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 どんなに褒められ、称賛されても、決して奢らない。J1で積み重ねた得点数は「157」で、上に位置するのは大久保嘉人、佐藤寿人、興梠慎三と21世紀に入ってからのFWしかいない。ストイックに得点嗅覚を磨いたからこそ、“中山隊長”は1990年代最強の日本人ストライカーとして君臨したのだ。

文=NumberWeb編集部

photograph by Sports Graphic Number