ラ・リーガやヨーロッパサッカーの試合撮影を精力的に行っている現地在住の日本人フォトグラファー中島大介氏。そのオリジナル写真を定期的に掲載している(関連記事からもご覧になれます)。

 9月26日にリーガ7節バルサvsレバンテ戦を、そして28日にはCL グループステージ2節パリ・サンジェルマン(PSG)vsマンチェスター・シティ戦の撮影をしました。

 前者では、CLバイエルン戦の大敗からリーガでも2試合連続で引き分け、クーマン監督の去就が慌ただしくなってきたバルサの新10番のお披露目があるのではと話題になっていました。

 後者は、今シーズンのCLグループステージの中でも屈指のカードであり、またバルサから電撃移籍した旧10番メッシの初ゴールがそろそろ生まれる事を期待して撮影に向かいました。

メッシから10番を引き継いだアンスの復帰戦

 まずはバルサ戦から振り返っていきましょう。

 試合開始に先立ち、ペドリを筆頭に東京オリンピックでメダルを獲得したバルサに所属する選手たちの紹介が行われました。あらためて、バルサがサッカーだけのクラブではないという事を感じました。

 この日の一番の目当ては、18歳でメッシから引き継ぐ形でバルサの新10番を纏うことになったアンス・ファティの撮影でした。前日会見でのクーマン監督の「出場は15分になるだろう」との言葉通り、ベンチからのスタートに。同じくカンテラ出身のリキ・プッチと談笑する姿も見られました。

 試合開始早々にメンフィスが自ら獲得したPKを流し込み、バルサが先制ゴールをゲット。幸先の良いスタートを切りました。新加入ながら、ピッチの上ではリーダーシップを発揮しチームを鼓舞するメンフィス・デパイの姿は印象的でした。

 新加入のルーク・デヨングもバルサでの初ゴール。観客から優しい声援が飛びました。

 この日の先発には17歳のガビ。19歳のニコの姿がありました。一方、ケガから復帰したコウチーニョはドリブル突破を試みる場面も。

アンスの323日ぶり復帰とゴール

 323日ぶりに膝の故障から復帰することができたアンス・ファティの交代直前の様子です。さすがに色々と頭をよぎることがあるのか、緊張した様子が伝わってきました。

 ピッチに入った直後のアンスは、サポーターからの拍手に迎えられ、手を振って答えていました。出場からわずか10分ほどの間に、見事にGKのタイミングをずらしたシュートでゴールを揺らし、自らのゴールで復帰を祝いました。

 自然とできた祝福の輪の中で、持ち上げられたアンスの姿は、新たな王の誕生を感じさせるものでした。さまざまなゴールパフォーマンスがありますが、選手を持ち上げて喜ぶようなパフォーマンスは、本当に特別な時にしか起きず、2014年11月にメッシがリーガ最多得点記録を更新した際に、試合中にも関わらず胴上げが行われたことを思い出させました。

 直後にはピッチを飛び出し、長らくリハビリを共にしたリュイス・ティル医師の元に走り寄り抱き合いました。右奥ではこの日、ベンチに入らなかったフレンキー・デヨングらも拍手で見守りますが……デンベレのズボンの紐の長さが際立っていました。

 バルサはCLで連敗スタートと苦しい状況ですが、引き続きバルサの10番に相応しいプレーを見せ続けて欲しい選手です。

ムバッペとネイマールの確執が囁かれるが

 アンスの活躍を撮影してから2日後、パリに向かいました。撮影ポジションに着くと、パルク・デ・プランスの上空は秋らしい雲で覆われていました。この日のパリの最高気温は、バルセロナの最低気温19度と同じで、試合開始の21時にはかなり寒く、はやくもこの先にある冬の到来を感じさせるものでした。

 選手がアップに出てくると、メッシ、ネイマール、ムバッペの登場にサポーター席も沸きます。

 メッシの加入により、ネイマール、ムバッペと作る「MMNトリオ」は、今シーズン一番の注目を集めています。しかし、この試合を迎えるにあたって、膝の怪我でメッシが直近の2試合を欠場、また、ムバッペとネイマールの確執が囁かれていました。

 そういったこともあってさらに3人への注目は高くなっており、アップする選手の後ろには数多くのフランスメディアのカメラマンが見られました。やはりメッシ、ネイマールは仲が良さそうで、声を掛け合っています。また、ペアでのパス交換も2人で行っており、カンプノウでもよく見た光景です。

 選手入場、PSGサポーター席が燃えます。パリはスペインとは違いフルで観客を入れているようで、久しぶりに体感する、耳をつんざく声援に発煙筒と、迫力がすごかったです。またキックオフ前には、両チームの選手が差別に反対する片膝をつくパフォーマンスも。

 この日は右サイドで先発したメッシ。ボールが渡るたびに、客席が盛り上がります。

 キックオフ直後、シティが攻勢をかけてペースをつかむかと思われた矢先の8分、ムバッペの深い位置からの折り返しにネイマールが絡み、こぼれたところをイドリサ・ゲイェが蹴り込みゴール。PSGが先制点を奪ったことで、ゲームは大方の予想とは違う流れとなりました。

 とはいえ先制後も、シティの圧力が上回りました。メッシにボールが回っても自陣深くからの持ち上がりなど、あまりバルサ時代には撮れなかった絵柄が多くなります。

 ただそんなシティの攻勢も、この日ケイロル・ナバスを差し置いて先発したPSGの新加入GKドンナルンマの巨躯の前にはじき返されました。

メッシとともにネイマールもカッコよかった

 メッシに集まったのは、サポーターからの視線だけではありませんでした。シティDFの激しいプレスに対して、思うようにはチャンスメイクができません。

 ムバッペの攻め上がりには、シティ新加入のグリーリッシュも駆け戻ります。押し込まれている中でも、ムバッペのスピード、一瞬の動き出しにはシティのDFも手を焼きます。ポチェッティーノが中盤の要ベッラッティに指示を与える場面もありました。

 シティの1点ビハインドで迎える後半キックオフ、守備の要ルベン・ディアスがDFに声をかけて回っていました。一方のPSGは少し遅れて入場。この日の審判団はリーガの審判団だからか、メッシと話しながら出てきました。

 開始早々からシティが猛攻を仕掛けていきます。シティの右サイドは、前にマフレズと後ろにウォーカー。かなり見た目が似ていて、撮影しながらは見分けることが困難でした。

 PSGの10番はネイマール。個人的には撮影するのが一番好きな選手です。手足が長いからか、シルエットがどんな時もカッコ良いです。EURO2020のベストイレブンにも選ばれたウォーカーが激しく詰め寄っても、ボディーフェイント1つで、ボールを操る時間を作り出していました。

 なおPSGのFKの場面では、キッカーにはネイマールとメッシが2人並びましたが……メッシが蹴りました。

ペップ・シティの攻撃に思い出す、あの頃のバルサ

 ますます攻勢を強めるシティ。デブライネがペナルティーボックス内に侵入してボールを受け、シュートや鋭い折り返しを何度となく放っています。

 シティを率いるペップですが、彼が率いた頃のバルサも、目指すのはゴールではなく、ゴールポストとペナルティーエリア内の間で、そこまで行けば、後は折り返して押し込むだけ。そんな印象も感じていましたが、今のシティにも似たような攻撃に感じました。やはり特別な攻撃パターンで、レンズを持ち替えるタイミングなど、久しぶりで対応しきれませんでした……。

 そんなシティの攻撃に対して、PSG守備陣は粘り強く跳ね返すという作業を愚直に繰り返していました。

 PSGの前線には「MMN」の鋭いカウンターがある。それはシティの攻撃に対する抑止力になっており、メッシの持ち上がりの際には、ペップが“削れ!”と言っているようなアクションも映り込みました。ルベン・ディアスの守備対応もさすがでしたが……。

不協和音を吹き飛ばすメッシ初ゴールの瞬間

 ゲームが終盤に差し掛かった74分、メッシがムバッペとのパス交換から左足でシュート。

 ボールは見事な軌道を描いてゴールネットに突き刺さり、メッシのPSG初得点となりました。シティを突き放す追加点に、感情を爆発させつつ、見事なヒールパスを見せたムバッペを讃えるメッシ。試合前に囁かれたチームの不協和音を吹き飛ばします。

 カンプノウで撮りなれたメッシのセレブレーション。見慣れないユニホームと背番号30でした。

 最終盤、試合後に話題になるシーンがありました。シティのFKに対し、壁に指示を出すドンナルンマ。カメラを壁に移すと、メッシが寝転び役を引き受けていました。それを気にかける様子のネイマール。FK後にも、声をかけていました。とはいえ、特別騒ぎ立てるようなことではなく、この次のFKではムバッペも寝転ぶ役をやっていました。

 最後は、話題の3ショットを撮ることもできました。

 試合後、スタジアム近くの安宿(安宿と言っても75ユーロ、日本円で1万円弱なのにぼろぼろ。パリは高い……)で、写真作業をしていると、日付が変わった0時か1時だったか、メッシ、メッシという掛け声が聞こえてきました。

 アンスというバルサの新しい王様の誕生を撮影してから、2日後のパリで見たメッシはやはりメッシでした。相手がシティだったので苦戦はしましたが、リーグなどでは快進撃が始まることを願っています。

文=中島大介

photograph by Daisuke Nakashima