引き続き、水沼貴史氏と古橋亨梧選手の対談をお楽しみください(全2回の後編/前編へ)。
※インタビューは復帰を控えた9月27日に実施しました。

水沼 今回の取材にあたり、周囲の方々に古橋選手の印象を聞いてきました。以前に(出身大学である)中央大サッカー部監督の佐藤健さんも言っていましたが、みんな口を揃えて「真面目で、一生懸命練習している」と。たった4年でJ2→J1→欧州挑戦というステップアップができたのは、そういう姿勢が大きいと思うのですが、自分の中ではどう感じていますか?

古橋 一番に言えるのはこれまでたくさんの方に出会えて、一緒に仕事ができて、応援してもらえたからこそ、成長できたということ。正直、自分でもここまで順調にいくと思っていなかったです。岐阜に拾ってもらって、そこから神戸に呼んでもらえて、本当に良い選手たちに囲まれていたからこそ、今の自分がある。こっちに来ても、代表に呼ばれても、今まで通り泥臭く、しっかり階段を一歩ずつ登っていきたいなと思っています。

水沼 プレーもそうだけど、成長曲線に関しても、本当にスピード感があるよね(笑)。自分で一番大事にしているものはありますか? 

古橋 ずっと「後悔しないようにやる」という気持ちは大事にしています。そう言いながらも、試合を終えて後悔することが多いですが、それでもその数が減るように、自分が決めたことは曲げないように、と意識しています。

「忙しい小学生でした(笑)」

水沼 サッカーはいつから?

古橋 3歳から水泳をやっていて、サッカーは小1からです。小学校の時は毎日のように水泳とサッカー両方をやっていたので、忙しい小学生でした(笑)。土日は朝からサッカー、練習が終わった1時間後にはプールで泳いでいましたから。

水沼 プールは、クールダウンじゃなくてでしょ?(笑)

古橋 ガッツリ1時間半ぐらい泳いでいましたね(笑)。小6の時に、これ以上タイムが出ないと思ったので、中学からサッカーに専念しました。

水沼 高校は興国。近年はJリーガーに何人も輩出していますね。マリノスで開幕スタメンを掴んだMF樺山諒乃介(現・モンディオ山形)のことは16歳頃から知っていますが、テクニックがあって面白い選手ですね。武器が明確な選手が多い印象です。

古橋 内野先生(内野智章監督)の話を聞いて、ここでなら自分の特徴を伸ばせると思いましたし、すごく面白そうだなと思って入学しました。最近の実績は本当にすごいですよね。シンプルにすごいなって見ています(笑)。

水沼 すごいなって言いますけど、古橋選手たちが作り上げたものがつながっているんですよ。こうやってトップレベルで活躍する姿は高校生たちにとっても刺激になっているはずです。

古橋 いやいや、まだまだです。たぶん、内野先生からも「まだまだやぞ」と言われるはずです(笑)。

水沼氏の言葉に照れ笑いを浮かべる古橋(以下、現地写真は全て事務所提供)

 でもそうやって自分が活躍することで、1人でも多くの子がサッカーを始めたり、興国に入る子がいるならば、すごく光栄なこと。プロを目指すなら、プロに入って終わりじゃなくて、試合に出て活躍する選手になってほしいなと思います。

水沼 そこから中央大学に。そこでの4年間はどうでしたか? 私も大学サッカーを経験しましたが、自分次第で良くも悪くもどうにでもなる世界です。

古橋 絶対にプロになってやるというつもりでした。同期のスポーツ推薦枠は11人いたのですが、僕以外はみんなJリーグユースだったり、全国大会に出場した選手だったので、「絶対に負けないぞ」という気持ちを持っていましたね。

 1年の頃から試合に出させてもらったり、大学選抜の候補にも選んでいただきました。でも、いい4年間だったかというと、苦しい時間だったなとも思います。

水沼 苦しい?

古橋 膝の靭帯を切って試合に出られなかった時期もありましたし、大学4年時もなかなかプロ内定が決まらずに、12月半ばまで粘り続けていました。

 大学選抜に選ばれた時など鼻が伸びていた時代もあったと思いますが、それを気づかせてくれたのは内野先生でしたし、健さんの支えもあって腐らず頑張れました。たくさんの方に支えてもらったからこそ、感謝の気持ちを忘れてはいけないなと。

水沼 だからプレーや表情にも滲み出ているんだろうね。みんなが「真面目です」と言う理由がわかりました。

古橋 こういう場になると、真面目なことしか言えなくてすみません(笑)。

現地サポーターに撮影を求められ、快く対応する古橋 ©︎Getty Images

W杯は「夢」から「目標」に

水沼 日本代表のお話も聞かせてください。最終予選の最中ですが、「W杯」に対してはどんなイメージを持っていますか?

古橋 少し前までは自分がそこに行ける選手とは思っていなくて「夢」だったんですけど、今は少しずつその場所に立てる資格が、チャンスが近づいて、「目標」になりました。

©︎Takuya Kaneko/JMPA

水沼 日本代表ではどんなことを求められている? レギュラー争いもこれから本格化すると思います。

古橋 やっぱり動き出しの部分、そして守備のところは言われます。裏を取り続けたら相手のDFラインを下げられて、テクニックがある中盤の選手を活かせるし、守備では前線から追い続けて後ろの選手を楽にすることが役割。どんなポジションでも呼んでもらえたら、僕ができることをやる。それが使命だと思っています。

水沼 代表の雰囲気はいい?

古橋 いいと思います。海外でプレーする選手が集まっていますし、経験豊富な選手もいる。仲良いだけじゃなく、しっかり意見の交換ができる関係なので刺激的です。いろんな意見もあると思いますけど、勝つために一丸となって積極的にやっていれば見ている人たちも応援してくれると思うので、とにかくやり続けることが大事かなと。

水沼 アーセナルで活躍するDF冨安健洋といった日本代表選手たちの存在も刺激になるでしょう。スコットランドにいればレベルの高い試合を見る環境は整っているでしょうし。

古橋 スコットランドからプレミアに挑戦する選手は多いので、ああいった活躍はとてもモチベーションになります。とにかく結果を出し続けることで、それも近道になるでしょうし、自分のできるプレーをやり続けて、リーグ優勝、カップ戦タイトルも取って、ヨーロッパリーグも上に行けるチャンスがまだまだあると思うので、チームのために何か残せたらと思います。それがW杯にもつながっていくと思います。

 クラブでも代表でも結果を残し続けていくことしか生き残るチャンスはない。できないことをやるのではなく、自分ができることをとことんやって、それをチームに還元したいなと思います。

水沼 これまでと違って海外組として参加する日本代表は、どんな気分だった?

古橋 不思議な気持ちでした。時差は意外と大丈夫でしたね。

水沼 どこでも寝れるタイプ?

古橋 頑張って寝るタイプ、寝続けるタイプです(笑)。

水沼 それはとても重要なことですよ。これからハードな移動もあると思うので、頼もしいですね。現段階での目標などはありますか?

古橋 まずはクラブでの結果で、今季は20ゴール以上は取りたいと思っています。スコットランドでは2強とされているクラブなので、そのぐらいが普通にならないといけない。昨シーズン、(プレミアリーグへ移籍を果たしたオドソンヌ・)エドゥアールはリーグで18ゴール奪っているので、それは超えたいです。

水沼 あれだけクロスに上手く入っていけるならいけるでしょう。ワンタッチでの得点がもっと増えたら現実的になるだろうし、さらに古橋選手は自分で仕掛けることができるので、ドリブルで打開してゴールなんてシーンも楽しみにしています。

古橋 ありがとうございます。チームメイトありきの僕なので、加入してすぐの選手を信頼してくれるチームに感謝しかありません。FWでもサイドでも、とにかく与えられたポジションで結果を残したいという思いが強いです。

水沼 個人的な思いとしては、古橋選手には日本人選手の価値をもっと高めていってほしい。次にセルティックに行く選手が、海外へ挑戦する選手が、「また日本から来るんだ!」と迎え入れてもらえるような、土壌を築けるような活躍を期待してます。

古橋 セルティックで俊輔さんが「日本人はスゴい」というイメージを作ってくれたように、僕が活躍することで日本人選手が馴染みやすい環境を作っていければ良いなと思っています。俊輔さんとはタイプが違いますが、僕も自分を確立して「古橋はスゴい」と言ってもらえるように、やれることをやり続けて行きたいです。

ホーム初戦でハットトリックを挙げ、チームの守護神である元イングランド代表GKジョー・ハートから言葉をかけられた ©︎Getty Images

水沼 頼もしい。セルティック・パーク、行ってみたいなあ。あの尋常じゃない空気感を味わってみたい(笑)。練習前の貴重な時間をありがとうございました。

古橋 こちらこそ、呼んでいただきありがとございます。落ち着いたらぜひ、グラスゴーに来てください!

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 現在の成長を大きく引き寄せたイニエスタとの出会いをはじめ、恵まれた環境が与えられたのは自分が努力した結果。そして、周囲への感謝を忘れない選手はそういう人を引き寄せるものです。J2から這い上がったキャリアは、多くの選手や中高生、子どもたちの励みになると思います。これからも、いろんな人に出会って愛される選手に成長して欲しい。日本代表での活躍にも期待しましょう(水沼)

文=水沼貴史

photograph by Getty Images